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第22回 ─ 現代の〈ロックの本質〉を追求する3バンドのDVDを観た

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2004/12/15   23:00
更新
2004/12/16   15:47
テキスト
文/久保 憲司

『NME』『MELODY MARKER』『Rockin' on』『CROSSBEAT』など、国内外問わず数多くの音楽誌でロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る週間日記コラム。今週はホワイト・ストライプス、ジェット、ヤー・ヤー・ヤーズがそれぞれリリースしたDVDについて。

2004年12月10日(金) White Stripes、Jet、Yeah Yeah Yeahs

  クリスマス商戦なのか何なのか、ホワイト・ストライプス、ジェット、ヤー・ヤー・ヤーズと最新のロック・バンドがこぞってDVDを出した。40歳のオッサンはどうもコンサートに行くのが億劫になっている。でも、時代からは取り残されたくないという見苦しい面もあるので、コンサートの一列目を疑似体験させてくれてるようなこんなDVDはCDを買うよりも先に迷わず買ってしまう。

 上記のバンドたちを〈最新〉というのはもう語弊があるのかもしれない、中堅バンドと言った方がいいのかもしれない。中堅というのもおかしいか。ジェットなんかアルバム1枚くらいしか出してないような気がする。でももう大物のように感じてしまうのは、どのバンドも自分のキャラクター、味が完成されているからだと思う。ジェットのホーム・ページのバイオは「最近の奴らはロックについてよく語るけど、ロールのことを忘れている」という、キース・リチャーズの名言から始まっている(この言葉は、アンディ・ウェザウォールもサインの時に書く)。

 ぼくはこの3つのバンドは、どれもロールしていると思う。そしてそれが同時期にデビューしたバンドよりも彼らが頭一つ抜きん出ている理由なんだと思う。「昔のロックを焼き直して、現代に合わせてアレンジしているから」売れているわけじゃなく、本当にロックの本質が何なのか分かってやっているからかっこいいんだし、売れているのだろう。

  誰もが憧れるスティーブ・マリオットのような白人ソウルの声とワイルドなロックン・ロールに、ダサくなったと思われがちな70年代ロックの能天気さをプラス・アルファーしたジェット。

ブルースの狂気を60年代の終わりに甦らせたレッド・ツェペリンのジミー・ペイジのあの魔力を、30年以上経ってジミー・ペイジよりもワイルドに、しかもポップさを増して甦らせたホワイト・ストライプス。ジェフ・ベックからのラブコールを受けて共演したことからも、その実力は証明済み。声もよく聴くとロバート・プラントに似ている。

 グラムとパンク、そしてゴス、というか全ての音楽をアートというセンスで見事に一緒にしたヤー・ヤー・ヤーズ。この前のロンドンのライヴを観たんだけど、カレンちゃんの動きが往年のスージー・スーの動きのようでかっこよかった。

 こうして書くだけで幅広いよなあ。これらのバンドが同時期にいて、しかもどれも成功しているというのがおもしろい。新しい音楽も古い音楽も同じお店に並ぶCD時代のバンドたちだ。

  こうしたバンドたちをオッサンのぼくは「こういう方法論があったのか」と楽しませてもらっているのだが、もうそろそろ打ち止めだよな、いくらなんでも。もう出てこないよな。でも外国は本当に凄い奴が沢山いるから分かんないけど。日本のバンドも頑張ったらいいのに。例えば、ホワイト・ストライプスみたいなバンドだったら我らがゆらゆら帝国がいるけど、ストライプスみたいに二人で本当にブルースマンのようにワイルドにプレイして、しかもチャートに通用する曲を演奏するバンドが出てきてもいいのに。カレンちゃんみたいにニュー・ウェイヴでオシャレでキュートな女の子が歌うバンドが、ジェットのみたいなスモール・フェイセズのようにフェイクだけで骨のあるロックンロール・バンドが、コーラルのようにキャプテン・ビーフハートだけど、ちゃんとポップスでもあるバンドが出て来たらいいのに。そうだよ、もっともっと出て来たらいいんだ。おもしろいことをやればいいんだ。でも忘れてはならないのはこれらのバンドがどれもちゃんとチャートに入れるような曲を作る努力をして、ちゃんとマーケットの中で戦っているということ。オルタナティヴとかインディーとかそういう狭い場所を相手にしようとはせずに、音楽というマーケットの中で戦っているのがかっこいい。

 おっとDVDの話でした。ぼく的にはジェットの映像が一番ワイルドでかっこよかったかな。ホワイト・ストライプスのもラフな感じがいいんだけど、たまにチープ過ぎるかなと思ったりする。この中では今一番ビッグなんだし、クイーンみたいな高級感あふれるハイビジョンな映像でも面白かったのにと思う。ヤー・ヤー・ヤーズの方は高級感あるんだけど、ちょっとクール過ぎたかな。生でライブ観たばかりだから余計にそう思うのかもしれない。でもどのDVDも本当に楽しめます。友達と鍋でも囲みながら観るもよし、一人でじっくり観るもよし、寒い冬には最適なのではないでしょうか。