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第21回 ─ 栄光のアトランティック(その2)

ESSENTIALS 多様性を深めた名盤たち その1

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/04/12   15:00
ソース
『bounce』 285号(2007/3/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

BROOK BENTON 『Today』 Atlantic/ワーナー(1970)
50年代からソングライター/シンガーとして活躍していたブルック・ベントンのアトランティック移籍作。シナトラで有名な“My Way”を取り上げるなどのポピュラーなアプローチも彼の個性ではあるが、穏やかなバリトンでサザン~ディープ色の強いソウルを歌い上げているあたりが本作のキモだろう。録音はマイアミとNY。トニー・ジョー・ホワイト作の“Rainy Night In Georgia”がヒットした。
(林)

CLARENCE CARTER 『Patches』 Atlantic/ワーナー(1970)
前2作と同じくリック・ホール制作によるフェイム録音で、従来のディープなサザン・ソウル色も残してはいるが、70年代に入ってからのこの3作目ではノーザン感覚のタイトでメロウなムードも加わった。チェアメン・オブ・ザ・ボードの曲をカヴァーした表題曲はその代表例と言ってよく、その一方で〈どブルース〉をやってみたりと、ニュー・ソウル的折衷感覚がアルバム全体に感じられる。
(林)

ARETHA FRANKLIN 『Young Gifted And Black』 Atlantic(1971)
60年代にはサザン・ソウル的アプローチを試みていたアレサだが、大半の曲でNYのミュージシャンを起用した本作では、それまでとは違ったジャズの流れを汲む都会風で思慮深い曲を歌っている。表題曲はニーナ・シモンの黒人賛歌。その他、フィリー・ソウル曲を取り上げたり、自作のメロウな“Day Dreaming”やファンキーな“Rock Steady”も含めて、70年代らしい新しいソウルの息吹が感じられる。
(林)

THE BEGINING OF THE END 『Funky Nassau』 Alston/ワーナー(1971)
マイアミのアルストンからアトランティック配給で登場した、バハマ出身の4人組バンドのファースト・アルバム。分厚いホーン隊を従えて躍動感たっぷりのジャンカヌー・サウンドを展開する表題曲(後にハービー・マンやバハメンらがカヴァー)をはじめ、同系統のパーティー・グルーヴが満載! ピート・ロック&CL・スムースの“T.R.O.Y.”でネタ使いされた“When She Made Me Promise”もここに収録。
(出嶌)

DONNY HATHAWAY 『Live』 Atco/ワーナー(1971)
この人が残した音源はすべてが必携だと思うが、特に親しみやすいのはこのライヴ盤か。マーヴィン・ゲイ“What's Going On”のカヴァーをはじめ、観衆と一体になって昂揚していく長尺の“The Ghetto”、同じく客席の合唱が凄いキャロル・キング“You've Got A Friend”のカヴァーなど、どこを切ってもハイライトだらけ。フェンダー・ローズを軸とした温かいヴァイブ、選曲センスなどで〈ニュー・ソウル〉を体現した名作。
(出嶌)


BLACK HEAT 『Declassified Grooves』 Label M. 
ラルフ・マクドナルドも一時在籍していた、70年代初頭のアトランティックでは珍しかった大所帯ファンク・バンド。プロデュースを手掛けたジョエル・ドーンの再発レーベルから復刻されたこの72+74年作の2in1盤で聴けるのはマンドリルあたりのミクスチャー・ファンクだが、歌ゴコロも十分だ。近年ティンバランド作品などに関わる名エンジニア、ジミー・ダグラスも制作に関与している。
(林)

HOWARD TATE 『Howard Tate』 Atlantic/Koch(1972)
ジョージア州で生まれ、フィリーに移住してNYで花開いたディープ・ソウル・シンガー。近年も新作をリリースしているが、60年代のヴァーヴ盤でも組んでいたジェリー・ラゴヴォイが制作した本作は、レア・グルーヴ絡みの再評価も相まって現在も人気が高い一枚。演奏はNYの腕利きたちだが、南部っぽさも匂わせたコッテリと黒いグルーヴに身を任せて、テイトは高めの声でソウルフルに歌い込んでいく。
(林)

THE PERSUADERS 『Thin Line Between Love And Hate』 Atco/ワーナー(1972)
NYで結成された4人組ヴォーカル・グループ、パースエイダーズのファースト・アルバムにして最高傑作! H・タウン&ロジャーにGAT、さらにはプリテンダーズやアニー・レノックスといった面々にまでカヴァーされた純情スウィートな表題曲などのバラードが充実している一方、ミディアムなリズム・ナンバーでのファンキーな歌い口もカッコイイ。やや古めかしいハーモニーも好感触だ。
(出嶌)

JACKIE MOORE 『Sweet Charlie Babe』 Atlantic/ワーナー(1973)
フロリダはジャクソンヴィル出身シンガーのファースト・アルバム。とはいえ実体は69~72年の間に発表されたシングルをまとめたものだ。大半はフィリー録音の産物で、表題曲などでは同地の洗練されたサウンドと情の深い歌声との相性の良さが確認できる。デイヴ・クロフォードによる南部録音曲ではエルジンズのカヴァー“Darling Baby”が良い。ジェイ・Z『The Blueprint』の冒頭を彩る“If”もここに収録。
(出嶌)

ACE SPECTRUM 『Inner Spectrum』 Atlantic/ワーナー(1974)
NYの4人組ヴォーカル・グループのデビュー盤。制作はメイン・イングリーディエントのトニー・シルヴェスターらで、アレンジがバート・デコトーと、NYソウル人脈によるポップで洗練されたバックに乗せて軽やかに歌っていく。アシュフォード&シンプソン作の“Don't Send Nobody Else”ほか、ジェイムズ・テイラーやアイズレー・ブラザーズの曲も快唱、ニュー・ソウル時代を印象づける。
(林)