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第22回 ─ 甦るスタックスの遺産(その1)

ESSENTIALS 多様性を深めた名盤たち その1

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/05/02   18:00
ソース
『bounce』 286号(2007/4/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

ALBERT KING 『Born Under A Bad Sign』 Stax/ビクター(1967)
スタックス入りした66年以降のシングルをまとめた超定盤。言わずと知れたブルース界〈3大キング〉のひとりだが、サウンドの幅とリスナー層を広げた本作が彼の即位を促したことは言うまでもない。MG'sらスタックス黄金期のバッキングを従えた楽曲はどれもノビノビとソウルフルで、ギタリストとしての魅力が発揮された“Oh Pretty Woman”や、RCサクセションの邦訳カヴァーで知られる表題曲など名曲揃い!
(出嶌)


BAR-KAYS 『Soul Finger』 Volt/Atlantic(1967)
先日も新作『House Party』を発表するなど、いまなお現役で活動中のバーケイズ。これはそんな彼らのデビュー作で、4人のメンバーがオーティスと共に飛行機事故で亡くなる前に録音/発表されていたものだ。表題曲をはじめ、ホーンを導入した賑やかなパーティー感覚のダンス曲はマーキーズにも通じるが、新体制になってからもこの路線は受け継がれた。生き残ったメンバーの息子がジャジー・フェイというのも感慨深い。
(林)

CARLA THOMAS 『Comfort Me』 Stax/Atlantic/ワーナー(1966)
17歳でデビューし、“Gee Whiz”(60年)の全国ヒットでレーベルの活動を軌道に乗せた、スタックスを代表する女性シンガー。この2作目ではディオンヌ・ワーウィックやマーヴェレッツの楽曲を粋にカヴァーするなど、意外にも都会的な洗練性が前面に出た作りながら、スティーヴ・クロッパーと彼女自身が共作した典型的なサザン・バラード“A Woman's Love”などでは品の良いディープネスが滲み出てくる。
(出嶌)

CARLA THOMAS 『The Queen Alone』 Stax/Concord(1967)
スタックスの看板を背負った〈女王〉の余裕か、バート・バカラック作のチャック・ジャクソン曲“Any Day Now”のカヴァーで幕を開けるソロ4作目。とはいえメインはデヴィッド・ポーター&アイザック・ヘイズ組の曲で、後にエモーションズが歌う“When Tomorrow Comes”など、カーラはそれまでのような可憐さでポップに振る舞う。コンコード経由の最新リイシュー盤には南部フィーリング漂う未発表曲なども収録。
(林)

EDDIE FLOYD 『Knock On Wood』 Stax/ワーナー(1967)
ソングライターとしてカーラ・トーマス“Comfort Me”やウィルソン・ピケット“634-5789”などを書いてきた人だが、ファルコンズにいた経歴の持ち主だけに歌の実力も折り紙付き。なぜかカヴァー曲中心となっているこのファースト・アルバムもなかなか聴かせる仕上がりだ。とはいえ、後にデヴィッド・ボウイが取り上げるリズム・ナンバーの表題曲や“Got To Make A Comeback”といった自作曲が断然カッコイイけど。
(出嶌)

MABLE JOHN 『Stay Out Of My Kitchen』 Ace 
リトル・ウィリー・ジョンの姉で、デトロイト育ちのメイブルは当初モータウンからデビューし、レイレッツにも参加していたという経歴の持ち主。アル・ベルの手引きでスタックス入りした彼女の、これは66年のアルバムを核に、第2期スタックスの音源も交えた編集盤で、唯一の全国ヒットとなったバラード“Your Good Thing(Is About To End)”など、高めの声でブルージーなソウルを歌い上げている。
(林)

THE MAD-LADS 『In Action』 Volt/Atlantic(1966)
ヴォーカル・グループとしては60年代のスタックスで最大の成功を収めたマッド・ラッズ。メンフィスを拠点としながら北部的なドゥワップ・スタイルを取り入れ、ミラクルズにも似たスウィートな歌を聴かせる連中で、このファースト・アルバムに収録されたバラード“I Want Someone”や“Don't Have To Shop Around”がそれをよく伝えている。フィリーのラジオ局で人気を呼んだというのも頷ける話だ。
(林)