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第26回 ─ 秋だから……スプリング

ESSENTIALS 永遠の春一盤たち

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/10/11   00:00
更新
2007/10/11   17:24
ソース
『bounce』 291号(2007/9/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛


ACT 1 『Act 1』 Spring/Southbound(1972)
スプリング・サウンドの中核を担ったレフォード・ジェラルドが在籍して指揮も執ったヴォーカル・グループ、唯一のアルバム。フォー・トップス“Still Water”のカヴァーもあり、デトロイトやフィリーの感覚をまぶしながらドラマティックな歌を聴かせるが、“Tom The Peeper”のようなファンクも彼らの持ち味だ。切なげな“Friends Or Lover”は定番ネタで、最近ではガヴァナーが使っていた。
(林)

THE FATBACK BAND 『Keep On Steppin'』 Spring/Ace(1974)
最近の編集盤かと思うほど今風のジャケだが……この通算4作目では彼らの持ち味がストレートに出た“Stuff”を筆頭にタイトで重たいドス黒ファンク・ナンバーが目白押し。トライブ・コールド・クエストのネタ使いでも知られる“Wicky Wacky”や表題曲などの渋いファンクネスも地力を感じさせる。“Can't Stop The Flame”などの、いいところで出てくるスロウも聴き応えアリ。
(出嶌)

『The Soul Of Spring』 Ace/Kent 
スプリングの(ファンクを除く)ソウル曲に焦点を当てたコンピの第1弾。アーティストの多くは別掲の〈The Spring Story〉とダブるものの、レフォード・ジェラルド絡みのアクト・ワンやデターミネイションズ、ジョー・サイモンが手掛けたインターナショナルズといったヴォーカル・グループを核に、ガーランド・グリーンやフィリップ・ミッチェルなどを交えながらソウルフルなミディアム~スロウで迫る。ジョセリン・ブラウンのメロウ曲にも感じ入りたい。
(林)

FATBACK 『Hot Box』 Spring/Ace(1980)
名前をファットバックと短縮してからの6作目。ソリッドでヘヴィーなファンク名曲“Backstrokin'”を含む本作だが、どんなに激しくファンクしようが決して歌ゴコロを失わない、これが彼らのキモだ。メロウなバラードも収録し、ドゥワップの時代からNYの街角の音を刻んできたリーダーのビル・カーティスらしいセンスも随所に表出。斬新な音のなかで古き良き黒人音楽の伝統が薫る快作となった。
(林)


JOE SIMON 『The Power Of Joe Simon』 Spring/Southbound(1973)
ナッシュヴィルで〈カントリー・ソウル〉を歌っていたジョー・サイモン。本作は彼がスプリング移籍後に放った70年代初期のシングルを集めたアルバムで、レフォード・ジェラルドの制作曲のほか、ギャンブル&ハフと組んだフィリー録音曲“Drowning In The Sea Of Love”を収録。まろやかでコクのある歌は、オーティス・レディングの葬儀でゴスペルを披露したというだけの説得力を持つ。
(林)

『The Soul Of Spring Vol. 2』 Ace/Kent 
創立40周年を前に(?)9年ぶりに編纂されたソウル・コンピの第2弾。ここではアップテンポの曲が増え、未発表だったフラワー・ショップの60'sメンフィス・ソウル風ナンバー、ジャッキー・ヴァーデルが82年に録音したモダンなゴスペルなど、内容は多彩だ。とはいえ、ハイライトはパトリック・アダムズ制作によるメイベリー・ムーヴメントやヴィンス・モンタナ制作によるロニー・ウォーカーらのバラード。ジョーンジズの甘茶名曲“Baby”もここに。
(林)

MILLIE JACKSON 『It Hurts So Good』 Spring/Southbound(1973)
ヒップホップ世代の女性アクトたちの精神的支柱であり続ける大姐御、ミリー・ジャクソン。NYとマッスル・ショールズで録音されたこの2作目はレフォード・ジェラルドとブラッド・シャピロ制作で、南部マナーの演奏をバックにディープ&ハスキーな歌声で滋味深いソウルを聴かせる。表題曲は映画「Cleopatra Jones」への提供曲。翌年には泥沼の三角関係を描いた名盤『Caught Up』も控える。
(林)

MILLIE JACKSON 『Feeling Bitchy』 Spring/Southbound(1977)
この表題からして当時は物議を醸したに違いない通算7作目。“All The Way Lover”や“If You're Not Back In Love By Monday”などのスロウでは情の深さを垣間見せ、ストリングスを纏ったファンキーな“Lovin' Your Good Thing Away”のようなアップではグリッティーで支配力の強いパワフルな歌い口を披露する。ジャケ買いした野郎どもも多かったため(?)ミリー屈指のヒットとなった。
(出嶌)


『The Spring Story - Essential 70s Soul』 Ace/Southbound 
レーベルの全体像を伝えるスプリングの名曲25選。ミリー・ジャクソン、ジョー・サイモン、ファットバック・バンドの御三家はもちろん、モータウン曲をカヴァーしたリトル・エヴァ・ハリスの初期イヴェント音源からダンサブルなジョセリン・ブラウンらのポッセ音源まで、実に70年代を中心としたソウル/ファンクのエッセンスを凝縮した内容だ。ジョーンジズのディスコ曲やMFSBのメンバーが関与したフィリー・ダンサーなども含め、とにかく逸品揃い。
(林)