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第43回――カシーフの世界

ESSENTIALS カシーフとその周辺――(1)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/03/23   19:00
更新
2010/03/23   19:18
ソース
bounce 318号 (2010年2月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

B.T. EXPRESS『Do It 'Til You're Satisfied/Function At The Junction』 Demon

カシーフを名乗る前に本名のマイケル・ジョーンズとして参加していた、70年代NYファンクを代表する実力派バンド。初期の作品には未参加ながら、この2in1に収録された後者のアルバム(77年作)には若き日のカシーフが鍵盤奏者として参戦していた。この時点ではまだ彼の個性は見えないものの、後に通じるスタイリッシュなファンク感覚がここで培われたことは間違いない。*林

TAVARES『Loveline』 Capitol/EMI Music Japan(1981)

ディスコ時代のヴォーカル・グループとして人気を得たタヴァレス。彼らが新しい時代のダンス・サウンドを求めるべく本作で起用したのがカシーフ(とポール・ローレンス)だった。カシーフ屈指の裏方仕事として名高いダンサーの表題曲、彼らしいシンセの音色が飛び交う“Keep On”、単独でペンを執ったアーバン・メロウなミディアム“Right On Time”と、関わった3曲はいずれも間違いなく作中のハイライトだ。*林

EVELYN "CHAMPAGNE" KING『Platinum & Gold Collection』 RCA

フィリーのT・ライフが手掛ける楽曲でシーンに躍り出たイヴリンを、フィリー・サウンドに影響を受けてきたカシーフがサポートするのも必然だったか。モリー・ブラウンをアシストする形で制作した“I'm In Love”(81年)と“Love Come Down”(82年)は共にカシーフのペンによるスタイリッシュなダンス・チューンで、これらのヒットによって彼の裏方としての地位が確立されたのだ。*林

MELBA MOORE『This Is It: The Best Of Melba Moore』 Razor & Tie

70年代にはブッダからヒットを飛ばした歌姫。が、その黄金期はEMIに移籍してカシーフと組んだ80年代以降で、このベストでは、その初期作となる開放感溢れるダンサー“Take My Love”(81年)など、カシーフ印のエッジーなNYサウンドを聴くことができる。ハッシュ・プロの同僚となってデュエットした“Love The One I'm With(A Lot Of Love)”のソリッドな音像もカシーフならではだ。*林

HIGH FASHION『Feelin' Lucky』 Capitol/ヴィヴィド(1982)

チェンジのブレーンがプロデュースしたNYサウンドを代表する男女混成グループの名盤にも、カシーフは制作&演奏で大きく関わっていた。特に単独で書いた“Hold On”と“Next To You”の2曲はカシーフ以外の何物でもないキレと冴えに感嘆するしかないファンク・ダンサーで、当時の彼の絶頂ぶりを見る思いだ。“I Want To Be Your Everything”にも彼のアーバンなソウル・スタイリストぶりがよく表れている。*林

HOWARD JOHNSON『Keepin' Love New』 A&M(1982)

ナイトフライトで活躍したシンガーのソロ・デビュー作にして、マイティMの絶頂期を刻み込んだスタイリッシュなブラコン名盤だ。なかでもカシーフの書いた曲の出来は際立っていて、ヒットした“So Fine”と表題曲のスムースなグルーヴは完璧。ジェイムズ・パンツのリエディットした“Say You Wanna”が昨今のディスコ・ブギー文脈で脚光を浴びたりもしたが、この洗練された美味さは普遍的なものだろう。*出嶌

KASHIF『Kashif』 Arista/ソニー(1983)

パッションへの提供曲をセルフ・カヴァーした“Don't Stop My Love”、ララと共作した“Stone Love”……と、瑞々しすぎるNYサウンドが冒頭から押し寄せる傑作ファースト・アルバム。シンセを強調した意匠で先端を装いつつ、70年代的なファンク~メロウ感覚を芯に持つあたりが彼らしい。後にEPMDがネタ使いするインスト“The Mood”も含み、シンガーよりもサウンド・クリエイターとしての自身に軸足を置いていたこともわかる。*出嶌

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