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第47回――都会はエムトゥーメイ

ジューシー・ソウルの定盤たち――(1)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/08/30   14:12
更新
2010/08/30   14:12
ソース
bounce 323号 (2010年7月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

 

ROBERTA FLACK 『The Very Best Of Roberta Flack』 Rhino

エムトゥーメイ&ルーカスがコンビで初めて手掛けたシンガーこそ、このロバータ・フラックだった。楽曲は、ダニー・ハサウェイとの共演で、後にビヨンセ&ルーサー・ヴァンドロスらにも歌われることになる“The Closer I Get To You”。本ベストにはその美しいバラードのほか、同じくダニーとの共演で、絶頂期のエムトゥーメイ&ルーカスを象徴するようなミディアム・ダンサー“Back Together Again”も収録されている。*林

VITAMIN E 『Sharing』 Buddah/THINK!(1977)

ノーマン・コナーズがプロデューサーとして采配を振るった男女トリオの逸品。幕開けを濃厚に飾るバラードの表題曲をはじめ、大半の楽曲でアレンジを手掛けているのはソウル仕事に手を染めはじめたばかりのエムトゥーメイ&ルーカスで、80sを先取りしたような流麗なダンサー“Kiss Away”ではソングライティングも担当。ヒューバート・イーヴスやベイジル・フェリントンの関与も含め、バンド結成にも繋がった作品と言えるか。*出嶌

MTUME 『Kiss This World Goodbye Epic/ソニー(1978)

ジャズからソウル方面に進出しはじめた頃にバンド〈エムトゥーメイ〉名義で放ったエピックからの初作。ここではまだ本来のジャズ~フュージョン的な持ち味がベースとなり、レーベル側から押し付けられたというPファンク的なカラーも幅を利かせている。ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイがヒットさせた“The Closer I Get To You”の自演版ではタワサが熱い美声を披露。こちらも名演だ。*林

PHYLLIS HYMAN 『You Know How To Love Me』 Arista(1979)

共にノーマン・コナーズ関連の作品への参加を経て出世したフィリス・ハイマンとエムトゥーメイ&ルーカスがタッグを組んだ快作。エムトゥーメイ一派が総出でバックアップしたアルバムで、快活なダンス・ナンバーが目白押しだが、なかでも後にリサ・スタンスフィールドらのカヴァーも生んだ表題曲はコンビ屈指の名曲だろう。タワサとヒューバート・イーヴス作の“Hold On”も強力なアップだ。*林

STEPHANIE MILLS 『Stephanie』 20th Century Fox/ユニバーサル(1980)

エムトゥーメイ&ルーカス・サウンドの体現者となった歌姫。これは4作に渡ってタッグを組んだうちの1枚で、両者がもっとも勢いに乗っていた時期のアルバムだ。バラードも含めて駄曲ナシの内容だが、白眉はテディ・ペンダーグラスとのデュエット曲“Two Hearts”だろう。“My Loves Been Good To You”も含め、フィリー・ダンサーのNY的解釈といった作風はコンビのもっとも得意とするところだ。*林

MTUME 『In Search Of The Rainbow Seekers Epic/ソニー(1980)

彼ららしいNYサウンドが確立された2作目にして、ルーカスやイーヴスらが在籍した最後の作品となる。スライを思わせるファンク・ロック“Mrs. Sippi”などもあるが、タワサのヴォーカルが発散する華やかさを活かした“Give It On Up(If You Want To)”や“So You Wanna Be A Star”のように、アダルトな都会っぽさを纏ったアップがとにかく素晴らしい。ルーサー・ヴァンドロスやグウェン・ガスリーも参加。*出嶌

SPINNERS 『Can't Shake This Feelin'』 Atlantic/ワーナー(1981)

かつてフィリーの音を浴びて成功を収めたスピナーズが、フィリー・マインドを持つエムトゥーメイ&ルーカスに制作を託した逸品。デルフォニックス“Didn't I Blow Your Mind”をカヴァーしているあたりからもその狙いは汲み取れるが、そこは80年代NYマナーで刷新を図っている。アル・マッケイが関与したEW&F調の軽快なアップやスレイヴのような重量級ファンクも含む賑やかな内容だ。*林