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グリーンスリーヴス

連載
Discographic
公開
2011/04/04   14:46
更新
2011/04/04   14:47
ソース
bounce 329号 (2011年2月25日発行)
テキスト
文/鈴木智彦

 

77年の設立以来、ディープでリアルでカッティング・エッジなダンスホールを発信してきたグリーンスリーヴス。また、権利関係の曖昧さゆえに歴史のなかで埋もれていた名盤も積極的にリイシューするなど、このレーベルがレゲエ文化発展のために果たした役割はあまりにも大きい。彼らが存在しなければ、世界がこんなにもレゲエに夢中になることなんてなかったかもしれない

 

 

英国はかつてジャマイカの宗主国であり、ジャマイカ独立後には元植民地からの移民を政府が積極的に受け入れてきた。そんな歴史もあって、ジャマイカ音楽とのパイプが太い。移民と共にレゲエ文化そのものが丸ごと移植されてきたという側面もあり、結果として英国の音楽には60年代から現在に至るまでさまざまな形でレゲエ文化からインスパイアされた作品が多く、実際にアーティスト同士の交流も盛んだ。

ボブ・マーリーを世界に紹介したことで知られるアイランドは、ジャマイカ録音のシングルを英国盤としてリリースするところからレーベルの歴史をスタートさせている。トロージャンもアイランド同様にジャマイカで録られたホットなシングルを発表する窓口として立ち上がった。ただ、これらの老舗は設立当初こそスカ~ロックステディ~ルーツ・ロック・レゲエのトレンドやヒット曲をリアルタイムで英国に紹介していたが、次第にその活動方針が変更され、前者はロックを主に扱うレーベルへとシフト、後者はヴィンテージ・レゲエを世界のマニアに届けるコレクター・レーベルへと変化していった。すなわち、レゲエのトレンドやヒット曲、あるいは音楽ムーヴメントを紹介していく機能を失っていくのである。

本ページで紹介しているグリーンスリーヴスは、そんな老舗に代わってジャマイカ音楽の旬を素早く的確に紹介するレーベルとして77年にロンドンで設立された(それ以前からもレコード店を運営)。その基本方針は30数年を経た現在もまったくブレがない。アーティストの権利に関して英国ルールできちんと対処することを心掛け(ジャマイカのそれは結構デタラメが多いことで有名)、ジャマイカン・アーティストやプロデューサーから厚い信頼が寄せられているのも、このレーベルが安定した活動を続けられた秘訣なのだろう。

80年代以降は、ジャマイカだけでなく、地元のレゲエ・アーティストの発掘/育成にも熱意を注ぎ、ティッパ・アイリーやシャギーといった才能を見い出し、世に送り出してきた。〈ビジネス=金儲け〉と勘違いしている人も多いようだが、音楽ビジネスにおいていちばん大切な〈誠実さ〉を、僕はこのレーベルからずっと感じ続けてきた。グリーンスリーヴスは本当にリスペクトできるレゲエ専門レーベルだ。

 

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