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フランチェスコ・トリスターノ、勅使川原三郎 & 佐東利穂子/リユニオン〜ゴルトベルク変奏曲〜より

『リユニオン』のきっかけは、ルネ・マルタン

連載
OCHANOMA Pre-View
公開
2012/01/20   16:20
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)
テキスト
text:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

勅使川原三郎、佐東利穂子
©BENGT WANSELIUS

フランチェスコ、勅使川原、佐東の3人が共演するのは、2010年夏のラ・ロック・ダンテロン音楽祭以来、今回が2度目である。最初の共演が実現した経緯を、フランチェスコが語ってくれた。

「きっかけはラ・ロック・ダンテロンのプロデューサー、ルネ・マルタンです。ある日、彼が『勅使川原さんと共演してみてはどうか』と。リハーサル時間が少なく、準備が大変でしたが、バッハの《パルティータ第6番》、それから自作の《Hello》と《Nach Wasser Noch Erde》を舞台で弾き、勅使川原さん、佐東さんと密度の濃いコラボが実現できました。特に《Hello》と《Nach Wasser~》では、僕の演奏と勅使川原さんの動きがうまく共存し、かつ、それぞれの表現したいものが最良の形で結びついたと思っています」

勅使川原によれば、両者が初めて顔を合わせたのは、フランチェスコが住むバルセロナだったという。

「2010年7月にバルセロナの歌劇場で『鏡と音楽』を公演した時、フランチェスコが舞台を見に来てくれたのです。その時期と相前後して彼のCDを初めて聴き、若さと才能を感じました」

上述のように、フランチェスコは「最小限の手段で音楽を達成したという意味で、バッハもミニマル」という芸術観の持ち主だが、ラ・ロック・ダンテロンでの共演が成功したのは、おそらく両者の間に〈ミニマル〉に対する共通の理解が存在していたからではないかと、勅使川原は指摘する。

「僕らが身体の動きからダンスを作る時、その根底にあるのは、装飾を排除したもの、音が無いところから始まる、という考え方です。つまり、音楽の動きのバックグラウンドには無音が存在し、その無音というものがあるからこそ、音がひとつひとつクリアに聴こえてくる。それがバッハ、特にピアノでは非常に重要だと思うのです。ダンスの場合も、ひとりひとりの身体の動きが厳密な意味でクリアになっていないと、ダンスの動きが濁ってしまう。その結果、ダンスがただの印象や雰囲気で終わってしまう。それは僕が一番避けたいところです。その意味で、音楽から学ぶところは非常に大きい。ですから、フランチェスコと僕が〈ミニマル〉に対する共通の理解を共有しているのは、とても素晴らしいことだと思っています」

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