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フランチェスコ・トリスターノ、勅使川原三郎 & 佐東利穂子/リユニオン〜ゴルトベルク変奏曲〜より

連載
OCHANOMA Pre-View
公開
2012/01/20   16:20
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)
テキスト
text:前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

photo Aymeric Giraudel

3人の鬼才が《ゴルトベルク変奏曲》に挑む
衝撃のコラボ『リユニオン』


──バッハとテクノを〈カットイン〉して弾く男

ショパン、リストらロマン派の作曲家に敢えて背を向け、バッハ、モーツァルト、ストラヴィンスキー、プロ コフィエフをとんでもないテクニックで弾く男が、バルセロナにいるらしい。中世風の名前を持つその男は、カール・クレイグがテクノとジャズの融合を目指し たプロジェクト、インナーゾーン・オーケストラに心酔し、ヨーロッパのクラブでクレイグと一緒にプレイしているらしい――。そんなフランチェスコ・トリス ターノの噂を初めて耳にしたのは、今から4年くらい前だろうか。初めて実演に接した時、彼は自作のテクノとバッハと《ペトルーシュカからの3楽章》を、ま るでDJが〈カットイン〉するように切れ目なく弾き通し、聴衆の度胆を抜いていた。すでにその時点で尋常ならざる存在だと感じたが、何度か彼と話をして、 さらに驚いた。『白昼の通り魔』を見て大島渚に開眼し、ジュリアードで大島の論文を書いたこと。そのジュリアードでミニマルをみっちり学び、バッハもモー ツァルトも最小限の手段で音楽を書くことに成功した〈ミニマリマスト〉だと考えていること。そして、彼はこうも平然と言ってのけた。「バッハもテクノも、 ダンスミュージックという点では基本的に同じ。違うのは、300年の時空を隔てた音楽のスタイルだけ」。

ピアノという武器を携え、大島渚的な意味でタブー(御法度)に果敢に挑み続けるアーティスト、フランチェスコ・トリスターノ。その武器は、情熱の鞴(ふい ご)が煽るタタラの焔の如き演奏を聴かせながらも、なまくらなロマンティシズムとは一線を画し、現代的でクールな〈切れ味〉をどこまでも失うことがない。 〈カッティング・エッジ〉という言葉は、まさに彼のためにあるようなものだ。

その彼が、ダンスとアートの尖端を切り裂き続ける鬼才、勅使川原三郎+佐東利穂子と共演し、東京で一晩限りのコラボレーションに臨むという。公演のタイト ルは『リユニオン』。日本語で〈再会〉とか〈再結合〉を意味する言葉だ。果たして誰が〈再会〉するのか? 何が〈再結合〉するのだろうか?

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