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SQUAREPUSHER

アルバム・ディスクグラフィーで振り返る、スクエアプッシャーの変容の歴史

連載
360°
公開
2012/05/02   00:00
更新
2012/05/02   00:00
ソース
bounce 343号(2012年4月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/青木正之、石田靖博、ヌーディーマン、出嶌孝次


『Feed Me Weird Things』 Rephlex(1996)

現在入手困難な衝撃のファースト・アルバム。ジャコ・パストリアスにも例えられたバカテクのベースと乾いた質感の暴れドラムで玄人筋も唸らせた“Squarepusher Theme”の印象が強すぎるものの、作品全体は意外に暗いインダストリアルな音空間とマシナリーな基地外ドラムがいかにもリフレックスな内容に。 *石田

 

『Hard Normal Daddy』 Warp(1997)

ワープからの初作。痙攣を起こしたような忙しないビートこそ前作譲りだが、よりミュージカル音楽っぽい方向へシフトしたことでポップ度が上昇し、キャッチーな側面が前に出てきている。そんな親しみやすさもあってかセールス面においても大きな成功を収め、盤石の人気を築き上げるきっかけとなった。 *青木

 

『Burningn'n Tree』 Warp(1997)

リフレックス以前、スパイマニアから95年にリリースした2枚のEP音源に新曲を加えた編集盤。ここにあるのはジャズに見る反復の快楽なのか、否、人力テクノからドロリと漏れてしまう官能性か。どっちなのかをしっかり提示しているようで、どっちでもいいっしょと黙々と繰り出されるこの時代特有のムードが最高。 *ヌーディー

 

『Music Is Rotted One Note』 Warp(1998)

トレードマークになっていた高速ドリルンベースが鳴りを潜め、生演奏をメインに据えたエクスペリメンタルなジャズへと変貌を遂げた本作は、予想だにしないあまりの急展開で多くのファンを戸惑わせた問題作。前作にあった明快なメロディーはほぼ皆無となり、抽象的な音/曲調に終始するというチャレンジングな姿勢が全開だ。 *青木

 

『Budakhan Mindphone』 Warp(1999)

ディープ・ジャズ路線の極北であった前作の兄弟盤。とはいえガチガチのジャズ路線ではなく、SQPらしい高速ドリルン・ビートや超絶ベース演奏、エレクトロニックな質感もあり。メランコリックで人気の高い“Iambic 5 Poetry”や氷結ダブ“Splask”、ガムラン調の“Gong Acid”など、7曲入りとは思えない小さな巨人。 *石田

 

『Selection Sixteen』 Warp(1999)

ドリルンベースから一転、生演奏のディープ・ジャズ路線をひた走る最中に出された、外伝的な異色作。かつてカオスAD名義でアシッド漬けの音源も発表していた彼ならではの、直球勝負なアシッド・ハウスが楽しめる。ボーナス・トラックにはアシッド馬鹿の実弟=シーファックス(・アシッド・クルー)によるリミックスも。 *石田

 

『Go Plastic』 Warp(2001)

『Music Is Rotted One Note』の収録曲“Don't Go Plastic”をもじって付けられた表題の本作。ジャジーな変態ジャングル“My Red Hot Car”で幕を開け、その後は複雑怪奇な性急ビートとアシッドなサウンドが怒濤のように溢れ出し、異常なハイテンションを貫く。終盤にはダークな電子ノイズも飛び出すカオティック盤。 *青木

 

『Do You Know Squarepusher』 Warp(2002)

日本のエレクトロニカ好景気にシンクロした2枚組。息詰まるほど隙間を埋め尽くす芸風がさらに偏執性を増したのはDTMに本格シフトしたためか。UKガラージを意識したと思しき表題曲や、ジョイ・ディヴィジョン“Love Will Tear Us Apart”の鬱なカヴァーが聴きもの。Disc-2には前年の〈フジロック〉でのパフォーマンスを収録。 *出嶌

 

『Ultravisitor』 Warp(2004)

名盤の誉れ高い、SQPサウンドのひとつの到達点。劇的に新しい試みを導入するのではなく、これまでの延長戦上にある卓越した演奏とプログラミング、アヴァンギャルドな感性に磨きをかけた一枚だ。特にメロディーの美しさは群を抜いており、幻想的で叙情性に溢れたイメージを与えている。名曲“Iambic 9 Poetry”を収録。 *青木

 

『Hello Everything』 Warp(2006)

代表作の筆頭たる前作からの重圧など微塵もないように、〈世界よ、こんにちは!〉とポップに開き直れる妙な軽さを纏った9作目。以後のベース・プレイ過渡期や生音への傾倒も示唆するかのようにミニマルな見栄を張りながらも、耳を澄ますほどに雄弁さを増す旋律が、ジャケよろしく色鮮やかに耳元から入り込んでくるだろう。 *ヌーディー

 

『Just A Souvenir』 Warp(2008)

レフトフィールドな表現を形容する意味の〈ジャズ〉ではなく、毎度の緻密なプログラミングとベース&ギター演奏を箱庭的に突き詰めて、結果的にジャズ・ロックとしてのフュージョンを親しみやすく表現しているような感じ。彼の本流(とは?)を支持するファンには噴飯モノだろうが、かつてなく洒落たムードが心地良いポップな記念品。 *出嶌

 

『Solo Electric Bass 1』 Warp(2009)

複雑な超絶ビート・プログラミングと並び、ベース奏者としても賞賛の声が止まない彼。限定盤につき現在は入手困難なこの珍品は、6弦ベースのみで行われた独演ライヴ音源で、そのプレイヤビリティーがたっぷり堪能できる。ジャコ・パストリアス好きなど、うるさ型のジャズ・リスナーも狙った作りだ。 *ヌーディー

 

『Shobaleader One: d'Demonstrator』 Warp(2010)

本人が〈スペース・ポップ〉と表現する、5人組バンドでの作品。ハービー・ハンコックを引き合いに出せそうなアーバン宇宙ファンク集だが、それよりはティンバランドを思わせる“Laser Rock”をはじめ、カニエやオワゾーに通じるアプローチのモダンさが好ましい。キャリア上でもっとも時代性を意識した端正な傑作と言えそう。 *出嶌

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