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第7回:まっぴ~さん編

連載
アイドルのいる暮らし
公開
2012/10/26   20:30
更新
2012/10/26   20:30
テキスト
文/岡田康宏(サポティスタ)


平日のライブ会場やショッピングモールで行われるイベントで、いつも見かける大人の姿がある。けっこういい歳してるけど、この人たちはいったいどんな生活をしているのだろう?

大人のアイドルファンは、アイドルファンであるだけではなく日常を生きる社会人でもある。お金も暇もある大人のオタクには、元気なだけの若者にはない深みと趣きがある。ライフスタイルとしての現場系アイドルファン、大人のオタクの遊び方とは?



今回お話を伺ったのはまっぴ~さんだ。神奈川県生まれ、30代半ばの会社員。20代後半で時東ぁみにハマり、アイドルオタとして遅めのデビューを果たした彼は、キャナァーリ倶楽部の小川真奈を推していた昨年の4月に福岡へ転勤となり、そこで地元のアイドルグループ・LinQを立ち上げ公演から見ていくこととなる。アイドルが日常の中に溶け込んだローカルアイドルファンの暮らしとは。



ちょうどデビューするんだし、行ってみようかって



去年の4月に福岡に引っ越してきて、とりあえず〈福岡 アイドル〉で検索したらLinQが一番最初に出てきたんです。来る前は〈HRがあるよ〉って言われていたんですけど、たまたまそのときやっていなかったみたいで。ちょうどデビューするんだし、行ってみようかって感じで。数週間はブログを見ながらデビュー公演を待っていた感じ。本当に偶然ですね。デビュー公演の前にキャナルシティでプレイベントがあって、そこでまなみん(桜愛美)を応援していこうかなって決めました。

キャナルとかデビュー公演のときは結構人がいたんですけど、そのあとビブレホールでやっていたときは少なかったですね。キャパ約250人だけど、50人いなかったんじゃないかな。通常公演を何回かビブレホールでやった後はライブハウスで公演を行っていた時期があって、去年の6~7月くらいに今のベストホールに落ち着いた感じですかね。毎回同じ所でやってくれるのは安心感があります。小さいライブハウスだと場所がわかり難かったり、店の外に並ぶこともあったり。公演後に物販をやるんですけど、あれだけの人数がいるので、机やサインを書くスペースが狭いと大変なんですよね。ベストホールは駅からのアクセスも良く、来る人も来やすいし、物販にも程よい広さじゃないか。ただ、最近の客数だと、手狭に感じることもありますけどね。

LinQはカヴァー曲はなくて、最初からLinQの曲だけですね。ビブレでやっていたころは狭かったので、土日で出る人を半々に分けてやっていて。最初の頃はまなみんがいるときしか行っていないので、半分のメンバーは全然見ていなかったんですよ。結局半分のメンバーを全く知らないまま何ヶ月か経って、ベストホールで初めて「あれ、こんな子いたんだ」みたいな。新しく入った子も含めて、今は顔と名前はみんなわかります。ただ新しい子は物販で話したことはないんですよ。最近は来る人が増えて物販の列も長くなってきたので、いろいろな子を回ってみるのができなくなってきています。

CDのリリース直後は遠征して来る人が増えて、通常の公演のときより随分と人が増えます。この間の生誕が4つ続いたときは東京やそれ以外から遠征で来た人が全体の半分くらいいて。同じまなみんを応援している人でも、この人、東京/大阪の人なんだけど、毎週いるよなって人とか。福岡まで遠征してでも見たいと思って来る人が多いみたいですね。逆に福岡から東京への遠征というのは、自分は、渋谷公会堂でやった〈アイドル横丁祭〉とか大きいのは行きましたけど、こっちでゆっくり見られるので、全部は行かなくてもいいかなと思っています。東京でイベントやっているときも、こちらに残った子がイベントをやっていたりしますから。



福岡と言ってもあまり遠い気はしなくて、まあどうにかなるだろうって



会社は、専門学校を出てすぐにシステムエンジニアとして就職して、それからずっと同じところにいます。今の仕事に不満があるわけでもなく、年数も経っているので窮屈な感じでもないし、わざわざ転職とか考えるといろいろと大変なので、いまのところその辺は考えてはいないですね。転勤もないだろうと思っていたんですが、取引先が福岡に移転するときに、一緒にこちらに移ってくることになりました。

でも転勤に関しては、あまり気にしていないですね。福岡はそれまで遠征で2、3回は来たことがあったんですけど、遠征していると、飛行機に乗ったり新幹線に乗ったり、数時間経ったらどこへでも行けちゃうじゃないですか。だから福岡と言ってもあまり遠い気はしなくて、まあどうにかなるだろうって軽い感じで来てしまいました。生活も変わっていないんですよね。ひとり暮らしだし、職場ごと移ってきたので、会う人は一緒だし。平日は家と会社を行ったり来たりという感じなので、逆に地元の人にはあまり会わなくて、LinQの現場で知り合った人くらいです。

福岡は街がコンパクトで、自転車でどこでも行けちゃうくらいの距離なので、関東に戻って、横浜の実家からアキバまで1時間というのがすごい苦痛になりました。横浜からだと、埼玉は遠いなとか。時間的に新幹線乗ったら名古屋行けちゃうよな、とか。そういう意味では時間と距離の感覚はおかしくなりますね。

平日は仕事です。一応、定時過ぎたら帰っていいんですけど、なかなか帰れなくて、朝は9時から、夜はだいたい10時くらいまで。関東にいるときもだいたいその時間だったので、平日イベントはあまり行けていないし、そこは変わっていないです。もう平日はあきらめようと。土日も急に仕事が入ることがあって、これまでは無駄になるのがチケット代だけだったんですが、こっちに来てからは東京のイベントに行く場合は飛行機代も気にしなきゃいけなくなりました。飛行機は早めに取ったほうが安いんですけど、行けなくなるとキャンセル料を取られちゃうんで、これからは交通手段のことも考えて、イベント行けるかどうかも判断しなきゃいけないなと。変わったのはそれくらいかな。

会社では、アイドル好きであることを自分から言うことはないです。特に上司がわりと古い考えを持った人なので、隠しておかないといけません。「社会人になってアイドルって」って昔の人は思っていますから。以前、会社の同僚の結婚式に行ったときに移動のバスが上司と一緒で、携帯の待受にしていた時東(ぁみ)さんを見られたことがあるんですよ。「これ誰なんだ?」って言われて、その場はやり過ごしたんですけど、その後、その上司に会うたびに「オタク趣味をどうにかしろ」とか言われるようになったんです。あまり面倒なことは増やしたくないので、ちょっと気をつけたほうがいいかなと。今、AKBとかでアイドルの話題自体は広まってきていますけど、CDを何十枚も買ったりというのは、やっぱりまだ、普通の人からすれば、「そんなに同じの買うかよ」って話じゃないですか。だから、わりと親しい同僚にも「そこまでがっつりじゃないですよ」と言っていますね。



あるときヤフオクを見ていたら握手券が10円で出ていて



アイドルを見るようになった最初は、時東ぁみさんです。20代後半から、遅めのスタートで。アニメとかゲームとかは昔から好きだったんですけど、それまではアイドルは全然興味がなくて。モーニング娘。とかもテレビで見ていて、顔と名前がだいたい一致するくらい。見に行こうとか思ったことは全くなかったですね。きっかけは「スクールランブル二学期」というアニメのオープニングを時東ぁみさんが歌っていたことで、見た目どうこうではなく、曲がいいなと思ってCDを買ってみたんです。イベントとかやっていることも知らなかったんですけど、あるときヤフオクを見ていたら握手券が10円で出ていて、家の近所の石丸だったので、10円だったら行ってみようかなと。

結構どこへでも行こうと思ったら1人でフラッと行ってしまうタイプで、時東さんの現場も予備知識なしで行って。テレビで見ていた人が目の前にいるって感じも新鮮だったんですけど、ファンの人たちがすごかった。ただ聴いているだけじゃないんだなと。でもみんなそういう感じだから、そういうところなのかなと、わりとすんなり受け入れて。他のみんなが握手会でぐるぐる回っているのを見て、そうか、そうやって何枚も買って何回も回るのかと。お祭り騒ぎ的な楽しさがあって、予備知識もなければ偏見もなかったので、そこで起こっていることが、この世界の常識なんだなと思ったのかもしれません。最初に行ったときから、もう1枚買い足して握手しましたからね。

それで興味を持って、ちょうどゴールデンウイークでイベントがたくさんあったので、秋葉原を転々として、いろいろと吸収してどっぷりと。それまで特に趣味らしい趣味はなくて、休日は家でゆっくりという感じで、あまり出歩くこともなかったんですけど、これを機にガラっと変わって、休日はほとんど家にいなくなってしまったという(笑)。朝早く出て夜遅く帰るのが当たり前になってしまいました。

時東の現場にはハロプロ系の人とかミスマガ(※注)から来た人とかいろいろいて、濃い人が多くて楽しかったですね。昔は並んだ順に入場していたので、とにかくみんな朝が早いんですよ。自分は最初の頃は開場時間ちょうどに行っていたんですけど、だんだん周りの人と知り合ってくると、みんなすごく早い時間に行っていることがわかってきたから、これはもう朝早く行かなきゃいけないんだと思って、周りに合わせるようになりました。石丸電気とかの入場が抽選になってからは少しゆっくりするようになりましたけど。当時、自分は29歳だったんですけど、自分より何個か上の人が多かったですね。今、LinQとか行っていると若い人が多いなと思いますけど。
*注 ミスマガ:講談社の漫画雑誌が開催しているグラビアコンテスト「ミスマガジン」の略称。時東ぁみはミスマガジン2005で「つんく♂賞」を受賞した。

時東ぁみさんのところには一人、この人に聞けばだいたいなんでも分かるという中心になるファンの人がいたんですよ。どこの現場にも必ず一番最初に来ていて、毎回最前列の中央にいるみたいな人で、今でいうTO(※注)的な存在ですね。その人は今もずっと時東さんのファンを続けていて、この間、TIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)に行った時に久しぶりに会いました。自分はだいたいその人を見て育ったというか、その人経由で知り合いが増えていった感じです。実はその人も時東ぁみからアイドルファンになった人なんですけど、そこから移動せず今もずっと時東を追いかけているんですよ。
*注 TO:トップオタの略。そのアイドルのファンの頂点に立つオタクのこと。何が頂点だか明確な定義はない。



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