ポスト・クラシカルシーンを代表する若き鬼才による新作
オラフル・アルナルズは弱冠25歳のアイスランド、レイキャビク出身の音楽家で、Mercuryに移籍してこの度サードアルバムを発表した。アルナルズは2007年にファーストを発表し、翌年には同郷のバンド、シガー・ロスとツアーへ出るなど早い内から注目を浴びていた。本作までの間にEPやニルス・フラムとのコラボレーション作を含めて8つの作品を発表しており、名実共にシーンを代表するアーティストだ。仄かなエレクトロニクス、ポスト・ロックのダイナミズム、オーケストラを用いたクラシック的楽曲構成という、デビュー当時より見せてきたスタイルを今回も踏襲しているが、ソングライティングの幅が増し、歌もの楽曲にも挑戦、新たな一面も垣間見える傑作だ。また、本作にはオーケストレーションにニコ・ミューリーが参加し、繊細な音像に大きく貢献している。
ポスト・クラシカルというタームは海外のメディアで使用され始め、ジョアンナ・ニューサムの『Ys』等、様々なジャンルのオーケストラを用いた作品へ付されていた様に思う。全体を括ると、エレクトロニカ以降の耳でクラシックの楽器を多用した、アコースティックのフェティシズムへの眼差しという点が共通項と思われ、この5、6年は世界中で様々な作品がリリースされている。近年はニコ・ミューリーがデッカ、マックス・リヒターがDGより作品発表を行うなどクラシックのレーベルからリリースされる動きが目立つ。また、重要人物として挙げておきたいのが、ビョークやムームのプロデューサーであり、当シーンの重要作品を多くリリースするbedroom communityのオーナー、ヴァルゲイル・シグルズソンだ。最新作ではメレディス・モンクらとも仕事をするヴァイオリニスト、ナディア・シロタの作品をリリースしている。日本に於いてはメディアで取り上げられる事もほとんど無い為、まずはオラフル・アルナルズの本作を、そして興味ある方はこの現在進行形のシーンを見逃さない様にして欲しい。