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上間綾乃

上間綾乃(3)

公開
2013/09/05   21:33
ソース
intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)
テキスト
text : 栗本斉(旅とリズム)

道なき道へ

『ニライカナイ』は、上間綾乃にとって大きなチャレンジであり、唄うたいとしての試金石でもある。今後彼女がどのように成長し、どういうポジションに進み、どのような「唄」を歌い、「沖縄音楽」とどう向き合って行くのか。ひとりのアーティストとしての様々な葛藤が渦巻いている。確実にいえることは、本作はけっして完成された作品ではなく、過渡期のドキュメントであるということ。ここで得られた答えは、きっと次作以降に反映されていくことだろう。それまではこの問題作に対峙し、じっくりと聴き込んでおこうではないか。ちなみに「ニライカナイ」とは、沖縄に古くから伝わる理想郷とでもいうべき概念のこと。上間綾乃が目指すニライカナイへの道は、とても険しいのかもしれない。でも、現状に甘んじることなく、果敢に突き進んでいってくれることを期待したい。

上間綾乃/2012〜2013の歩み

故郷沖縄で三線の師範を務めながら、音楽活動を続けていた上間綾乃が、『唄者 uta_sha』でメジャー・デビューを果たしたのは2012年5月。井上鑑を筆頭に、古武道やショーロクラブらも参加した同アルバムでは、《安里屋ゆんた》をはじめとした沖縄民謡のスタンダードから、ザ・フォーク・クルセダーズ《悲しくてやりきれない》まで、多彩な曲を披露。表現力という意味では、この時点である程度の完成された資質をみることができた。一年後の2013年6月にリリースされたシングル『ソランジュ』は、康珍化と都志見隆がタッグを組んだタイトル曲、上間自身による沖縄言葉の詩と、『唄者』でもサウンドプロダクションに大きく貢献していた伊集タツヤ作曲による《里よ》の2曲入り。対照的な両曲だが、どちらも「今の自分」上間自身が語ったように、セカンドアルバム『ニライカナイ』の重要なテーマとなる「沖縄との距離感」がここで示唆されていた。満を持してリリースされるこの『ニライカナイ』では、その「沖縄との距離感」を敢えて浮き彫りにすることで、上間綾乃の歩んできた道、そしてこれから向かう未来をあぶりださんとする。沖縄音楽の先達もきっと歩んだであろう、地図無き道。上間綾乃には今、何が見えているのだろうか?

LIVE  INFORMATION
『上間綾乃 Concert Tour 2013 <ニライカナイ>』

11/28(木)名古屋 THE BOTTOM LINE
12/5(木)大阪 umeda AKASO
12/7(土)東京 日本橋三井ホール
http://columbia.jp/uemaayano/

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