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ドゥダメル(指揮)BPO『R.シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》作品30他

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/10/24   10:00
ソース
intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)
テキスト
text : 渋谷店 雨海秀和


演奏家からも、聴衆からも絶大な人気を誇る若きマエストロの魅力を映像でも!

毎月配布されるクラシック音楽のフリーペーパーの海外の演奏会情報に心躍らせているのは私だけではあるまい。ここに名前を必ず見つけられる指揮者がドゥダメルだ。先日5年ぶりに日本を訪れ、10回近く指揮を行った。来日にあわせて発売されたCDとDVDを紹介する。オーケストラはいずれもベルリン・フィルで期待が高まる。

ドゥダメルは、近年ベルリン・フィルに1シーズン2プログラム程度招かれる。とはいえ、音楽監督を務めたカラヤン、アバド、そしてラトル以外の指揮者との共演を商品化するのは稀だ。それにもかかわらず、ドゥダメルは今回発売されたR・シュトラウスの録音と「ヨーロッパコンサート」、輸入盤で発売済のDVD「ジルヴェルターコンサート」も含め3種も商品化。これは双方の相性の良さ、団員からの評価の高さを物語っている。

CDはR・シュトラウスの複雑緻密な音楽を大仰にならず、スマートに響かせた。カラヤン、ショルティが残した同曲の名演にはない心地よい風通しの良さが印象的。「ツァラ」でのタルコヴィ(Tp)、「ティル」でのドール(Hr)、オッテンザマー(Cl)の名奏者を気持ちよく吹かせているのがよくわかる。

DVDではドゥダメルは、オーケストラをステージで引き立てるのが非常に巧みなのが映像で確認できる。立ち位置は通常の指揮者より奥に引っ込み、ともするとオーケストラメンバーに紛れてしまう。喝采を受けるのは指揮者ではなくオーケストラ、という彼の考えが伝わる。指揮姿は、聴き手は大ぶりの大熱演を期待するが、これは裏切られる。無駄なく、小さくも的確な指揮は近年のアバドのそれを思い出させる。「運命」はデビューCDの「疾走につぐ疾走」の印象はなく、じっくりと音楽に対峙する余裕が生まれている。

そもそもドゥダメルの演奏は楷書体の丁寧な音楽だ。オーケストラが気持ちよく弾くことのできる空間、雰囲気を巧みに創り出す。彼の鮮烈なデビューがかえって聴き手の固定観念を生んでいると考えるが、そろそろ、彼の音楽を虚心坦懐に味わってみたい。まだ32歳。進化・深化するのを陰ながら応援して聴いていきたいと思う。



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