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インタビュー

WHITE LIES


  その年のブレイク新人をピタリと当てる〈BBC Sound Of 2009〉で見事2位にランクインし、世界中のメディアから注目を浴びているウェスト・ロンドン出身の3人組、ホワイト・ライズが待望のファースト・アルバム『To Lose My Life...』をリリースした。アークティック・モンキーズ以降、シーンに風穴を開けるほどの威力を持った新人バンドが出現せず、〈本命不在感〉も否めなかったちょっぴり寂しいUKロック・シーン。そんななか、同作が全英アルバム・チャートで初登場1位をマークするなど熱狂的に支持されているという事実は、新時代への重い扉がようやくこじ開けられようとしているとも取れるだろう。果たしてUKロック・ファンからの期待を一身に背負うこととなってしまった彼らに、まずは気になる音楽趣味を訊ねてみた。

「3人が共通して好きなのは、スティルズやインターポール、シークレット・マシーンズあたりだね。特にシークレット・マシーンズのデビュー作『September 000』はいまでもよく聴くよ。あと、最近自分たちがそれまで聴いたことのなかった80年代の音楽、特にエコー&ザ・バニーメンとよく比較されるようになって以降は、そういう音楽もチェックするようになったんだ。彼らの『Ocean Rain』は良い作品だよね」(ハリー・マックヴェイ:以下同)。

 案外フツウ……。さて、仕切り直してここでバンドのキャリアを簡単に紹介しておこう。そもそも彼らが前身バンドであるフィア・オブ・フライングを結成したのが、いまからおよそ5年前のこと。そして2008年初頭からホワイト・ライズとして活動を開始したわけだが、同年4月に発表したシングル“Unfinished Business”がいきなりのヒットを記録し、その流れで〈フジロック〉にも出演。クールなステージングで日本の早耳リスナーを圧倒しているのだ。

「短い期間でここまでの成功を勝ち取れたのは、まずひとつに前のバンドで十分な経験を積んでいたことが挙げられると思う。ホワイト・ライズはまったく新しいバンドだけれど、過去の経験からすでにどのように物事を進めれば良いのか、どのように機能させれば良いのかをわかっていたから、寄り道をすることもなかったんだ。もうひとつは、このバンドを始めた頃、特にUKでは自分たちのやっている音楽が他のバンドとは違っていたことだね。いまでも僕らのような音楽を演奏しているバンドは少ないと思うし、そういったこともあってメディアやリスナーが比較的すぐに興味を持ってくれたんじゃないかな?」。

 ジョイ・ディヴィジョンを彷彿とさせるダークでメランコリックなギター・サウンドは、繊細でヒリヒリとした緊迫感を放ちながらも壮大でドラマティックな世界観を湛えている。確かに能天気なダンス・ロックが闊歩する現行シーンにおいて、彼らの持つ暗さは異質だ。そのうえ、ダークでありながらもその美しいメロディーにはしっかりとポップ・ミュージックの魔法が宿っていて、なるほど、これは夢中にならずにはいられない! また、ステージでは決まって真っ黒な衣装を身に纏っているが、そこに近寄り難い印象は皆無で、閉塞的どころか自分たちの音楽を真っ直ぐ聴衆に届ける術を彼らは知っているようだ。流石〈十分な経験〉を積んだ新人バンドである。

「サウンドのコンセプトは、ホワイト・ライズの音楽を鳴らすこと。歌詞がダークだったり、曲にも空虚さがあって……ね? 仰々しい仕掛けを用意しているわけではないけど、僕らの音楽は時に激しかったり、エッジが効いていたり、壮大だったりするんだ。ちなみにライヴで黒い服を着ること自体に意味なんてなくて、単に演奏で判断してもらいだけなんだよ。パフォーマンスの奇抜さや見た目で騒がれるアーティストにはなりたくないんだ」。

 インタヴューの最後に、ハリーはこのアルバムを「Grand(壮大)」の一言で気合い十分に表現してくれた。どこまでも暗く、どこまでも耽美なホワイト・ライズ・サウンドが、いまロック・シーンをひっくり返そうとしている。

PROFILE

ホワイト・ライズ
ハリー・マックヴェイ(ヴォーカル/ギター)、チャールズ・ケイヴ(ベース)、ジャック・ブラウン(ドラムス)から成る平均年齢20歳の3人組。2003年にウェスト・ロンドンで前身バンドのフィア・オブ・フライングを結成。高校に通いながら精力的なライヴ活動を展開する。2008年初頭に改名し、フランツ・フェルディナンドやカイザー・チーフスらが所属するマネージメントと契約。同年4月にファースト・シングル“Unfinished Business”をリリースし、7月には〈フジロック〉に出演する。今年1月にファースト・アルバム『To Lose My Life...』(Polydor/ユニバーサル)を発表。全英チャートで初登場1位を記録するなど注目を集めるなか、その日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2009年03月05日 20:00

ソース: 『bounce』 307号(2009/2/25)

文/白神 篤史