こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

矢沢永吉『TWIST』

 

 

 

2008年に立ち上げた自身のレーベルGARURURECORDS(ガルル・レコード)から昨年、
第一弾作品『ROCK'N'ROLL』をリリースして以来、わずか10ヶ月。
矢沢永吉が早くも、ニュー・アルバム『TWIST』を送り出してきた。
なにが彼を、ここまで駆り立てるのだろうか? 
現在の彼の内部にある、熱い思いを聞いてみた。 

「いまの矢沢、ここ15年間ぐらいの間でいちばん密度が濃いかもしれない。『TWIST』には、それが表れてますよ。」(矢沢永吉) 

 「間髪入れずにこれだけのハイペースで出したのは、前作の『ROCK'N'ROLL』で答えが出たからです。『ROCK'N'ROLL』のコンセプトは、リスナーに直球ど真ん中のサウンドを作ってやろうっていうことだったでしょ。それが間違いなかったっていうことですよ。だから、<時間を空けずにすぐ作るべきだ>と判断したんです」

コンセプトは、やはりストレートであること?

そうですね、『ROCK'N'ROLL』の延長線上にあることは、まず間違いない。基本テイストは変えちゃいけないと思ってましたからね。逆に『TWIST』ならではの新しい要素があるとしたら、ちょっと<やんちゃ>だってことだよね。ちょっとやんちゃで、ちょっと完璧じゃない感じ。荒削りなところがキーワードかなと思いましたね」

ではレコーディングもシンプルに?

「ドラムとベースは全部L.A.で録ってます。ほら、グルーヴはあの人たちからもらった方が早いから。
ほとんど一発録りで、レコーディングにかかった時間はそれほど長くなかったですね。
やっぱりうまい奴は速いですよね。でも、その後の細かいエディットには時間かかりました。
ミックス・ダウン、歌入れ、オーバーダブ、マスタリングなど、以後の作業は全部東京です。
その手法も『ROCK'N'ROLL』と同じ。<グルーヴは欲しいけど、洋楽にはしたくない。
絶対に日本の魂がちゃんと入ってるミックスの仕上げ方をしよう>っていう」

たしかにストレートかつシンプルであるぶん、<加工過多>な音楽よりもずっと説得力がある。

「そうそう、書いといてください、<加工くそくらえ>って(笑)。いや、それは冗談ですけどね。
ミュージックの種類にもよるから、打ち込みもジャンルによっては必要だと思います。
だけど、ロックンロールでは絶対アナログですよね。生のドラム、生のベース、これ命ですよね。
だから今後もいろんな技術が出てくるでしょうけど、ロックンロールという僕のジャンルにおいては
絶対に<ザラザラ感>、<揺れ感>の生のタイコっていうのは絶対ですね」

 結果、ストレートさが痛快だった『ROCK'N'ROLL』よりも、さらにアグレッシヴになった。

「そう、それも意図的です。ガサガサ、ザラザラ、トゲトゲしたロックンロールの方が、もっとリスナーのそばに行くと思ったんです」

 



 
 60歳を過ぎたら、落ち着くどころかさらにアグレッシヴになったようにも見える。

「だけどここまでくる間には遠回りもしたし、ものすごくエネルギーを費やしました。
でも、一見遠まわりに見えるかもしれないけど、振り返ってみればどれも必要でしたね。
一見遠まわりに見えるいろんなことが、いまの僕を作ってくれました。
つまり60歳になって『ROCK'N'ROLL』を作れたり、間髪入れずに『TWIST』を作れたりするためには、
そういう経験が必要だったのかもしれないってことですよね」

経験を重ねてきたからこそ、リスナーが求めるシンプルな路線に回帰できたのかもしれない。

「<リスナーは、いったいなにを求めてるんだ?>って、壁にぶつかったりもしましたけどね。
本当は僕ぐらい長くやってると、リスナーからなにを求められようが、どうでもいいわけですよ。
<俺は俺で勝手にやってるし、もう好きにして>でもいいわけじゃないですか。
だけど矢沢は、ものすごく探究心が旺盛だから。考えていくと、
作り手の理屈じゃなくてもっと直球なものが求められてるってことがわかるわけですよ。
それで<なるほどなあ。よし、わかった!>って作ったのが『ROCK'N'ROLL』。
手ごたえは確実にありましたし、そしたらもう一発ガッツリやってみようと思うじゃないですか。
おもしろいと思いません? 37年も音楽人生をやってきて、60歳になってから、
<またなにをやらかすのか>っていうところに矢沢きてるじゃないですか。
下手したら、ここ15年間ぐらいの間でいちばん密度が濃いかもしれない。きりがないですよね」

 

それにしても『ROCK'N'ROLL』以降の矢沢には、どこか突き抜けた印象がある。そして今回は、それがさらに明確になった。

「それは確実に、レコード会社を作ったからです。すべて自分たちの手でやろうと決めて実行したから、
そこが決定的に違うんじゃないですか。あとは、楽しむってこと。37年もやった末に、
<いろんなことを楽しみながら、自分たちでやろうよ>っていう境地にたどりついた。だからある種、
抜けたのかもしれないですね。だいいち、自分で言うのもなんですが、それに匹敵するだけの作品ですよこれ。
愉快だと思ってもらえるだろうし、矢沢がいまやってることに共感してもらえると思います。」




  

■ LIVE…

EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR 2010 「TWIST」
10/28(木) 新潟県民会館
10/29(金) 上越文化会館
11/1(月) 神奈川県民ホール
11/3(水・祝) 富山オーバード・ホール
11/4(木) 本多の森ホール
11/6(土)、7(日) 仙台サンプラザホール
11/9(火) 森のホール21
11/10(水) アクトシティ浜松
11/12(金) 広島市文化交流会館
11/13(土) 倉敷市民会館
11/15(月) 山梨県立県民文化ホール
11/17(木) 長良川国際会議場
11/18(木) 四日市市文化会館
11/19(金) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
11/23(火・祝) マリンメッセ福岡
11/28(日) 北海道立総合体育センター (きたえーる)
11/30(火) 茨城県立県民文化センター
12/1(水) よこすか芸術劇場
12/4(土)5(日) 日本ガイシホール
12/7(火) アルファあなぶきホール (香川県県民ホール)
12/8(水) 鳴門市文化会館
12/11(土)、12(日) 大阪城ホール
12/15(水)~20(月) 日本武道館

詳しいスケジュールはHPまで。



■ PROFILE… 矢沢永吉(ヤザワ エイキチ)


1949年広島生まれ。1972年にキャロルを結成。1975年にソロに転向し、日本人として初の武道館公演を成功させるなど、不動の地位を確立。近年はロック・フェスティバルにも積極的に参加するなど、活躍と挑戦は益々多岐に渡っている。




記事内容:TOWER 2010/6/05号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2010年06月02日 09:50

更新: 2010年06月02日 15:43

ソース: 2010-06/05

印南敦史