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インタビュー

ホフェッシュ・シェクター(ダンサー、振付家、作曲家、ドラマー)

Hofesh Shechter『Political Mother』 ©Tom_Medwell

視覚と聴覚の驚異! ホフェッシュ・シェクター(ダンサー、振付家、作曲家、ドラマー)インタヴュー

「私のパフォーマンスは、可能な限りすべてをミックスしたものです。私にとって作品とは感覚あるいは感情の世界のこと。音、音楽、動き、芝居、言語的なアイディアなど、それをサポートするものであれば何でも受け入れます。これは、現代のアート形態のポイントでもあります」

ホフェッシュ・シェクターは、イスラエル生まれ、現在イギリス在住のアーティスト。「ホフェッシュ・シェクター・カンパニー」を率いる振付家として、ダンサー、そしてドラマー、作曲家でもある。ホフェッシュは、エルサレムでダンスを学んだあと、イスラエルを代表するダンス・カンパニー「バットシェバ舞踏団」でダンサーとして活躍、テルアビブやパリでドラムとパーカッションを学ぶ。その後、活動の拠点をイギリスに移す。2003年、振付家としてのデビュー作で音楽も作曲した『Fragments』を発表。2006年には『Uprising』 2007年に『In your rooms』を発表、その迫力あるビートと融合する自由で快活なダンス・パフォーマンスは彼の名を世に知らしめた。そしてこの度、初来日にして新作『ポリティカル・マザー』を彩の国さいたま劇場(6/25〜27)と山口情報芸術センター(6/20)にて披露する。


Hofesh Shechter  ©Carl Fox

ホフェッシュのパフォーマンスは、マルチプルで、有機的だ。身体を使った表現というとてもベーシックな芸術表現でありながら現代的ななにか、新しさを感じさせる。この〈なにか新しいこと〉について 意識しているのかと尋ねると、

「私が作品を作るとき、唯一意識をしていることは、感情と感覚の世界のことです。それは〈新しい〉という言葉の中には含まれないと思います。何も新しいものはない。意識して何か新しいことにトライするとこは、とても味気なく、さえないことです。作品に対する感情的な誠実さ、これが私ができる最善の努力なんです」

確かに作品を作る時に一番重要なことは、その内面の声に耳を傾けることだ。とてもナイーブで当たり前のことだが時代が変わってもこのこと自体は変わらない。もしホフェッシュの作品に新しさを感じるのであれば、それは彼が言うように意識されたものではなく、彼の特異な経歴=〈ドラマー、ダンサー、振付家〉とバックグラウンドが彼の作品に無意識ににじみ出た結果だろう。

「作品を作るときに、コンスタントに自分のバックグラウンドを意識することはありません。私の作品は、自分のバックグラウンドについてではありませんし。もちろん、私のバックグラウンドが作品に何らかの作用をすることはありますよ。たしかに、私は多くの人々の生き方と似ているなとは思います。人々は、これをやったり、あれをやったりと、いろいろトライして、私もそうです。私の場合、ダンサーで、ドラマーで、そして今は振付家。まあ、それは自然なことで、特にダンサーであったことと、ドラマーであったことは、振付けにとても役立つ経験だった」


『Uprising』©Andrew Lang

7人の男性ダンサーによる『Uprising』、女性5人、男性6人、演奏家5人による『In your rooms』を観ると、恍惚の渦に引き込まれる。全編に力強くかつミニマルなリズムが流れ、またそれに呼応するがごとく踊っている身体からもリズムが聴こえてくるようなシナジー。彼のダンスでは〈リズム〉が明らかに重要位置を占めている。

「私は、リズムとグルーヴが好きです。それは、私たちの身体、精神、そしてムードに作用するシンプルで強力なものを持ち合わせています。それは、儀式を通してエネルギーを生み出し、私たちの身体と結び付く太古からの原始的なやり方です。私はその幅広い意味やリズムが生み出すようなシンプルなことが好きなんです」そう、シンプルだ。様々なシチュエーション、ダンサーの複雑な動き、シーンの切り替えのコントラストといったダイナミックなステージであるにもかかわらず、明快だ。彼が語るようにリズムというシンプルな音遊びを軸として、様々な要素がうまく絡み合っている。「これは、グループ・ワークなので、人々がお互いに注意を払ったり、結びついたりすることがとても重要なんです。それがとてもポジティブな雰囲気や、発展するために相互にうまく働く感じを生み出すのです」


『In your rooms』©Ben Rudick

ホフェッシュのパフォーマンスの影には様々なものが見え隠れしている。

「影響を受けたものはたくさんあります。ダンスにおいては、オハッド・ナハリン(バットシェバ舞踏団)、フォーサイス、 ヴァンデケイビュス、ピナ・バウシュ、マッツ・エックなど。スタンリー・キューブリックやチャーリー・カウフマンといった映画監督からもとても影響を受けています。しかし、なんにでもインスピレーションを感じますよ、特に私の周りの人々のふるまいとかね」

なるほどダンス・パフォーマンス~映画という観点は面白い。

将来のことを尋ねると、「私は、音楽にもう少し集中してみたいと思っています。映画もやってみたいです」。新作『ポリティカル・マザー』は、彼にとって初の長編作。ホフェッシュ自身のスコアによる生演奏と10人のダンサーとが織りなすこのダイナミックなパフォーマンスに期待したい。

ホフェッシュ・シェクター『ポリティカル・マザー』
振付・音楽:ホフェッシュ・シェクター
出演:ホフェッシュ・シェクター・カンパニー(ダンサー10名、ミュージシャン8名)

2010/6/25(金)開演19:30
26(土)開演15:00
27(日)開演15:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場
埼玉県さいたま市中央区上峰3-15-1
(JR埼京線与野本町駅(西口)下車 徒歩7分)
料金:【一般】S席5,000円 A席3,000円 学生A席2,000円
【メンバーズ】S席4,500円 A席2,700円
http://www.saf.or.jp/

6/20(日)開演14:00
会場:山口情報芸術センター(YCAM)
山口県山口市中園町7-7
料金:一般2,800円/any 会員・特別割引2,500円/ 18歳以下2,000円
当日 3,300円(全席自由)
http://www.ycam.jp/

ホフェシュ・シェクター(Hofesh Shechter): ダンサー、振付家、作曲家。イスラエルの世界的ダンス・カンパニーバットシェバ舞踊団にてダンサーとして活躍。同時に打楽器奏者としての訓練も受ける。 2002年イギリスに移り、『Uprising』(06年)、『In your rooms』(07年)で一躍UKダンス・シーンの先導的地位を確立した。08年カンパニー結成。同年、英国ダンス批評家賞最優秀振付賞を受賞。サドラーズ・ウェルズ劇場(ロンドン)アソシエイト・アーティスト。ブライトン・ドーム(ブライトン)に創作の拠点を置く。
http://www.hofesh.co.uk/


『Political Mother』 ©Tom Medwell


 

 

 


 


カテゴリ : Web Exclusive

掲載: 2010年06月02日 14:00

更新: 2010年06月02日 19:11

ソース: Web Exclusive

interview & text : 町田良夫