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インタビュー

ASIAN KUNG-FU GENERATION『マジックディスク』

 

 

 

めいっぱい躍動している。ストリングスやピアノ、パーカッションにブラス・セクション……豊潤なサウンドと
バンドとの伸びやかなアンサンブル。予感も期待もしていたけれど、これほどに開かれるとは!
アジアン・カンフー・ジェネレーションの6thアルバムにして記念碑的傑作『マジックディスク』。
そうだ、これが音楽だ。

 

「魔法みたいな音楽が作りたい。壁を殴って叩き壊すんじゃなく杖を振ったらキラキラ……って世界が変わるような」(後藤正文)

 

 これだけいろんな色をもった曲揃いですから皆さんそれぞれに思い入れ深い曲があると思うんですけれど。

喜多建介(Gt./Vo.)「僕は“双子葉”とか“迷子犬と~”、あと“青空と黒い猫”かな。今までよりちょっと長めのソロが入ったんで」

“青空と黒い猫”のギターとかすごいですもん、泣きまくってて。

喜多「泣きすぎだ、くらいの(笑)。弾くの楽しかったですよ。
これがライヴとかになるとまた楽しいんだろうなって思いながら」

後藤正文(Vo./Gt.)「曲作ってて、建ちゃんに弾かせなきゃってのは
あったな。潔とよく話してたんですよ、「建ちゃん、弾けるのになんでか
本番で発揮しないよね」って。セッションとかリラックスしてワーッと弾いてるときはめちゃくちゃいいのに」

今回はうまく引き出されましたね。

後藤「“迷子犬と~”の裏のギターとか“さよならロストジェネレイション”のイントロからのリフとか最高で。なんであの曲が泣けるかっていうと最後のサビでそのリフレインが戻ってきたりするんですよ。
フレーズの引き出しとか自分では開けないところを開けるんだよね、建ちゃんは。
だから俺はそれを見張ってる、ずっと。すごいの出してるのに本人に自覚ないときがあるんでね(笑)」

山田さんはどうです?

山田貴洋(Ba./Vo.)「“ラストダンスは悲しみを乗せて”はデモの段階からベース・ラインがいい感じに出来てて、ただそれは自分の地にはないものだったんですけど。このままだと弾きづらいなと
思いつつ、これがやれたら新しい引き出しになるかなと思って。あえてデモに忠実にやったことで
手応えを得られた曲ですね

後藤「俺もちょっと驚いた。そのままやるんだ! って(笑)。
これはあんまり山ちゃんはやらないかなって、けっこう意識的にデモ作ってたんだけど」

ちょっとした駆け引きみたいな。

後藤「そういうのはあると思いますね。一方でこれは任せちゃえば勝手によくなるだろうなっていう曲もあって“ラストダンス~”」もソロのところは単純に<カッコよくして>って渡しちゃってたりするし」

 

 






この曲は東京スカパラダイスオーケストラの大森はじめさんがパーカッションでゲスト参加されてるんですよね。

伊地知潔(Dr.)「すごかったです。最初はそこも自分でやろうとしたんですけど難しくて。ラテンっぽいんだけどギリ、ラテンぽくないっていう紙一重なところがどうしても出せなくて」

後藤「大森さんが持ってきてくれた本場のカウベル、もうバッチリだったよね」

伊地知「ものすごい数のカウベルが出てきて、その時点でこれは勝てないやと(笑)。
僕、2個しか持ってないのに何十個と出てきましたから」

あはははは。あと、“架空生物のブルース”はバンド・サウンドにストリングスのリフが並走する感じが面白かったです。
淡々としてそうで実は表情豊かだし。

後藤「僕もこんないい曲になると思ってなかった(笑)。<地味な曲だな~>って思いながらデモ作ってたから。ストリングスとピアノが入ってすごく豊かになりましたね」

 『マジックディスク』というアルバム・タイトルは2曲目の“マジックディスク”をそのまま持ってきたんですか?

後藤「あんまり曲の中身とアルバム全体がイコールってイメージはないんですけどね。
単純に<マジックディスク>っていう言葉がいいなと思ったのがひとつと、詞でいえば
<特に名前のない この喜びを集めて/いまひとつ抑揚の無い日々に魔法を仕掛けて>っていう2行が
象徴的だなと思ってて」

 

 





 それが今、アジカンのやりたいこと。

後藤「そう、魔法みたいな音楽が作りたい。壁を殴って叩き壊すんじゃなくて、杖をフッて振ったら
キラキラキラ……って世界が変わるとか、指をパチンって鳴らしたらフワッと景色が変わるようなイメージ。
そういうものが作りたい。そういう音楽たちを集めてCDってものにコンパイルして世に放つ。
それが、すなわち<魔法の円盤>=『マジックディスク』なんだっていう」

喜多「実際、僕たちもリスナーとしてそういうものを、いろんなアーティストからもらってきましたから」

山田「ホント魔法をかけられてここまで来てるんで。だから今、そんなに感じてないって人にこそ
もっと感じてほしいなと思うし」

伊地知「もっと聴いてほしいですよね、音楽を。音楽を知らないってかわいそうだなと思うんですよ。
最近多いじゃないですか、パソコンや携帯で聴くからコンポは持ってないとか、ふだん音楽聴かないから
それで十分っていう人。そういう人達にも<いや、音楽っていいよ?>って伝えたい。
音楽聴いて変わることっていっぱいあると思うんで」

その日の気分も、長い目で見れば人生だって、ねえ?

伊地知「ウチら、変わりましたからね(笑)」

このアルバムにもその力はあると。

伊地知「もちろんです!」

難しいことは考えずとも、無邪気に楽しめる作品だと思いますし。

後藤「うん。これをライヴでやれるのがまた今からすごいワクワクするんですよね。
これをライヴで転がすことに、ものすごい希望を感じてる。
とにかく早く届けたいです。どう聴かれて、どんなエネルギーを生むのかすごく興味があります」



 

■ PROFILE…ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)

 1996年、大学の音楽サークルにて結成。03年、メジャーデビュー。後藤が描くリアルな焦燥感、絶望さえ
推進力に昇華する圧倒的なエモーション、勢いだけにとどまらない<日本語で鳴らすロック>で
ミュージックシーンを牽引し続け、世代を超えた絶大な支持を得ている。 


記事内容:TOWER 2010/06/20号より掲載

 

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2010年06月22日 10:45

更新: 2010年06月22日 12:51

ソース: 2010/06/20

本間夕子