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インタビュー

ソングライターとしてジャパニーズ・ポップ・シーンを彩った、末光篤の3年間



LOW IQ 01やDOPING PANDAなどライヴハウスの猛者たちが大挙参加し、2004年に発表されたディズニー・ソングのロック/パンク・カヴァー集『Mosh Pit On Disney』において頭角を現して以来、SUEMITSU & THE SUEMITH(当初の名義はTHE SUEMITH)として活動を続けてきた末光篤は、2008年発表のベスト・アルバム『Best Angle for the Pianist』まで、みずからのピアノ・ロックの世界観を駆け足で構築し、提示してきた。緻密なアレンジの設計と大胆なまでに開放的なメロディーをもってその後、作家としての活動にシフトした彼は、2008年に安藤裕子“HAPPY”、そして2009年に木村カエラ“Butterfly”の作曲/編曲を担当する。愛する人への喜びの気持ちが歌い上げられた両曲で、起伏に富んだエモーショナルなメロディーとそれを引き立てる隙のないアレンジメントを施し、彼女たちの詞世界をカラフルに染め上げた。そして、南波志帆“楽園にて”、タッキー&翼“Chance To Dance”、坂本真綾“eternal return”、渡辺美里“世界中にKissの嵐を”といったその後の提供作品いずれにも感じるのは、彼が限りなくシンガーの歌に寄り添いながらも、独特の〈泣き〉のセンスを旋律の奥に忍ばせているということだ。末光と共同作業を数多く行ういしわたり淳治が、時にそのアーティストのパブリック・イメージと異なるヴェクトルの言葉を抽象的なカタマリとしてぶつけてくることで異化作用を促すように。それはカヴァーにおける料理の腕前のなかにも感じられ、サンプリングネタとしても知られているミュージカル「アニー」の挿入曲“It's the hard knock life”のようにキュートなキッズ・コーラス使いの“アンパンマンのマーチ”(!)、そして大ファンだという野宮真貴に敬意を表したピチカート・ファイヴ“恋のルール、新しいルール”のリミックスからも、末光が根底に持っている〈エモ〉な感覚のようなものが感じられて仕方がないのだ。


▼文中に登場する楽曲が収録された作品を紹介。

左上から、2004年のカヴァー・アルバム『Mosh Pit On Disney』(WALT DISNEY)、SUEMITSU & THE SUEMITHのベスト盤『Best Angle for the Painist』(キューン)、安藤裕子の2008年作『chronicle.』(cutting edge)、木村カエラの2009年作『HOCUS POCUS』(コロムビア)、南波志帆の2010年作『ごめんね、私。』(ポニーキャニオン)、タッキー&翼の2011年作『TRIP & TREASURE』(avex trax)、坂本真綾の2011年作『You can't catch me』(flyingDOG)、渡辺美里の2011年作『Serendipity』(エピック)、2007年のカヴァー・コンピ『ROCK for Baby』(キューン)、2007年のリミックス・アルバム『京平ディスコナイト』(コロムビア)

 

 

掲載: 2011年11月02日 18:00

更新: 2011年11月02日 18:00

ソース: bounce 337号 (2011年10月25日発行号)

文/駒井憲嗣

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