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インタビュー

〈Dear Grand Piano〉を謳う末光篤、そんな彼が熱い思いを寄せるピアニスト5撰



「ピアニストの作品って、実はあまり聴かないんですよね。なんか、いたたまれなくなっちゃうっていうのか、聴いててちょっと悔しくなるんです。嫌いとかっていうわけじゃないんですけど、同じ楽器を使う者として、すごい人ほど聴きたくない——それってジェラシーとかライヴァル心とか闘争心とかってことなんでしょうね(笑)。そういうなかでも……というのがこの5人です」(談)。




BEN FOLDS 『Rockin' The Suburbs』 Epic(2001)

彼が世に出てきた頃、僕は渋谷の某CDショップでバイトしてたんですけど、そのときに誰かから〈末光クンもこういうバンド組みなよ〉って言われて。で、僕はバンドなんて興味がなかったんですけど、CDを聴いてこれはすごい!って思いました。プレイ・スタイルも独特だし、驚きがいっぱいありますね。あと、彼の歌声もすごく好きで、ジムでトレーニングしているときに“Zak And Sara”なんかかかったら、うわっキター!ってすっごくアガりますよ(笑)。

 

JERRY LEE LEWIS 『Sun Essentials』 Charly

下北沢に50〜60年代の音楽が好きなオヤジがやってる古着屋があって、そこで流れてた映像を観て、これはなんだ!と。で、訊いてみたら、これはジェリー・リー・ルイスの〈火の玉ロック〉だって。もう、すぐさま〈ダビングさせてください!〉って頼んだんですけど、〈ダメ!〉って(笑)。それでもお願いしてなんとかダビングさせてもらえたんですけど、しばらくその映像にハマってましたねえ。まさにもう、火を噴くようなピアノとはこのことですよ。

 

THELONIOUS MONK 『Solo Monk』 Columbia(1964)

ヘンな感じというか、独特の不協和音とでもいうか……。名古屋の音大に通ってるとき、市内のジャズ・バーでアルバイトしてたんですけど、そこのマスターがよくかけていたのを聴いて好きになりました。自分も歳を取ったらモンクみたいな風体になりたいですねえ(笑)。見た目の雰囲気とかで音楽の説得力がさらに増している──セロニアス・モンクと横山剣さんの間ぐらいの雰囲気を醸し出せるようになれれば最高です(笑)。

 

ROY MERIWETHER 『Nubian Lady+2』Stinger(1973)

小西康陽さんが監修したバカラック・ナンバーのカヴァー集に彼の演奏が入っていて、そこからいろいろ探っていったんですよね。わりとファンキーなジャズ・ピアノを弾く人なんですけど、結構ミスタッチなんかもあったりして。僕はクラシック出身なのでそういうのがすごくイヤなんですけど、でも、彼のプレイを聴いていると、そういうのってあまり関係ないんだなって。むしろ味になったりして。そういう意味では自分の音楽観を変えたピアニストですね。

 

MARTHA ARGERICH 『The Legendary 1965 Recording』EMI

クラシックの女性ピアニストで、非常にエキセントリックなピアノを聴かせる人ですね。音がね、カミソリみたい。聴いてると切り刻まれそうな、なんか、女性特有の気性というか、男には出せない感じ。ヒステリックというのとは違うんですけど、攻撃的な感じに女性ならではの鋭さがあって。シューマンとかショパンとかの曲をすごい速さで演奏しているのとかあったりして、これは音大時代によく聴いてましたね。強烈な個性です。

掲載: 2011年11月02日 18:00

更新: 2011年11月02日 18:00

ソース: bounce 337号 (2011年10月25日発行号)

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