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インタビュー

アロンドラ・デ・ラ・パーラ


知られざるメキシコのオーケストラ音楽の魅力をふんだんに



いまラテン・アメリカのクラシック界が熱い! 紋切り型の表現だけれど、本当にそうなのだから仕方がない。ドゥダメルなど若手指揮者を輩出するヴェネズエラの〈エル・システマ〉だけでなく、今回はメキ シコから若手指揮者が登場した。それがアロンドラ・デ・ラ・パーラ。美しい人である(1980年生まれ)。彼女が録音した『メキシコ音楽集』はメキシコ国 内で大ヒットを記録した。

「指揮者になりたいと思ったのは13歳の時でした。特に憧れの指揮者が居たわけではなく、音楽が大好きで、ピアノとチェロを学んでいた自分にとってやるべき道は指揮者なのだと確信したのです」

イギリスの寄宿制高校ではオーケストラに参加し、多くの影響を受けた。メキシコに帰国後、音楽院で作曲を、そして19歳でニューヨークのマンハッタン音楽院に学ぶ。

「ここでケネス・キースラーに指揮を学びましたが、彼が指揮者にとって必要なことをすべて教えてくれました。今日私が指揮者として活躍しているのは、彼のおかげです」

指揮活動を始めると、いくつか不満な点も出てきたと言う。

「メキシコを含め、ラテン・アメリカの音楽が演奏される機会が圧倒的に少ないのです。またラテン・アメリカ出身のソリストが演奏する機会も少ない。いまラテン・アメリカにはたくさんの才能を持った音楽家が居るのに、とても残念なことでした」

そこでアロンドラが考えたのが、ラテン・アメリカ音楽を演奏するラテン・アメリカ出身者によるオーケストラを作ってしまうことだった。

「最初のきっかけは、ある領事館から依頼によってラテン・アメリカ音楽の演奏会を企画したことでした。それが音楽的に大成功を収めたので、皆がこのプロジェクトは継続して行くべきだと感じたのです」

そうして2004年にフィルハーモニー・オブ・ジ・アメリカズ(POA)が結成され、定期的な演奏会を行なうようになった。またアロンドラ自身も欧米のメジャー・オーケストラやシモン・ボリバル・ユース管などへの客演を行なうようになった。そして大成功を収めたアルバムの録音へ。

「メキシコの文化は実に多彩で長い歴史を持っています。音楽もそうですが、知られている作曲家はポンセやチャベスなどごく一部だけ。それで数年掛けて、メキシコのオーケストラ音楽をリサーチし、遺族のもとにある自筆譜を探したり、アーカイブをチェックしたりして、その中から厳選した作品を録音することになったのです」

未知の作品が多いが、その美しさは知識無しにも充分楽しめるもだ。

「個人的にはマーラーの作品に関心がありますね。彼の人生と一体となった作品に魅力を感じるのです」
日本でも再びタクトをとって、その凛々しい指揮ぶりを見せて欲しい。


『アロンドラ・デビュー!〜華麗なるメキシコ・オーケストラ作品集』

収録曲: マルケス:ダンソン第2番(1994年)
カンパ:ヴァイオリンとオーケストラのためのメロディ作品1(1890年)
チャベス:バレエ音楽「馬力」組曲〜第3曲「熱帯地方」(1954年)
カストロ:歌劇「アツィンバ」間奏曲(1900年)
イバーラ:シンフォニア第2番「夢の控えの間」(1993年)
モンカーヨ:ウアパンゴ(1941年)
ラビスタ:クレプシドラ(水時計)(1990年)
ウイサル:交響詩「イマヘネス」(1927年)

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2011年11月18日 11:00

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日)

interview & text : 片桐卓也