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インタビュー

ジューサ

「今、一番好きな作曲家もアルゼンチン人ばかり」

チリ南部噴火活動による火山灰の影響で、6月から10月へ繰り越され、やっと迎えたジューサ7年ぶりの来日公演。ハバナ出身、現活動拠点ブエノスアイレス。キューバ人2名+アルゼンチン人2名の演奏は熱く、見事にしなやかだった。

「まだハバナに自宅はあるけど、活動量が増えたので、09年に拠点を移すことにした。初めてアルゼンチンを訪れたのは07年、サンティアゴ・フェリウのミュージシャンとして。そのとき単独ライヴの機会があって、驚いたことに、観客はすでに私の楽曲を熟知し、みんな一緒に歌ってくれた。ちょうど欧州での人気に少し陰りが見え始めていたし、アルゼンチンを含む南米の音楽市場が、自分にとって新たな可能性に思われたの」

キューバ革命から80年代まで、ゲバラ生誕国との音楽交流は、今より遥か緊密だった。

「90年代にラテンアメリカ諸国との交流が停滞し……アルゼンチン音楽について、実は自分がまったく知らないに等しかったのだと気づかされた。サンバ、チャカレーラ、トナーダ等の伝統リズムを発信する縁の土地を訪ねたのは、素晴らしい経験だった。アルゼンチン人自身、その豊かさを認識しきれていないと思えるほど、とても豊かな伝統を内包している国だから。今、私が一番好きな作曲家たちも、アルゼンチン人ばかり」

最新ライヴ収録曲で、ファースト作初出の《別れ》には、チャカレーラのリズムと海と水の女神イエマジャーとが交錯していて面白い。

「チャカレーラは幼い頃から聴いていた。青春期にギター奏法や作詞面で影響を受けたS・フェリウも、チャカレーラ曲を作っていたしね。最初の録音では、ボンボ・デ・レグエロの代わりにバタドラムを使ったのよ。イエマジャーはキューバの守り神。いろいろなリズムや要素の組み合わせ、文化の混在が、新しい音楽を生むと思うの」

録音会場となったカフェ・ビニーロでは、ジューサとアルゼンチン逸材との闊達な競演が、シリーズで繰り広げられているそうだ。題して『友とのデスカルガ(ジャムセッション)』。

「まるでわが家にいる気分で、音楽仲間と魂のフィエスタを実現できるなんて、幸運だよね。結成当時のインテラクティボも、あらゆるジャンルを融合させる工房みたいな存在だった。去年の11月と今年の2月、オスロで5年ぶりに旧メンバーが奇跡的に集結したのよ」と、創作の原点を振り返りつ、彼女は無垢な瞳を輝かせた。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年01月20日 20:44

ソース: intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)

取材・文 佐藤由美