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インタビュー

OKI



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OKI meets 大城美佐子──北と南の「固み節」


シマ唄の歌詞ふうに言うなら「水んむらさん二人(たい)が仲」である。沖縄の唄者は、ほぼ100パーセント、三線を弾きながら唄をうたう。唄三線という言葉のとおり、唄と三線とはくっついたまま離れないのである。そこへアイヌの間男、もとい、音楽人であるOKIはいかにして交わっていったか。

「レコーディングの現場でも、三線とヴォーカルとが分離できないんだよ。マイクの置き方やトンコリの入り方、小手先では太刀打ちできない。とりあえず録っておいて後で組み立て直すということも難しい」

そこでひとまず、ユニゾンという手法をとった。大城美佐子の三線のフレーズを、唄のメロディを、トンコリがシンプルになぞる。三線の音なのかトンコリの音なのか渾然一体となった添い歩きの姿は1曲めの《固み節》で聞くことができる。そこから一歩進んで2曲目の《恋(くい)語れ》では、OKIの弾くベースとギターが、美佐子の唄と三線を追いかけたり追い抜いたりと戯れてゆく。決して融け合っているのではない。

あなた腕もいいし、男ぶりもいいし、なにより誠実だから、ふふ、まあついてきてもいいわよ。美佐子のそんな意を汲んでか、音象は徐々に徐々にOKIの色が濃くなってくる。

「一番参考になったのはマルフク・レーベルとかの沖縄の昔のシングル盤だね。おれが連想したのはスタジオ・ワンあたりで録られていたジャマイカの古いシングル盤の音。リヴァーヴやらディレイやらかかりまくりで、ガッツのある音」

《南洋浜千鳥》のゴリッとした三線の音、美佐子の声の黒々とした響きなど、きょうびの沖縄音楽では体感できないサウンドだ。しかもここにトンコリの音は入っていない。かとおもえば、OKIと堀内加奈子(美佐子の一番弟子)、北海道ルーツのふたりが軽快にヴォーカルをとる喜納昌吉作の《レッドおじさん》がある。音楽的記号に頼らない、まさしく、北ミーツ南、南ミーツ北の試みだ。中抜きされた形のシャモ=ヤマトンチューのために、やさしいOKIと美佐子は日本語曲《北と南》も用意してくれてある。

「美佐子さんの十八番の《固み節》は何があっても二人は離れないという強い愛の唄だけれど、どんな時代にあっても変わらない強い意志をもって生き続けるという意味もおれは込めたね。3・11以後本当にそう思う。だから、以前にもまして、いい加減な作品はつくれないんだ」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年07月02日 16:03

ソース: intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)

取材・文 大須賀猛