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インタビュー

天満敦子



より多くの人にこの想いを…祈りのうた・ふるさとのうた


天満敦子AP

ヴァイオリニスト、天満敦子さん。多くの人を魅了し続ける彼女の新作は、心にしみいる悲しみのうたと祈りのうたを、豊麗な響きと豊かな表現力で紡ぎだした 『ふるさとのうた』。『ねむの木の子守歌』(KICC-530)に続く〈日本のうた〉シリーズ第2弾の今作に込めた想いを伺った。

──天満さんならではのうたが聴かれますね。

「日本人の心の原点ともいえる日本のうたを、天満が弾いてる~という演奏で聴いていただきたかったので嬉しいです。以前から心酔していた和田薫さんと若松欽さんに編曲をお願いできたので、心に残る作品が出来上がりました」

──オルガンと奏でる《さくら貝の歌》は震災犠牲者追悼の哀切歌。和田薫の編曲による美空ひばりの名歌《悲しい酒》は天満独奏による慟哭の詩。竹内邦光が 天満のために書き下ろした《古謡》の他、小林英之のオルガン伴奏、吉武雅子のピアノ伴奏から独奏曲まで曲想も多彩に全14曲収録。

「《荒城の月》、《悲しい酒》、《赤とんぼ》はなかでも気に入っています。先日、ベトナムに短い旅をして、アンコールで《赤とんぼ》を弾いたのですが、実はベトナムはトンボを大事にしている国なのだ、と聞かされました。そんなご縁もあって思い入れが少し強くなりました」

──今作で初めて取り組まれた曲は?

「全部(笑)。違うのは竹内さんが30年ほど前に私に書いてくださった《古謡》だけ。その意味で全てチャレンジ、でも全部良い気分になりました。〈天満 節〉を感じてもらえたらと思っています。そして音色や音も。《月の沙漠》はちょっと泣けます。こういう曲を弾くと皆さんが安心されるみたい。プログラムの 本編でもホッとする存在になれたらと思います。弾けば弾くほど共感が深まります。皆さんにも日本の曲はいいなと改めて思ってもらえたら嬉しい。今回の大震 災で親戚に犠牲者を出したこともありますし、年齢を重ねて始めて歌えるうたもありますから、今この時期にこれらの曲を弾けたのは、必然だったのだと思います」

──天満さんにとっての心の支えは?

「旦那さま(笑)。ケースの蓋を開けた瞬間が幸運という人生の始まりでした。1735年製のストラディヴァリがいてくれるからできることが大半です。出会 いがなかったら〈今〉はなかったと思う。今年は〈ストラッド〉との出会い25年周年、『望郷のバラード』との出会い20周年、母17回忌、父13回忌と悲 喜こもごも。でも良い年にします」


『パリ祭ディナーコンサート』
7/13(金)18:00開演 上野精養軒 グリルフクシマ

『JHP・学校を作る会チャリティーイベント2012 天満敦子チャリティーコンサート(無伴奏)Vol.8』7/14(土)13:00開演 津田ホール

『The 359th・360th Yatsugatake Kogen Salon Concert 天満敦子ヴァイオリンリサイタル』8/3(金)4(土)18:00開演 八ヶ岳高原ロッジ

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カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年07月05日 16:29

ソース: intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)

取材・文 横堀朱美(音楽ジャーナリスト)