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インタビュー

上野星矢

演奏され尽くしてきた名曲たちを、かくも新鮮な感覚で

2008年〈第8回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール〉で優勝を果たし、次世代を担うフルート奏者として大いに期待を集める上野星矢。待望のデビュー盤は、超絶技巧の《熊蜂の飛行》に始まり、しっとりと歌い上げる《シシリエンヌ》やラフマニノフ《ヴォカリーズ》、敬虔なカッチーニ《アヴェマリア》とタイトルさながらに様々な世界がキラキラと自在に姿を変えて響き合う。

「1枚目ということで、あえて超名曲ばかりで勝負しました。フルートは息が直接音になるので、喋る様に、歌う様に、気持ちを素直に表現できるところがいい。フランスの先生に〈音階を吹く時でさえ愛を語りなさい〉と教わったので、演奏では常に作品に愛を注いでいます。技巧に関して独自の練習法などもありますが、反射神経はスポーツとテレビゲームで養ったのかもしれません」

現代の作曲家で演奏家、ショッカーの《後悔と決断》もフルート吹きで知らぬ者はない名曲。

「演奏会でも一番吹いた曲だと思います。冒頭の透き通るようなピアノと、フルートの明るいのにどこか物哀しい旋律が耳に残る。後半は一転して、決意に満ちたリズミカルな楽章で聴かせます」

ボーナストラックの坂本龍一《東風》と松任谷由実《春よ来い》にも心を掴まれる。

「ポピュラー音楽の素晴らしいところは、瞬時に聴き手を幸せにできることではないでしょうか。僕が生まれる前に作られた《東風》も5~6歳頃に流行った《春よ来い》のどちらも、初めて聴いた時に〈これだ!〉っていう感性にぴたっとくるものがありました。《春よ来い》は歌詞が古めかしい日本語で書かれている点も魅力的です」

現在はパリを拠点に、欧州からアジア各国で活躍中。日本でも毎年リサイタルを成功させており、既にシーンに爽やかな新風を吹き込んでいる。

「パリはいい雰囲気のカフェがいたるところにあって、お気に入りの場所をみつけるのが楽しい街。演奏会もとても充実していますしね。毎日のようにオペラや古楽の演奏を聴きに行っていました。これから住むミュンヘンはさすがビールの街、リットル単位で注文できるところがビール好きにはたまりません。ベルリン・フィルに入るのが当面の目標なので次はベルリンにも住みたいですね。映画も好きですが、日々の生活からインスピレーションを与えられことが多いので、やっぱり日常を充実させたいです」

LIVE INFORMATION

11/7(水)電気文化会館 ザ・コンサートホール
11/9(金)Hakuju Hall
11/16(金)ムラマツリサイタルホール
11/26(月)台湾 National Concert Hall
11/30(金)浜松アクトシティ浜松
http://flute-seiya.jimdo.com/

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月16日 15:32

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 東端哲也