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インタビュー

レイチェル・コリー・ダルバ

今後さらに世界的飛躍が待望される大器の名盤

レイチェル・コリー・ダルバはスイスのローザンヌ生まれ。鮮やかな技巧と情熱的な演奏で魅了する才色兼備なヴァイオリニスト。ジュリオ・カルドナ国際コンクールをはじめ数々のコンクールに入賞して注目される。以来、ローザンヌ室内管弦楽団、フランス国立ロワール管弦楽団などとの共演歴を持ち、多数の音楽祭に出演。去る7月、ジョン・アクセルロッドとともに来日し、『N響「夏」2012』で、力強く邁進する音楽を聴かせた。今秋、デビュー盤から最新作までの日本盤初出CDを3枚同時にリリースする。

──ローザンヌ音楽院で学び、15歳でヴァイオリンと室内楽の教師資格を取得。ベルン音楽大学に進学し、イゴール・オジムに師事して研鑽を積む。

「いかに音楽を尊重し、愛するかということ、いかに楽譜を読み解くか、どのように練習するか、を教えてくれました。彼のもとで膨大なレパートリーを身につけました。高齢になっても弾いていたいから、長期的な考え方で取り組んでいます」

──録音活動について教えてください。

「作品がポピュラーか否かは気にしません。自分が愛し、絶対に良いと確信が持てる曲を録音しています。イザイの無伴奏ソナタでメジャー・デビュー。『フレンチ・インプレッションズ』は2012年ICMAの協奏曲部門で「ベストCDオブ・ザ・イヤー」を受賞。最新盤『アメリカン・セレナーデ』はバーンスタインらの曲を収録。アクセルロッド氏と共演できて幸運でした。彼の知識と情熱は類まれ、大きな触発を受けます」

──今後の展望を聞かせてください。

「スイスの湖の傍のシャレーに住み、多数の本に囲まれ、名器を入手して、夢は全て叶いました。マエストロと考えているのはイタリアで音楽祭を催すこと。次の録音はシマノフスキー、チャイコフスキーが候補です。他にもブラームス、ベルク、シューマン、フォーレなど。でも、何を弾くかは問題ではありません。どう表現するかが重要課題」

──取材に同席したアクセルロッド氏からも一言。

 「イザイのソナタを、彼女のように完璧に弾ける人は恐らく世界に10人といないでしょう。彼女の演奏を聴き、偉大な音楽家になる可能性を秘めていると直感しました。彼女を示すキーワードはオーセンティック(真正)。非常に美しい人ですが、野獣のような面も持っています。個の音がどれほど重要かを感じさせてくれるからです。師バーンスタインが言ってた言葉です。『個々の音は必要性があって存在している。その音を表現するために、偉大な音楽家は生命をかけている』と」

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年10月19日 12:57

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 横堀朱美(音楽ジャーナリスト)