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インタビュー

T-SQUARE

ゲストの参加により、曲の魅力を再発見

デビュー35周年を来年2013年に控えた日本を代表するインストゥルメント・バンド、T-SQUARE。一昨年の『宝曲』、昨年の『夢曲』と、このところ “秋のお楽しみ” となっているセルフ・カバーによる企画アルバムが今年も発表された。タイトルは『虹曲』。本作では全曲それぞれに参加した素晴らしいアーティストたちとのコラボレーションも聴きどころだ。そこで今回はリーダーの安藤正容(g)と今やバンドの司令塔である河野啓三(key)のお二人にお話しを伺ってみた。

「セルフ・カバーという作業は難しいです。新しいアイデアを入れるのか、オリジナルのアレンジとサウンドにこだわるのか…。でもシリーズ3作目ともなれば趣向を凝らすのもアリで、古い曲を忠実に再現するのよりもゲストを入れることによって敢えて変えてしまった方が逆に面白いかなと思ったんです」(安藤)

「ライヴでは古い曲も常々演奏していますので、今のメンバーの音で改めて記録しようというのがそもそものきっかけです。でもレコーディングはしっかり作り込む作業なので、その場限りのライヴとはまた違ってたいへんですね。スクエアの場合、80年代以降は特に緻密なレコーディングを行なっていますので、まずそれを細部まで検証するんです。それでも検証しきれない部分は想像するしかない。これはとても刺激的な作業でした」(河野)

「選曲は『宝曲』のときはメンバーみんなで話し合い、『夢曲』ではファン投票の集計をとって決めたんです。でも、今作ではコンセプトとして、まずゲストありきだったのが大きな違いです。つまりゲストの人選とその人に適した選曲、これらが同時進行だったというわけです」(安藤)

それでは、各曲をより楽しむために、ゲストとのエピソードや聴きどころを教えていただこう。

「僕個人的にはゲスト・ギタリスト大歓迎なんですよ。LOUDNESSの高崎晃とは昔アメリカ・ツアーをやった時に現地でニアミスしたこともあって、いつか一緒にやりたかったんです。BOWWOWの山本恭司とは去年あるセッションで一緒になって、気になっていたんです。二人とも僕とはジャンルや演奏スタイルが異なるし、レコーディングの手順も違ったりして面白かったですよ。日野賢二はうちの坂東がよく知っていたので、候補曲を選ぶ時にもアドバイスしてくれました。こういうNYタイプの曲調での日本人離れしたセンス、黒っぽいフィーリングはさすがでしたね。今までのスクエアにはないグルーヴ感でした。DIMENSIONの勝田一樹は伊東さんの提案です。同じサックスでも聞こえてくるカラーが全く違うのでバトルは面白いですよ。cobaさんにお願いした曲はもともとエキゾチックな雰囲気を持っていたので、アコーディオンがじつに良くマッチしたと思います」(安藤)

「東儀さんはマックのCMで伊東さんと共演したり、ベースの田中晋吾が一緒に演奏したりする仲です。雅楽の楽器は音域が狭いので選曲が難しかったのですが、アレンジに関して積極的に意見交換をしていただけて助かりました。光田さんは僕の師匠と言うべき先輩で、またベースの田中豊雪さんとも関係があって、この曲はライヴでもよく演奏しておられたんです。クラシック出身という素養を感じさせるインテリジェンスあふれるピアノを弾いてもらえて、魅力的なトラックに仕上がったと思います。宮本笑里さんのバイオリンはスクエアの音楽が持つ清涼感をある種の品格にまで高めてくれました。バイオリンは演奏者の支配力が強い楽器だけに、このトラックを聴けば彼女にお願いした理由がおわかりいただけるはずです。山下洋輔さんは言うまでもなく日本ジャズ・ピアノの草分け的な存在で、今やジャンルを超えて世界的な活躍をされている大先輩。じつは山下さんにお願いした《TEXAS KID》はアグレッシブなソロを要求される、キーボード奏者泣かせの曲なんですよ。まさに山下さんにうってつけの曲で、音を出した瞬間のスタジオ内の衝撃には凄いものがありました」(河野)

ご覧のように、今作はこれまでのセルフ・カバーとはひと味もふた味も違う。それぞれの曲がもともと内包していた隠し味のようなエッセンスが、ゲストの参加により増幅されカラフルにスケールアップを遂げているのだ。

「ゲストの人たちの心のこもったプレイをフィーチャーした宝のようなアルバムです。音だけではなく、伝わってくる人柄まで感じていただければ嬉しいです」(安藤)

「僕自身、楽しく制作できたと同時に、客観的に楽しんで聴ける作品になりました。とにかく皆さんも楽しんでください」(河野)

LIVE INFORMATION
『T-SQUARE "YEAREND SPECIAL 2012』

12/20(木)〜24(月・祝)
会場:神戸 CHICKEN GEORGE

『T-SQUARE 35th Anniversary プレイベント COUNTDOWN CONCERT 2012-2013』

12/31(月)21:00開場/21:30開演
会場:日本橋三井ホール

http://kyodotokyo.com/tscd2012

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年11月13日 20:58

ソース: intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)

取材・文 近藤正義