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インタビュー

my way my love 『The Fact Is』



新作では〈度の過ぎたポップス〉を追究したノイズの使い手。そこには奇妙なサイケデリアが花開いていて……



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my way my loveの新作『The Fact Is』は、時代も国も超越したポップネスが全編で狂い咲く強力盤だ。ほぼ1年に1枚のペースで発表してきた過去4枚のオリジナル作に対し、今回はフィジカル・リリースとしては2年ぶりのアルバム。その間、中心人物の村田有希生(ヴォーカル/ギター)はINORAN(LUNA SEA)のソロ仕事もギタリストとしてサポートする一方、打ち込みを主体とした自身のソロワーク・U-re:xも始動するなどして活動の幅を広げ、そのなかで書き上げた50曲ほどのデモから厳選された楽曲が、本作には収録されている。

「今作は〈度が過ぎたポップス〉というか、my way my loveが持つポップさを全面に出してもおもしろいんじゃないかっていうのがありました。やっぱり度が過ぎてないと、超人的じゃないと嫌で、全体に火が点いちゃった花火があちこちに飛んでってるみたいな、そういう狂ったものにしたかったんですよね」(村田:以下同)。

既発作品から想像されるオルタナ寄りのノイジーな“Beautiful Junkies”のような曲もあるが、彼の言葉通り、本作の手触りは全体的に非常にポップ。ピーター・ビヨーン&ジョンばりの口笛ソング“The Last Apple On The Tree”や、ファンの多い“The Rainbow Song”を上回る曲をめざしたという“Refrain”、ビートルズ“Hello Goodbye”の持つ存在感を意識したという“Good Days & Bad Days”など、村田のメロディーメイカーとしての才能が遺憾なく発揮されている。しかし、サウンドのテクスチャーは非常に奇妙で、過去とも未来とも形容できないような、独特のサイケデリアを感じさせる。

「今回は倉庫で眠ってた楽器を結構引っ張り出して、1万円のカシオのものから、何十万円で買った70年代のブラザーのキーボードまで、いろいろ使いましたね。ヴィンテージの楽器はそれ自体の音がすでにぶっ飛んでるんで、エフェクトは特にかけずに使いました。30年以上前の音をいまにタイムスリップさせて、ここからまた30年間聴き続けられるようにする、みたいな意識はありましたね」。

もうひとつ、村田の作る曲のポイントとして外せないのが、ユーモラスなコラージュ・センスだ。ギタリストとしてのイメージの強い彼だが、「朝起きたら、まずはサンプラーの電源を入れる」というぐらいの偏執的なサンプリング・マニアでもあり、バンドに対してはいちプレイヤー/ソングライターとしてではなく、プロデューサー的な視点で向き合っているようだ。

「正直レコーディングのときも、ギターを弾くよりサンプラーを触ってるほうが好きで、ギターなんて全部1テイクで録っちゃいますからね(笑)。ギターを弾く人が僕以外にいないから弾いてるようなもので、もっとトータリティーのことを考えていたいんです。バンドを長くやるには、その捉え方を変化させていかないと、飽きちゃうと思うんですよ。いまは自分のなかに〈my way my love〉っていう大好きなルールがあって、そのルールを元に、曲の良し悪しをジャッジしたり、ディレクションするっていうのが、僕とバンドの良い関係性になってるんです」。

村田は自身のことを「もちろん音楽家でもあるんですけど、旅人なんですよね」と表現する。2000年の結成以来(前身バンドの時代も含めればもっと長く)、国内外で活発なライヴ活動を展開してきた彼は、物理的な意味でも文字通りの〈旅人〉であり、それはそのままmy way my loveの楽曲のインナートリップ感にも通じていると言えよう。そして彼は、そんな自分を「ある意味、ずっと夢のなかで音楽をやってるみたいなもんです」と評し、笑っても見せる。そう、my way my loveが時代も国も超越したサウンドを内包しているのは、現在進行形の夢のなかで生まれたものだからなのかもしれない。



▼関連盤を紹介。
左から、INORANの2012年作『Dive youth, Sonik dive』(キング)、ピーター・ビヨーン&ジョンの2006年作『Writer's Block』(Wichita)、ビートルズの67年作『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(Apple/Parlophone)

 

▼my way my loveの作品。
左から、2007年作『JOY』、2008年作『a HOLY LAND INVADER』、2009年作『I'll Cure You With Electricity』、2010年作『NEW MARS』(すべてGraveyard)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月23日 21:00

更新: 2013年07月23日 21:00

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

インタヴュー・文/金子厚武

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