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インタビュー

連想盤から考察する『The Fact Is』



ここでは本文中に登場したキーワードを軸に、『The Fact Is』の音楽性に通じるアーティストの作品をご紹介。まず、〈度が過ぎるポップス〉という意味においていちばん近いのは、村田が「週に1回は聴く」と言うフレーミング・リップスだろう。「ポップ過ぎたり、歪みすぎてたり、ヴィジュアルが凄すぎたり。ああいう超人的なバンドはいつも意識してます」とのことだが、過剰さがフックになっている点は、両者の大きな共通点だ。日本で言えば、最新作がまさに〈度が過ぎる〉リコンストラクション集だったOGRE YOU ASSHOLEが近い存在と言えるだろう。

また、オブ・モントリオールをはじめとした90sのアセンズ周辺のサイケ・ポップ勢は、〈度が過ぎるポップス〉という意味でも、〈ユーモラスなコラージュ・センス〉という意味でも『The Fact Is』に通じるものが。その延長線上では、同時代のベックやコーネリアス作品、2000年代に入ってからのアニマル・コレクティヴなどブルックリン界隈のアーティストが挙げられる。さらに最近であれば、デビュー時に〈新世代のベック〉と言われたゴティエもまた、機材マニア的な面も含めて近似性が高いのでは?

加えて、ノイズ・ギターが暴発するオルタナ~シューゲイザー寄りの楽曲もしっかりあって、その点ではかつてmy way my loveと比較されたソニック・ユースのサーストン・ムーアによる新バンド、チェルシー・ライト・ムーヴィングとも、もちろんシンクロ。さらに村田のルーツに目を向けると、彼が音楽に目覚めたきっかけであるボブ・ディランの存在が。村田はディランやデヴィッド・ボウイを「どこから声が出てるかわからない、あの歌い方が何よりサイケデリックで、格が違う」と評していたが、この両者にも村田は度が過ぎる部分を感じているようだ。こうした要素が楽曲のなかに混在することで、my way my loveの奇妙な世界観が形成されているのである。



▼関連盤を紹介。
左から、フレーミング・リップスの2013年作『The Terror』(Warner Bros.)、OGRE YOU ASSHOLEの2013年作『confidential』(バップ)、オブ・モントオリールの2012年作『Paralytic Stalks』(Polyvinyl)、チェルシー・ライト・ムーヴィングの2013年作『Chelsea Light Moving』(Matador)、ボブ・ディランの2012年作『Tempest』(Columbia)、デヴィッド・ボウイの2013年作『The Next Day』(ISO/Columbia)、アニマル・コレクティヴの2012年作『Centipede Hz』(Domino)、ゴティエの2011年作『Making Mirrors』(Eleven)

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年07月23日 21:00

更新: 2013年07月23日 21:00

ソース: bounce 356号(2013年6月25日発行)

文/金子厚武

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