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インタビュー

Eric Legnini

レニーニ流ジャズ探求プロジェクト=アフロ・ジャズ・ビートの2作目

「10代の頃、僕はジャズが好きだったけど、友達はみんなU2やクラフトワークが好きだったし、ベルギーではハウスやエレクトロが流行っていたんだ。僕はダサい奴だと思われたくなくて、ロックやハウスも聴くようになったし、友達と一緒にハウスのパーティーに行ったりしていたよ」なんて笑いながら話すエリック・レニーニは早熟の天才ピアニストだった。    

11歳からジャズにのめり込み、16歳でプロになり、自分にとって音楽性が身近だったと言うキース・ジャレット的なスタイルですぐに高い評価を得た。その後リッチー・バイラークに誘われ、NYへ。そこで自身のヒーローでもあると言うケニー・カークランドをはじめ、レス・マッキャンやフィニアス・ニューボーンにも影響を受けた。というようなキャリアの間に、NYでヒップホップと出会って衝撃を受けたり、トニー・アレンのレコードに心酔したりと、好奇心旺盛なリスナーの側面を嬉々として語る。

それだけにジャズに踏み止まりつつ、他ジャンルを取り込み、表現の可能性を広げようとするプロデューサー感覚への関心も強い。e.s.tから受けた影響の大きさや、ロック/ポップスを演奏するときのブラッド・メルドーの素晴らしさ、そしてJディラに心酔するロバート・グラスパーの音楽にシンパシーを感じていることについて話すのを聞くと、ピアノトリオを核にしながら、アフロ・ジャズ・ビートというプロジェクトを用いた意図が少しづつ見えてくるだろう。

その後も、ジャズでも、アフロでも、ファンクでもないトニー・アレンのオリジナリティ、プロデューサーのデンジャー・マウスの手法の素晴らしさ、レディオヘッドを聴いた時に浮かんだアイデアからできた曲があることなど、言葉が次々とあふれ出した。

「最近だとグリズリー・ベアなんかが好きだから、そういうジャズとは程遠い色々なところからの影響も少しづつだけど取り込めないかと常にトライしているよ。(『Sing Twice!』に収録の)《Snow Falls》はその姿勢が生んだ最もいい例だね」と実に軽やかだ。

ジャズのイディオムを軸に、アフロの要素を様々な形で様々な濃度で織り込み、3人のヴォーカリストの個性的な声を配する精緻さに加え、「不要なソロはばっさり切る」という徹底振りで、全ての曲は5分以内に収め、〈曲〉という単位にこだわる。「それぞれの曲に、それぞれの異なる色やフレイヴァー、ヴァイブスを感じられるようにしたんだ。フォーキーな曲もあるし、スティーヴィー・ワンダーっぽいタッチを入れた曲もある。でも、アルバムの全体像は凄くユニークなバランスが取れていると思うよ」。

LIVE  INFORMATION
『東京JAZZ 2013』

○9/7(土)13:00開演
会場:東京国際フォーラム  ホールA
http://www.tokyo-jazz.com/

掲載: 2013年07月10日 12:46

ソース: intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)

interview&text:柳樂光隆