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TOTO(トト)、4年ぶりのジャパン・ツアー千秋楽 日本武道館公演のライヴ・レポート到着

TOTO
Photo by 土居政則/MASANORI DOI

7月10日の福岡公演を皮切りにスタートした、TOTOのジャパン・ツアーが、7月21日に東京 日本武道館で千秋楽を迎えた。このたび、ツアー千秋楽となった武道館公演のライヴ・レポートが到着した。

 

開演5分前に会場に到着。自分の席から全体を見わたすと、見事なまでに埋め尽くされた武道館の聴衆に圧倒される。武道館は4月のTHE DOOBIE BROTHERS以来となるが、その公演に勝るとも劣らない客入りで、あと数分に迫った公演への熱い期待がまさに目に見えるほど伝わってきた。TOTOの人気は本当にすごい。

デビュー45周年のアニバーサリー・ツアーともなる今回の公演。日本では2019年以来4年ぶりのライヴとなるが、ドラムス、ベースそしてキーボードに新メンバーを迎えたブランド・ニュー TOTOのお披露目となる。

今回の来日公演に際し、TOKYO FMの番組、そして、六本木Bauhausで行われたライヴ・イベントにトーク・ゲストでお呼びいただき、「今回の公演の見どころ、ポイントは?」という質問を受けたのだが、それに対する自分なりの答えがこれだった。

「やはり、新しいメンバーがどのように他のメンバー、あるいは、TOTOの楽曲と化学反応を起こすか。お馴染みの曲が新しいラインナップで披露され、そのニュアンスの違いを楽しみたい。そして、元のバージョンへのこだわり、愛情が強すぎると楽しめない可能性もある。例えば、(2代目ドラマー)Simon Phillipsの叩く“Africa”がしっくりこなかった人にはひょっとしたら楽しめない可能性も……」。そんな言葉を正直に発した。

いろいろな想いが頭を駆け巡るなか、19時ちょうどに武道館の客電が落ち、ショーがスタート。真っ白になったSteve Lukather(Gt/Vo)の髪は遠くから見てもよく目立ち、決して悪いものではない。そして、そのオープニング・チューンだが――これ以前の海外でのセットリストは予習して行ったので、それに準じてそのまま“Afraid Of Love”が来るかと思ったが、その前に1曲、意外な曲が披露された。2015年のアルバム『Toto XIV』の5曲目に収められていた“Orphan”だ。極端に高いキーの曲ではないが、Joseph Williams(Vo)の声が伸びやかなのが伝わってきて、12日間で8公演という過密スケジュールの疲れをまったく感じさせない。そして2曲目が“Afraid Of Love”。『Toto XIV』のB面1曲目にしてライヴでよりいっそう映えるポップ・ロック・チューンだ。続いて3曲目がデビュー曲の“Hold The Line”。早くもここで1回目のクライマックスを迎える、なんとも贅沢なセットリストだ。

ここで改めてステージを見わたすと、一番左が2019年の来日公演にも参加したキーボードのDominique “Xavier” Taplinで、その右がギターとヴォーカルのSteve Lukather。真ん中奥にキーボード&ヴォーカルの新メンバー、Steve Maggiora、そしてその手前にヴォーカルのJoseph Williams、その右が新メンバーのベーシスト John Pierce、そして一番右が新メンバーのドラムス Robert “Sput” Searight、という並びになっている。通常だとドラムスが真ん中に来て、キーボードは両端ということが多いが、この並びは確かこのメンバーによる最初のギグ=2020年11月21日の一夜限りのストリーミング・ライヴでも同じだったと思うので、何かこだわりがあるようだ。

さて、ここまで書いて、あれっ? と思った方も少なくないだろう。そう、当初来日メンバーに予定されていたマルチ・プレイヤー&ヴォーカルのWarren Hamが体調不良で不参加となったのだ。それによって歌の振り分けほかいろいろなところで急遽アレンジメントが強いられたと思うが、4曲目の“Falling In Between”ではMaggioraがパワフルなリード・ヴォーカルを担当。この曲をこのメンバーで聴くのは初めてなので最初から彼が歌うことになっていたのか、本当はHamが歌う予定だったのか詳細はわからないが、Maggioraはかなり荒々しい高音の使い手なのでひょっとしたらHamよりもこの曲には合うかもしれない。2006年の同名作からの1曲だが、プログレ色が強いと言われたそのアルバムの中でもソリッドなサウンドと変拍子、速いリックのユニゾンが売りの曲で、それをいとも簡単に再現する新メンバーの実力は並々ならぬもの。さすがLukatherが選び抜いた人たちだ。しかも、80年代のTOTO的な様式美とは違ったアンサンブルで、その尖鋭な感じはSput&Xavierならでは、といった印象を受けた。彼らも演奏していてより楽しそうな表情に見えた。

そして5曲目でLukatherが人気バラード“I'll Be Over You”を披露。武道館に幾千もの蛍(携帯ライト)が現れ、それに続いて、Xavierが幻想的且つファンキーなキーボード・ソロを披露。相変わらず、ジャンルレスの素晴らしい音楽性を届けてくれるが、その終わりから“White Sister”に行く流れはTOTOの定番といったところか。その曲はJosephが全編を歌っているがオリジナルのBobby Kimballと比べても遜色ない歌いっぷりだった。

7曲目はお馴染み“Georgy Porgy”だがXavierがアレンジした、かなり違ったムードの曲になっている。そして80年代 Josephの大定番“Pamela”だが、イントロからSputのバスドラが強かったせいか、ややテンポが速い気にさせられた。そして、MCでLukatherがJeff Porcaro、Mike Porcaro&Joe Porcaroに捧げると紹介し、Jeffが参加した最後のオリジナル・アルバム『Kingdom Of Desire』の表題曲をヘヴィにプレイ。Lukatherの弾きまくりソロは公演中一番の感情が込められ、「情念」という2文字も頭に湧いてきた。楽曲自体は決して個人的な好みのものではないのだが、ライヴで、しかも、このメンバーで聴くと今のTOTOにすごく合っているというか、思った以上に楽しめる。そしてそのあと、Sputのソロ・タイムが設けられるが、本当に手数が多いというか、歴代のTOTOのドラマーとはまったく違うタイプで、彼が新生TOTOの今後を最も左右する男、そんな気がしてならなかった。

ソロ明けの10曲目は『Toto IV』で1番ソウルフルなナンバー、“Waiting For Your Love”。イントロから思わず笑みが浮かんでしまう。ここではMaggioraがリード・ヴォーカルを担当。本家が持っていた都会的なお洒落さは薄れ、かなりロックなムードで攻めている。そして、1stからのヒット・チューン、“I'll Supply The Love”をJosephのヴォーカルで披露。キーは全音下げのD、Bmがでないかと思うが、Josephの声は非常にいい感じで、確かに、80年代後半のTOTO在籍時よりもいいほどだ。もうすぐ63歳になるというのに、プロに徹する姿はなんとも美しい。エンディングではLukatherとPierceのユニゾンから例のキメフレーズがスタート。そこに絡むシンセ・ワールドこそまさにTOTOの真髄だ。

そしてメンバー紹介を挟んでライヴ後半の必須曲、“Home Of The Brave”が登場。Aセクションは通常、Hamが歌うところだが、不在のため、そこをMaggioraが担当。そして、そのあとをJosephが歌い継ぎ、大いなる盛り上がりに。そしてそのまま“Rosanna”、“Africa”という2大ヒット・チューンで本編が終わる、なんとも贅沢なセットリスト。“Africa”はJosephが歌ったが、考えてみたら、Ringo Starrのオールスターズで“Africa”をやるときはLukatherが前半を歌っているのだから、TOTOでもそうすればいいのに……など、余計な想いも芽生えてきた。ところで、その2曲におけるSputのドラミングだが、印象的なJeffのプレイを完全にコピーしよう、ではなく、必要最低限をキープし、そこに自分の色を追加。気のせいか、CDにもなった2020年11月のライヴよりもよりJeffの匂いが薄れている感じがした。そしてそれこそが彼を選んだLukatherの狙いであろう。何十年も同じ曲をやっていてそこに新しい刺激を加えたいのは極めて自然な想いであり、ひょっとすると、Jeffも今のTOTOのサウンドを「こうでなきゃ!」と絶賛しているかもしれない。彼も常に新しいステージを目指していた人だから。

アンコールはTHE BEATLESのカバー、“With A Little Help From My Friends”。一夜限りの配信ライヴでもその曲を最後にやり、アルバムのタイトルにもなっているが、できればアンコールではもっとほかの盛り上げ方を期待したい。楽しいライヴだったね~、いいライヴだったね~、ではなく、すごかった! 最高だった! という興奮冷めやらぬ状態のまま、家路につく、あるいは、呑み処に足を運びたいから。いつかLukatherにインタビューする機会があったら、絶対にそれは伝えたい。もちろん、あっさり却下されるだろうが……なにはなくとも、また日本にやって来てくれてどうもありがとう! We all love you!! Lukatherには心から感謝している。

TEXT:中田利樹

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カテゴリ : タワーレコード オンライン ニュース

掲載: 2023年07月25日 14:30

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