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第51回――ティーナ・マリーを悼む

ESSENTIALS――アイヴォリー・ソウルの名盤たち(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2011/05/25   00:00
更新
2011/05/25   00:00
ソース
bounce 331号 (2011年4月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、林 剛

 

TEENA MARIE 『Naked To The World』 Epic/ソニー(1988)

80年作『Lady T』で組んだリチャード・ルドルフを総監督に迎えて従来路線に回帰しつつ、成熟したいい女ぶりも見せた佳作。オープニングの“Trick Bag”から胸のすくようなパワー・ファンクをカマし、ゴーゴーの“Work It”、リックと久々に声を重ねた2曲など、楽曲も粒揃いだ。アレン・マクグリアと共作したアダルトなスロウ“Ooo La La La”は彼女にとって(現時点で)唯一のR&BチャートNo.1ヒットに。*出嶌

TEENA MARIE 『Ivory』 Epic/ソニー(1990)

エピックでの最終作は、当時全盛だったニュー・ジャック・スウィングやグラウンド・ビートに挑戦。実際に“Since Day One”はソウルIIソウルのジャジー・Bがプロデュースしているが、他は自身の制作で、過去曲のフレーズを用いたりしながら90年代R&B的な作法を確立しているのが痛快だ。一方、“If I Were A Bell”などの美しく情熱的なバラードも健在。〈白い肌〉を謳いながら黒いパフォーマンスに徹する彼女には降参するしかない。*林

TEENA MARIE 『La Dona』 Cash Money/Universal(2004)

キャッシュ・マネーから放った10年ぶりの復活作。以前からの生音志向をネオ・ソウル以降の質感でまとめて現役ぶりを余裕でアピールし、マニー・フレッシュもいつになく渋いアル・グリーン使いのループで女王の世界に馴染んでいる。バードマンやジェラルド・レヴァート、愛娘のローズまで客演も多彩で、リック最後の録音とされるデュエットも収録。チャートでもキャリア最高の全米6位まで上昇した大傑作だ。*出嶌

TEENA MARIE 『Sapphire』 Cash Money/Universal(2006)

キャッシュ・マネー第2弾。復活作となった前作同様、旧知のダグ・グリスビーらの助力を得て、ティーナらしさを全開にしながら現行グルーヴにスムースに身を投じた会心の一作だ。アタマ2曲からモータウン時代のメンターでもあったスモーキー・ロビンソンとクルージンなソウルを歌い、シングル・ヒットした“Ooo Wee”などではクラプトを招くなど、新旧リスナーのツボを押さえた仕掛けには流石と言うしかない。*林

TEENA MARIE 『Congo Square』 Stax/Concord(2009)

スタックス移籍作で、存命中における最後のアルバム。先祖が住んでいたニューオーリンズへの愛をベースに、自身のジャズ・ルーツを打ち出しながらモダンなR&Bを創作したこれは、ティーナなりのブラック・カルチャーへの恩返しとも受け取れる内容だ。フェイス・エヴァンス、MCライト、ハワード・ヒューイット、シャーリー・マードックといったゲスト勢とのコラボが、各曲のテーマに深くリンクしているのもポイント。*林