ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908~1989)生誕111周年・没後30周年記念特集
ヘルベルト・フォン・カラヤン
1908年4月5日、ザルツブルク~1989年7月16日、ザルツブルク近郊アニフ
生前、「楽壇の帝王」の名をほしいままにした20世紀を代表する名指揮者カラヤン。2019年、没後30年を経過してもその人気は衰えることなく、新発見のライヴ録音やセッション録音のハイレゾ化、そしてクラシック入門用のコンピレーション盤など続々とリリースされているのはご承知の通りです。ここでは生誕110年だった2018年から今日まで、リリース(または発売予告)されたディスクから代表的なものをご紹介いたします。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
(1)はじめてのカラヤン
ここでは初めてカラヤンを聴いてみたい、または普段クラシックを聴かない方にプレゼントをしてみたい、という方におすすめのCDを3点ご紹介いたします。「アダージョ・カラヤン」は究極の癒しのアルバムとして1995年の発売以来20年もの間多くの音楽ファンに支持され、全世界で500万以上のメガ・ヒットを記録したCDです。話題の高音質UHQCDとして2019年5月15日に再発売されます。「松本零士セレクション/カラヤン ベスト・オブ・ベスト」は漫画家の松本零士氏による選曲。こちらはダイナミックな活力あふれる作品・演奏を中心に選ばれています。「パッヘルベルのカノン~カラヤン超定番ベストPREMIUM」はクラシックの名曲20曲をカラヤンの指揮で聴けてしまう便利なアルバムです。参考動画は「アダージョ・カラヤン」に選曲されているベートーヴェンの交響曲第7番~第2楽章です。
【参考動画】ベートーヴェン:交響曲第7番~第2楽章
カラヤン指揮ベルリン・フィル(1971年)
(2)NHK収録の放送用音源からのCD化
戦後、カラヤン指揮のベルリン・フィル、ウィーン・フィルなど世界的なオーケストラが多数来日しました。その際、NHKがかなりの演奏会をライヴ収録しました。それらを厳選してCD化する「NHKレジェンド・シリーズ」が2018年11月より始まり、カラヤンの1957年、1959年、1966年の来日時の演奏を聴けるようになりました。また、このシリーズとは別に、1954年にカラヤンがNHK交響楽団に客演した際の録音もCD化されました。ここでは計8タイトルを併せてご紹介いたします。参考動画は1966年カラヤン&ベルリン・フィル来日時のベートーヴェン「コリオラン」序曲です。
【参考動画】ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
カラヤン指揮ベルリン・フィル(1966年)
(3)海外での新発見ライヴ録音
カラヤンは1950~80年代、本拠地ベルリンでの演奏会とともに、世界各地へ演奏旅行を行ったため、そのライヴ音源は各地の放送局により録音され、放送され、保存されています。こうした音源より、昨年は3点が初めて放送局の正規音源からCD化されました。上段の3タイトルは昨年初発売された1967年ザルツブルク音楽祭での「カルメン」全曲、「カラヤン・イン・パリ 1960&1962」(2タイトル)です。下段の4タイトルは、以前発売されたことのあるライヴ録音の再発売ですが、こちらも定評のある名演揃いです。参考動画はザルツブルク音楽祭と同じ1967年に収録された「カルメン」より前奏曲です。
【参考動画】ビゼー:歌劇“カルメン”前奏曲
カラヤン指揮ウィーン・フィル(1967年)
(4)タワー企画盤のカラヤン
タワーレコード限定盤では、廃盤となっていたカラヤンの珍しい録音の一つ、オルフ作曲の「時の終わりの劇」を復活再プレスいたしました。また、ユニバーサル音源のSACDハイブリッド化として、ベルリン・フィルの首席ホルン奏者ゲルト・ザイフェルトと組んだモーツァルトのホルン協奏曲全集、ウィーン・フィルとのブラームス:交響曲第1番、そして「リヒテル/DG協奏曲録音集」の中で、ウィーン交響楽団とのチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番をリリースいたしました。オルフ作品を参考音源として挙げましたが、お聴きのようにオルフらしいバーバリックな打楽器群に乗って歌手陣が終末の悲しみを歌う、恐ろしくも美しい音楽です。SACDハイブリッド盤のブラームスとチャイコフスキーは、本国のオリジナル・アナログ・マスターテープから新規で高品位デジタル化後、本国の専任エンジニアによる最新マスタリングがされていますので、従来盤よりいっそうの高音質をお楽しみいただくことができます。
【参考音源】オルフ:“時の終わりの劇”より
カラヤン指揮ケルン放送交響楽団、他(1973年)
(5)ユニバーサルによるSACDシングルレイヤー化
ユニバーサルミュージックは日本独自企画としてカラヤンの音源のSACDシングルレイヤー化をすすめています。CDとのハイブリッド盤ではないため、SACDの大容量を生かした長時間収録がされているのが特徴です。何れも本国のオリジナルマスターテープから最新の高品位デジタル化がされているため、音質的にも今日求め得る最高の状態となっています。参考音源は2019年5月22日発売分より、ブラームスの交響曲第3番の第3楽章。この参考音源は以前のデジタル化によるものなので、今回のSACDではさらなる高音質化がなされています。
【参考音源】ブラームス:交響曲第3番より第3楽章
カラヤン指揮ウィーン・フィル(1961年)
(6)ワーナー&ソニーによるSACDシングルレイヤー化
カラヤンはユニバーサルミュージックだけではなく、ワーナークラシックスやソニークラシカルにも膨大な音源を残しています。ワーナーとソニーも日本独自企画でのSACDシングルレイヤー化をすすめており、ここでは8タイトルをご紹介いたします。参考動画は2018年7月発売のWPGS-10047に含まれる曲目、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の録音と同時期の映像作品です。
【参考動画】ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番より第3楽章
ワイセンベルク(p)カラヤン指揮ベルリン・フィル
(7)ブルーレイで観るカラヤン
カラヤンが晩年の1980年代に精力的に取り組んだ、「カラヤンの遺産(レガシー)」シリーズの中から、7タイトルが初Blu-ray Disc化!LD用マスターよりアップコンバートによるBlu-ray Disc化。音源はb-sharpによるリマスター音源を使用。過去に発売されたVHS、LD、DVDよりもいっそうの高画質、高音質となりました。
(タワーレコード)
収録層:Single / 画面サイズ:16:9 / 音声1:LPCM Stereo / 音声2:LPCM Stereo / リージョンコード:A,B,C / 画像:Color
(8)DVDで観るカラヤン
音楽家としていち早くテレビ、ビデオの重要性を認識した彼の姿が刻まれています。彼は1959年の来日時、見知らぬ日本人から次々に声をかけられるのを不思議に思い、それが前日のテレビ中継が理由と分かり、その影響力の大きさに驚きました。そして1965年、自らコスモテル社を設立して、コンサートやオペラの映像作品化に力を注ぎました。オーケストラ曲では、目を閉じて指揮をする彼の有名な姿と、彼が演奏に抱く映像的なイメージがともに映し出されてます。オペラでは演出家もこなした彼の経験とアイディアが生き、《カルメン》と《道化師》では彼自身が役者として写り込んでいる、というサプライズも用意されています。
【参考動画】ブラームス:ドイツ・レクイエムより
カラヤン指揮ベルリン・フィル、他(1978年)
(9)LPレコードで聴くカラヤン
近年のLPレコードの人気再燃、高音質フォーマットとしての再評価の高まりは、カラヤンの音源のLPレコード化にもつながっています。2018年から今日まで、新たに8タイトルがLPレコードとして再発売されました。参考動画は、ドイツの現代美術家グレゴール・ヒルデブラント(1974~)が装丁を手掛けた「ベートーヴェン: 交響曲全集デラックスLPセット」のプロモーション映像です。
【参考動画】ベートーヴェン: 交響曲全集デラックスLPセット
装丁を担当したグレゴール・ヒルデブラントへのインタビュー
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