「ウェストサイド・ストーリー」の初演を手掛けた男が目指した全集~ゴバーマン/ハイドン交響曲集(14枚組)
「ハイドンの第1交響曲にはじめて出会ったのは、10歳くらいの頃でした。家に、マックス・ゴバーマンという人が指揮したこの曲のレコードがあったのです。それで、この曲がとりわけ好きになりました。とても精巧に組み上げられていて、小さな宝石といってもよいような美点がたくさんあって…」
ジョヴァンニ・アントニーニ
(アルファ Alpha670 ライナーノーツより 白沢達生氏訳)
ピリオド楽器演奏を先取りし、1960年初頭にウィーンで録音された幻のハイドン交響曲録音の全貌が半世紀を経て復活!その革新的で独創性溢れる音楽活動でその名を残すアメリカの指揮者、マックス・ゴバーマン(Max Goberman 1911-1962)はフィラデルフィアで生まれ、神童として幼少時より音楽への才能を開花させ、カーティス音楽院でレオポルト・アウアーにヴァイオリンを、フリッツ・ライナーに指揮を学びました。10代でストコフスキー時代のフィラデルフィア管弦楽団のヴァイオリニストとなり、ライナーの勧めで指揮者に転向、自らニューヨーク・シンフォニエッタを設立し、コープランドやモートン・グールドなどの新しい音楽を積極的に紹介しました。ニューヨークシティ・オペラとバレエ劇場(アメリカン・バレエ・シアターの前身)での音楽監督として活動する傍ら、ブロードウェイ指揮者として人気を博し、「ビリオン・ダラーベイビー」「ホエアズ・チャーリー?」「ブルックリン横丁」などのヒット作を手がけました。中でも最も有名のが、バーンスタインの「ウェストサイド・ストーリー」と「オン・ザ・タウン」です(「ウェストサイド・ストーリー」のブロードウェイ・キャストの録音でも指揮しています)。 さらにゴバーマンは、ヴィヴァルディの全オーケストラ作品とハイドンの交響曲全曲をレコード録音し発売するために、会員性のメールオーダーで販売する自主レーベル「名作録音ライブラリー(Library of Recorded Masterpieces)」を設立。ウィーンとニューヨークで両プロジェクトに乗り出しましたが、ヴィヴァルディは「四季」を含む75曲を、ハイドンは45曲を録音したところで心臓発作に倒れ、51歳の若さで1962年の大晦日に急逝しました。
今回14枚組のボックスセットとして世界で初めてCD化されるのは1960年から62年にかけて録音されたハイドンの交響曲の全てで、45の交響曲と序曲3曲が収録されています。音楽の本場ウィーンで、「ウィーン国立歌劇場管弦楽団」を起用して録音されたこれらの交響曲は、当時最新鋭の録音技術だった3トラックによるマルチ録音で収録され、演奏・音質ともに高いクオリティに到達していました。ゴバーマンは、ハイドンの交響曲を古典派の傑作として真摯にとらえ、当時としては最新の音楽研究の成果を取り入れることで、現在のピリオド楽器演奏の原型ともいうべき、スリムで新鮮な演奏を繰り広げています。ゴバーマンの急逝によってこの全集は未完に終わり、一部が1960年代にCBSの廉価レーベル「オデッセイ」でLP発売されましたが、LP用のマスターを作成する際にセンター・チャンネルをミックスしなかったため、木管と金管のバランスがきちんと反映されず、演奏の真価が伝わりませんでした。今回の世界初CD化にあたって、3トラックによるオリジナリル・アナログ・マスターテープから再度ミックスダウンとリマスターが行われ、歴史的に非常に重要な意味を持つゴバーマンの遺産が驚くほどの鮮度で蘇ります。(ソニーミュージック)
最下段の「関連商品」には、現在ハイドンの交響曲全集録音を目指しているアントニーニとファイ、ゴバーマンと同様に全集を目指しながら未完に終わったホグウッド、そして全集を完成したドラティ、A.フィッシャー、D.R.デイヴィスのCDを掲載しました。ちなみに、アントニーニは少年時代にゴバーマン指揮のハイドンの交響曲第1番のLPレコードを聴き、この曲が大好きになった旨をライナーノートに記しています。ゴバーマンの音楽的遺伝子は、2032年までにハイドン/交響曲全集録音を目指している現代のアントニーニに受け継がれたわけです。当セットは完全生産限定盤ですので、お早めにお求めください!(タワーレコード)
【収録予定曲】
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン:[CD1]交響曲第1番 ニ長調, 交響曲第2番 ハ長調, 交響曲第3番 ト長調, 交響曲第4番 ニ長調, 歌劇『勘違いの不貞』序曲/[CD2]交響曲第5番 イ長調, 交響曲第6番 ニ長調『朝』, 交響曲第7番 ハ長調『昼』/[CD3]交響曲第8番 ト長調『晩』, 交響曲第9番 ハ長調, 交響曲第10番 ニ長調, 交響曲第11番 変ホ長調, 歌劇『薬剤師』序曲/[CD4]交響曲第12番 ホ長調, 交響曲第13番 ニ長調, 交響曲第14番 イ長調, 交響曲第15番 ニ長調/[CD5]交響曲第16番 変ロ長調, 交響曲第17番 ヘ長調, 交響曲第19番 ニ長調, 交響曲第20番 ハ長調, 交響曲第21番 イ長調/[CD6]交響曲第22番 変ホ長調『哲学者』, 交響曲第23番 ト長調, 交響曲第24番 ニ長調, 交響曲第26番 ニ短調『悲しみ』/[CD7]交響曲第27番 ト長調, 交響曲第32番ハ長調, 交響曲第34番 ニ短調, 交響曲第35番 変ロ長調/[CD8]交響曲第37番 ハ長調, 交響曲第40番 ヘ長調, 交響曲第41番 ハ長調/[CD9]交響曲第48番 ハ長調『マリア・テレジア』, 交響曲第49番 ヘ短調『受難』, 交響曲第51番 変ロ長調/[CD10]交響曲第52番 ハ短調, 交響曲第55番 変ホ長調『校長先生』/[CD11]交響曲第56番 ハ長調, 交響曲第57番 ニ長調/[CD12]交響曲第60番 ハ長調『うかつ者』, 交響曲第65番 イ長調,歌劇『アチデとガラテア』序曲/[CD13]交響曲第92番 ト長調『オックスフォード』, 交響曲第96番 ニ長調『奇蹟』 /[CD14]交響曲第98番 変ロ長調, 交響曲A 変ロ長調(第107番), 交響曲B 変ロ長調(第108番)
【演奏】
マックス・ゴバーマン(指揮)ウィーン国立歌劇場管弦楽団
【録音】
1960~1962年、ウィーン
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2014年11月26日 13:30