菅野よう子の美しい音楽世界『海街diary』サウンドトラック
菅野よう子サウンド、是枝ワールドに招かれる。
静かに人間ドラマを掘り下げる是枝裕和監督。是枝監督作品での、数少ない、音楽が流れる箇所でのその印象的なイメージ。
『そして父になる』では、グレン・グールドの音源を使用し、『奇跡』は音楽担当にくるりを起用、『空気人形』ではポスト・ロック・ユニットのworld's end girlfriend、『歩いても歩いても』はゴンチチのアコースティック・ギターを、と是枝監督作品は通常の映画音楽のイメージから離れて自由なサントラを創造してきている。
そして、吉田秋生のベストセラー・コミックを映画化した、4姉妹の心のふれあいを描いた、日常の中の感動のドラマ『海街diary』が是枝監督の新作だが、今回、音楽を担当することになったのが、なんと菅野よう子である。
アニメーション音楽での幅広い活動は、もはや説明不要で、かつ近年ではNHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』や、作詞は岩井俊二で、これからも歌い継がれる「花は咲く」の作曲などで、広く「国民的作曲家」への道も歩んでいる、というユニークなキャリアを積んでいる菅野よう子。
実写映画の担当は意外に少なく、女性たちのアンサンブルドラマ『ペタル ダンス』『tokyo.sora』や、コミック原作で、UKロック的なアプローチを聴かせた『ハチミツとクローバー』など、担当アニメ作品における壮大なSFアクションや、スピーディな活劇の数々のイメージとは、全く異なる、静かでポップな世界が展開する作品が印象深くなっている。
そんな、実写菅野よう子サントラ・ワールドのさらなる発展系ともいえるのが、静かに美しいオーケストラ・サウンドが、少しずつ盛り上がる、女性たちの感動のドラマ・スコアが、今回の『海街diary』のサウンドトラックだ。