ハーゼルベックが遂に再現!“エロイカ”初演時の編成をロプコヴィィツ邸大広間で録音(CD2枚組)
ベートーヴェンの交響曲を、たんに当時の楽器と演奏法、オーケストラ規模で再現するだけでなく、歴史的ドキュメントを丹念に探りながら、それぞれの作品の初演会場を突き止め、それらが初めてこの世に響いたときのサウンドを再現しようとする――ウィーンを拠点に活躍している「地の利」を生かした異才指揮者マルティン・ハーゼルベック率いる古楽器集団ウィーン・アカデミーの探求、ついに『英雄』にたどりつきました!ベートーヴェンのパトロンとして有名なロプコヴィツ侯爵の私邸の大広間(現在はオーストリア演劇博物館の一部)を使い、かつて「傑作の森」の数々がプライベート試演されてきたこの会場の響きで「英雄」の原風景に迫ってみせる――音楽学者ヴァインツィール(このプロジェクトのブレーンでもあります)による研究のもと、弦楽編成は7人だけだったとする説もありつつ、ここでは4/4/2/2/2と限りなく絞った、しかしバランスも申し分ない編成がとられています。そして今回の併録としては交響曲第1番と同時に初演された七重奏曲をCD2に収録―-個々の古楽器の響きもさることながら、明らかにウィーン的な何かを感じさせる独特のテンポ感、これぞ理想的なウィーン古典派の解釈!と実感すること必至…もちろん充実解説(訳付)も注目内容!
(マーキュリー)
1986年に自らの手でオリジナル楽器オーケストラ、ウィーン・アカデミー管弦楽団を立ち上げて以来、マルティン・ハーゼルベックはオルガニストと指揮者という二足の草鞋を履く音楽家人生を送っています。同じ鍵盤楽器でも指揮者兼ピアニストというなら数に枚挙のいとまがありませんが、オルガン奏者が自らのオーケストラを率いるという例はあまり思い浮かびません。昔ならばカール・リヒターとミュンヘン・バッハ管、今ならわが鈴木雅明とバッハ・コレギウム・ジャパンが代表例でしょうか。彼らとハーゼルベックの違いは、そのオーケストラの名前に明瞭に現われています。バッハを中心にバロック音楽の演奏を主に結成された楽団と、アカデミーの名に相応しく何でも学んでゆこうという楽団の違いです。
実際のところヴィヴァルディやバッハからスタートした彼らは、モーツァルトやフックスのようなウィーン縁の作曲家たちを経て、とうとうブルックナーのシンフォニーを録音するところまで歴史をたどって来ました。レコーディングで世界的な評判をとったのは、ハーゼルベックがオルガニストとしてリストのオルガン作品を録音する一方で、手兵のウィーン・アカデミー管とはその全交響詩を録音したことです。
こんなアグレッシヴなコンビが今、夢中になっているのが、ベートーヴェンのシンフォニーを限りなくオリジナルに近づけて再現・録音すること。第4弾の“エロイカ”では、とうとうロプコヴィツ邸に乗り込んでしまいました。この拘りには脱帽です。邸の大広間でどんな英雄交響曲が鳴り響いているのか。発売が待ちきれない一枚です。
(タワーレコード)
【収録曲目】
ベートーヴェン
交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」
七重奏曲 変ホ長調 Op.20
【演奏】古楽器使用
マルティン・ハーゼルベック指揮
ウィーン・アカデミー管弦楽団
[七重奏曲メンバー]
イリア・コロル(vn)
ラファエル・ハントシュー(va)
レオンハルト・バルトゥセク(vc)
ヴァルター・バッハケーニヒ(cb)
ペーター・ラープル(cl)
カタリン・ゼベッラ(fg)
ヘルマン・エープナー(hr)
【録音】
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2016年10月04日 13:45