最晩年の貴重なステレオ録音がリリース!『カイルベルト・ステレオ・ライヴ1966-67』(CD4枚組)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、「コリオラン」序曲
「田園」をカイルベルトは、ハンブルク・フィルとスタジオ録音している。中々評判の良い演奏である。が、今回の演奏は、それよりもずっと録音状態が良い。もちろん、ケルン放送交響楽団の妙技もハンブルク・フィルを上回る。「嵐」以降の迫力も凄まじい。カイルベルトは、フルトヴェングラーのような天才的なアッチェルランドを見せる人ではない。
ブラームス:交響曲第1番
ベルリン・フィルとのスタジオ録音は残念ながらモノラル録音であった。当盤のケルン放送響とのライヴは、やはりオーケストラの機能性が非常に高い。第3楽章から第4楽章へは、アタッカで奏される。よほど指揮者とオーケストラの意思疎通が良かったに違いない。奔流のようなフィナーレは、筋骨隆々のフォルムと相俟って、圧倒的である。
マーラー:交響曲第4番 独唱:アグネス・ギーベル
カイルベルトにとっての初出レパートリーである。カイルベルトとマーラーは縁が薄いようだが、決してそうではない。マーラー生誕100年を祝う1960年のウィーン芸術週間には、ウィーン交響楽団と第8番「一千人の交響曲」を演奏している。そのほか、第1番、「大地の歌」の放送録音もCD化されている。音色も普段の重厚なカイルベルトと違って軽妙で明るい。さすがに第3楽章では、18分も掛けて情緒纏綿に噎せ返るほどに甘美に歌っている。非常に音質が良く、「カイルベルトのマーラー」の代表盤となった。
ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界」、モーツァルト:交響曲第33番
カイルベルトは「新世界」交響曲を好んで指揮した。バンベルク響とのスタジオ録音も名高い演奏である。ドヴォルザークは正にブラームスと肩を並べる、構成的な作曲家であることをカイルベルトの演奏は我々に教えてくれる。モーツァルトの交響曲第33番は、現在では全く聴くことのできないスタイルの演奏である。カイルベルトは徹底的にリズムを厳格に刻んで、まるでベートーヴェンのようにモーツァルトを聴かせる。この頑なさ、これもカイルベルトの魅力である。
以上、ライナーノートより。
英語・日本語・ドイツ語によるライナーノート付。舞台写真の大家、故丹野章氏による来日時の写真を使用。
(東武ランドシステム)
【収録予定曲目/演奏/録音】
ベートーヴェン
交響曲第6番ヘ長調 Op.68 「田園」
[録音]1967年10月27日、ケルン放送ビスマルクザール
ベートーヴェン
「コリオラン」序曲 Op.62
[録音]1967年12月8日、ケルン放送ビスマルクザール
ブラームス
交響曲第1番ハ短調 Op.68
[録音]1967年3月31日、ケルン放送ビスマルクザール
マーラー
交響曲第4番
アグネス・ギーベル(ソプラノ)
[録音]1967年12月8日、ケルン放送ビスマルクザール
ドヴォルザーク
交響曲第9番ホ短調 Op.95 「新世界より」
[録音]1966年4月15日、ケルン放送ビスマルクザール
モーツァルト
交響曲第33番変ロ長調 K.319
[録音]1966年4月15日、ケルン放送ビスマルクザール
ヨゼフ・カイルベルト(指揮)
ケルン放送交響楽団
1965年以来、NHK交響楽団の指揮台に立つために来日を繰り返したカイルベルトは、還暦を迎えた1968年に帰らぬ人となってしまいました。生前は同い年のカラヤンと比較されることも度々だったそうですが、二人の演奏スタイルはまるで正反対を向いていたかのように思えます。
1960年代にN響の演奏会に足しげく通っていた団塊世代のファンに話をうかがうと、演奏の印象は剛直そのものだったそうで、ベートーヴェンでもブルックナーでも、曲の開始からずっとイン・テンポを守りとおす。でも、曲が終わりに近づくと指揮者もオーケストラも自然に熱を帯びてきて、どんどんアッチェレランドがかかって豪快に曲を締め括っていたそうです。当時の演奏会誌に書かれていた記事に、フルトヴェングラーの推薦によってカイルベルトはプラハ・ドイツ・フィル(現バンベルク交響楽団)の指揮者になった云々という件があって、お蔭でレコードを買えるようになってからフルトヴェングラーにハマってしまったとも。
ドイツのカペルマイスターの典型的な演奏スタイルを日本の音楽ファンに伝えてくれた巨匠の記録が、いまだにこうして発掘され続けるのは、まさにカイルベルトの芸術家としての魅力ゆえに他ならないでしょう。最晩年の貴重な記録を良質なステレオ録音でお楽しみください。
(タワーレコード)
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2016年10月23日 00:00