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アメリカン・ミュージックの未来を紡ぎだす才媛、リアノン・ギデンズ新作

Rhiannon Giddens

 

第53回グラミー賞でベスト・トラディッショナル・フォーク・アルバムを受賞したアメリカン・ルーツ・ミュージック・グループ、キャロライナ・チョコレート・ドロップスのメンバーであり、昨年ここ日本でも初めての来日公演を行い、多くのミュージック・ファンを虜にした、マルチ・インストゥルメンタリストであるシンガー・ソングライター、リアノン・ギデンズ。

その彼女の新作アルバム『FREEDOM HIGHWAY』がリリースされる。各方面から高く評価された2015年の前作『TOMORROW IS MY TURN』から約2年、本作には彼女のアーティストとして、そしてソングライターとしての成長が表れている。前作が彼女自身によるオリジナル・ソングが1曲、そして残りは女性アーティストによる楽曲のカヴァー・ヴァージョンという構成だったのに対して、 今回は彼女自身による、もしくは共作している楽曲が9つと、ソングライターとしての一面を大幅にフィーチャーしている。アルバムにはこの他、トラディッショナル・ナンバーが1曲と南北戦争時代の曲を収録している。プロデュースを手掛けるのは、リアノン本人と彼女と同じマルチ・インストゥルメンタリストであるダーク・パウエル。レコーディングの大半は、ルイジアナはブロー・ブリッジにあるダークのスタジオで行われた。そのスタジオには南北戦争の前に建てられた木造の部屋もあり、プロデューサーとして二人は、その壁に浸み込んだ物語を、音に反映させようと試みたという。

リアノンのバックを務めるのは、彼女のツアー・バンドの他、ルイジアナの地元ミュージシャン、ニューヨークのソウルフルなホーン・セクション、そして才能に溢れた家族などのメンバーたち。そうして出来上がった本作は、前作よりもぐっと率直でよりパーソナルな作品となっている。

アルバムのタイトル・トラック「Freedom Highway」は、アメリカ大統領選挙の投票日翌日に作られたという。「私は南部の娘:白人ワーキングクラス、黒人ワーキングクラス、民主党、共和党、同性愛者、異性愛者の娘である。一つ言えるのは、私たちは、違っていることよりも、似ていることのほうが遥かに多い。嫌悪が私達を分断することがあってはならない、無知が我々を滅ぼすことがあってはいけない、起きている間中、自分たちの欲を満たそうとしている人たちに、我々の国を奪われることがあってはならない。私達からアメリカを取り上げることは出来ない――我々がそうさせない限り。この曲は、両親がスリランカから移り住んできた、セントルイス出身の生粋のアメリカン人シンガー・ソングライター、ビー・ビーマンと一緒にレコーディングした。アメリカの力は、その人々にある。その人たちがこの国に来たのが、4,000年前でも400年前でも40年前でも、誰も仲間外れにしてはいけない。共にフリーダム・ハイウェイを歩きましょう。ポップ・ステイプルズの1965年の曲のようにね」この曲について、リアノンはそう語っている。

全世界がアメリカの行く末を不安気に見守っている今だからこそ、聴いて考えて欲しいアルバム。それがリアノン・ギデンズの『FREEDOM HIGHWAY』である。

 

 

掲載: 2017年01月30日 14:46