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最新アルバム『Tokorats』をストーンズ・スロウ(Stones Throw)よりリリースしたジョンティ(Jonti)からインタビューが到着

Jonti

2011年にストーンズ・スロウから『Twirligig』でアルバム・デビューしたオーストラリアはシドニー在住のプロデューサー、ジョンティの新作『Tokorats』が完成した。ジョンティはこれまでにストーンズ・スロウから『Twirligig』、『Sine & Moon』(2012年)という2枚のフル・アルバムをリリースしているほか、オッド・フューチャーのホッジー・ビーツ、ジ・インターネットのスティーヴ・レイシー、レーベル・メイトのホームボーイ・サンドマンやジョンウェインなどなど、ストーンズ・スロウ・コネクションを生かしてヒップホップやビート・シーンを中心にコンスタントにコラボや異種格闘を重ね、ビート・メイカーとして確固たる地位を築き上げてきた。2016年にはアヴァランチーズの16年ぶりの新作『Wildflower』にも参加、ポップ・フィールドでも注目を増しつつある。三度ストーンズ・スロウからのリリースとなった『Tokorats』は、前二作と比較し生音やボーカル要素を各段に増した、『Wildflower』にも通じるカラフルなポップ・アルバムに仕上げられている。『Sine & Moon』から5年、待望のアルバムを日本限定でCDリリースすることになったジョンティに話を聞いた。

 

― 音楽との最初の出会いについて教えてください。

「音楽との最初の出会いはMTVを通じてで、まだ南アフリカにいたころ、よく観ていたんだ。ビースティー・ボーイズ、バスタ・ライムスやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ノー・ダウトなんかのワイルドなビデオ・クリップがお気に入りだったよ。ビデオが、今も続く刺激的な世界への入口だったんだ。」

 

 ― それからどのようにして楽器や歌を始めたのでしょうか。独学で学んだのでしょうか。それとも、誰かに教わったのですか。

「高校でギターに触れて、ひとめぼれしてしまったんだ。ロリー・オドノヒュー(オーストラリアの俳優で、ミュージシャンとしても活躍)を手本にしながら、ギターを学んでいったよ。その後シンセやドラムマシンをパソコンのソフトで勉強しながら習得したんだ。」

 

― 子供時代はどのようなバンドやミュージシャンが好きだったのでしょうか。

「ニルヴァーナやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ビースティー・ボーイズ、ベック、デ・ラ・ソウルなど、主に90年代のオルタナティヴなバンドをよく聞いていたよ。」

 

― 最初のアルバムが出たときはもうシドニー在住でしたか?どのようにしてストーンズ・スロウとコンタクトを取ったのでしょうか。

「『Twirligig』の制作を終え、あとはマスタリングを残すのみ、というところで、どうしたものかと思いを巡らせながら、たまたま、自分が持っていたストーンズ・スロウのレコードのジャケットをいくつか見返してみたんだ。すると、そのほとんどをデイヴ・クーリーがマスタリングしていることに気付いたんだ。そこで、彼にやってもらえないかと思い音源を送ったんだ。残念ながらデイヴにはやってもらえなかったんだけど、彼が音源をピーナッツ・バター・ウルフに『君これ好きなんじゃない?』と言って渡してくれたんだ。ウルフは気に入って、リリースしてくれたんだよ。とんとん拍子だったね。」

 

― セカンド『Sine & Moon』は最初のアルバムのすぐあとに出ました。今回の新作はセカンドから5年でしょうか。とても長い時間を要しました。なぜこれほど時間がかかったのですか。

「『Tokorats』を作り始めたとき、ちょっとスランプみたいな状態にあったんだ。まるで曲の作り方を忘れてしまったかのようだったよ。他のアーティストとコラボレーションをしたりして、何とか感触を掴み直そうと試行錯誤したんだ。そうこうしているうちに、これほど長い時間が経ってしまったんだよ。」

 

― 『Tokorats』には前作までと比べてより多くのライヴ要素(ストリングスなど)が含まれています。この新作とこれまでの作品を比べて、何が最も大きく違っていると思いますか。ゴティエやアヴァランチーズと一緒に仕事をしたことも影響しているのでしょうか。

「この新作では、どうにかしてこれまでの自分の限界を越えたいと考えていたんだ。以前は、アレンジやサウンドに注力しつつも短い曲を作ることが多かったんだよ。そういうやり方に慣れていたんだ。だから、自然に感じられつつも、より長く、もっとリラックスできるような曲を目指そうと思ったんだ。もちろんゴティエやアヴァランチーズと過ごした時間は、新作の曲作りにも大きな影響を与えているよ。ゴティエのショウにおける彼のシネマティックなムードやボーカルの使い方には、心の底から感銘を受けていたんだ。この新作の中には、アップテンポな曲だったり70年代ディスコのフィーリングを持った曲だったり、というのもあるけど、そういったものは、アヴァランチーズからの影響があるんじゃないかと思う。また、『Since I Left You』のショウ(アヴァランチーズのアルバム『Since I Left You』のリリース15周年を祝してレコードをまるまるライヴ・バンドでカバーするというトリビュート企画が行われた。ジョンティはそのプロジェクトのリーダーをつとめていた)で一緒に演奏したメンバーも、アルバムのレコーディングに参加してくれたんだけど、彼らが『Tokorats』の音楽的な基礎となってくれたのは間違いないよ。」

 

― 「Island Rose」にはサンパ・ザ・グレートが参加しています。彼女とはどのようにして知り合い、この録音に参加してくれることになったのでしょうか。

「サンパとは彼女のショウで初めて会ったんだ。彼女もシドニー在住だったからね。あるとき彼女が僕のガレージのスタジオに顔を出してくれた。そして僕の作ったビートにのせてフリースタイルをはじめたと思ったら、わずか5分ほどで「Island Rose」のリリックを書き上げてくれたんだよ。ラップもフックもフリースタイルも全部だよ。レコーディングは全てワンテイクでフィニッシュしたよ。レコードに収録したのは、そのエディットなしのそのままのテイクなんだ。」

 

― ホッジーとのレコーディングはどうでしたか?彼とは2011年に「Nagoya」という曲でコラボしていましたが。

「ホッジーのことは心からリスペクトしているよ。大好きなアーティストだよ。当時、たくさんの曲を一緒にやっていたんだ。いくつかは彼の作品にも収録されているよ。彼の素晴らしいところは、どんなにクレイジーで尖鋭的なビートを提供しても、いつも楽しそうにそれを乗りこなしてくれるところなんだ。」

 

― 『Tokorats』にはキリン・J・カリナンも参加しています。彼とはどのくらいの知り合いですか。あなたも彼も、かつてシベリア・レコードから7"シングルを出したことがあったかと思います。

「彼のことは、学校を卒業してシドニーでバンドの演奏を始めたばかりの頃から知っているよ。ショウでよく顔を合わせていたんだ。僕らは共に同じシーンにいたからね。今回のコラボは時間もなかったのであまりがっちりというわけにはいかなかったんだけど、いずれはもっとちゃんと時間を取ってクレイジーなことができたらいいなと思っているよ。」

 

― そのほかのゲストについても教えていただけたらと。

「最初にジャック・プレストの名前を挙げておきたいな。アルバムのプレス・リリースの段階ではあまり言及できなかったんだけど、アルバムのミックスは、ジャックがやってくれたんだ。曲作りに際しても色々と手を差し伸べてくれたよ。彼はシドニーのシーンにおけるヨーダのような存在のプロデューサーなんだ。モーゼス・マクレーは親友にしてソウル・ブラザー。あんなパワフルなドラマーはなかなかいないよ。モシ・ビーツという名義でビートも作っていて、これも素晴らしいんだ(https://mohibeats.bandcamp.com/)。ジョー・リン、ヴァネッサ・タメッタとテス・ニコラウの3人は『Since I Left You』のカバー・プロジェクトにも参加してくれたストリングス部隊だけど、今回はそれぞれが別々に、演奏してくれたんだ。生の弦は今回のレコードの中で一番の特別な要素だったと思うよ。3人には本当に感謝しているよ。」

 

― 『Tokorats』はメビウス(ジャン・ジロー)からインスピレーションを得たそうですね。『Twirligig』ではノーマン・マクラーレンの名前も挙げていたかと。あなたにとってビジュアル・アートは作曲の際のひとつの引き金になっているのでしょうか。ゆくゆくはフィルム・スコアを手掛けたりすることも興味がありますか?

「映画音楽を作るのは大きな夢のひとつだよ。監督で言ったら、バリー・ジェンキンス、ウォン・カーウァイやジョナサン・グレイザーなどなど。まるで映画のワン・シーンにいるかのように、ビジュアル・イメージに身をゆだねて浸り切ることがあって、曲ができるのはたいていそんなときなんだ。映画をはじめとしたビジュアル・アートからの刺激は、自分の曲作りにとって必須のものだと思うよ。」

 

― ストーンズ・スロウのサイトを見ると、アーティスト一覧の「J」のところにいるのは素晴らしいアーティストばかりですね。J・ディラ、J・ロックにジェームス・パンツと。そんな中にあなたも名を連ねることになったわけですが、次の目標は何でしょうか。

 「ジョンティとして現時点でやりたいことは、この『Tokorats』で全部やり切ったような気もするんだ。だから、全く新しい方向に舵を切ることもやぶさかではないよ。それがどこなのかは、まだはっきりとはわからないけどね。常に心をオープンにして、新しいチャレンジができたらと思っているよ。」

 

― 最近はどのようなセットでパフォーマンスしているのでしょうか。ラップトップやハードウェアですか?それともバンドで?

「4人編成のバンドだね。生のドラムで、シンセサイザーをたくさん使っているんだ。僕がボーカルのハーモニーを入れて、ループも駆使しながらパフォーマンスしているよ。ライヴはやっぱりバンドがいいね。」

 

― 2012年にタイコクラブで日本にも来ていますよね。あれが初めての来日だったのでしょうか。そのときのことを少し話していただけますか。

「そうだね。あれが初めての日本だったよ。そしてタイコクラブのステージは今でも僕にとってお気に入りのパフォーマンスとして記憶に残っているんだ。日がのぼり始めてすぐ、朝の7時にプレイしたんだ。とてもスペシャルな体験だったよ。キング・クルールの連中や、僕のヒーローとも言えるアニマル・コレクティヴやボアダムズともあのとき初めて会ったよ。また日本で演奏できたらうれしいね。毎日でもギグをやりたいよ。日本のバンドと一緒にできたら最高だよね。」

インタビュー、文:名倉 和哉

カテゴリ : タワー限定 | タグ : UK/US INDIE クラブ/テクノ タワー限定 ラップ/ヒップホップ

掲載: 2018年03月02日 11:43