グノー生誕200年記念!『ザ・グノー・エディション』(15枚組)
グノー生誕200年記念ボックス
作曲家シャルル・グノーは1818年6月17日に生まれ、ピアニストの母から音楽を学んだ後、1835年にパリ音楽院に入学し、アントニーン・レイハに師事。ローマ大賞を受賞し、その3年間ローマに留学。ローマではパレストリーナの音楽とキリスト教に深く傾倒。また、同地を旅行中のファニー・メンデルスゾーン(大作曲家の姉)と出会い、彼女から感化されバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンなどのドイツ音楽を始め、ドイツ文化全般に親しむようになります。実際、バッハの平均律クラヴィーア曲集は彼女に教えられ、後のバッハ~グノーの《アヴェ・マリア》創作へとつながります。
【参考動画】バッハ / グノー:アヴェ・マリア
ヨーヨー・マ (チェロ) キャサリン・ストット (ピアノ)
アルバム「ソングス・フロム・アーク・オブ・ライフ」PV
その後、ウィーン、ベルリン、ライプツィヒを巡り、ライプツィヒではメンデルスゾーンと面会。彼はグノーの作品を同地で演奏したほか、聖トーマス教会でバッハのオルガン曲をグノーに聴かせました。グノーは1843年にパリに戻り、サン・トゥスタッシュ教会の聖歌隊楽長兼教会オルガニストに就任。さらにパリのカルメル会での修行を経て、1852年に男声合唱団オルフェオン・ド・ラ・ヴィーユ・ド・パリの指揮者に就任しました。
【参考動画】グノー:歌劇『ファウスト』~宝石の歌
アンジェラ・ゲオルギュー(ソプラノ)
ロイヤル・オペラ・ハウス公式YouTubeページより
1859年に歌劇『ファウスト』で初めてオペラで成功を収め、『ミレイユ』(1864年)、『ロメオとジュリエット』(1867年)と相次いで名作を発表し、オペラ作曲家としての名声を確固としたものとしました。1870年には戦乱を避けて渡英し、1871年に創設されたロイヤル・コーラル・ソサエティの首席指揮者を務めました。1875年に帰国してからは再びオペラの作曲に戻り、最晩年は再び宗教音楽に取り組みました。また生涯を通じて歌曲を作り続け、「フランス近代歌曲の父」とも呼ばれています。1893年10月18日にパリ郊外サン=クルーで死去しました。
この15枚組ボックスは、グノー生誕200年を記念したものです。上記した3つのオペラ全曲が豪華キャストを揃えたプレートルとプラッソン指揮による定評ある名盤で入っているほか、『ファウスト』の珍しいドイツ語版がハイライトで入り、ファウストの敵役のヴァランティンがフィッシャー=ディースカウというのも注目されます。歌曲はCD2枚分たっぷりと収められ、宗教作品は若き日の『聖チェチーリアのための荘厳ミサ』と晩年のオラトリオ『死と生』と『コラール・ミサ』が入っており、「フランス近代歌曲の父」としてのグノーと、宗教に深く傾倒したグノーの両面を理解することができます。
【参考音源】グノー:交響曲第1番ニ長調~第1楽章
ロバート・アーヴィング指揮ニューヨーク・シティ・バレエ管弦楽団
録音が少ない交響曲第1番と第2番がプラッソンの名盤で入っているのも嬉しいところです。この2曲は尊敬するモーツァルトとメンデルスゾーンの交響曲を手本として書かれた、古典的な造形と瑞々しい生命力、美しいメロディにあふれた「隠れた名作」です。事実、グノーの弟子の17歳のビゼーはこの2曲にすっかり感動し、非常に良く似たスタイルで交響曲ハ長調を作曲したほどです。今日、ビゼーの交響曲は名曲として認知されていますが、グノーの交響曲は不当に軽視されています。このセットを機に、再評価が進んでほしいものです。ちなみにバレエ・ダンサー、振付師のジョージ・バランシン(1904~1983)は、既存の交響曲をバレエ化する「シンフォニー・バレエ」の創作で有名で、ビゼーの交響曲とともに、このグノーの交響曲第1番も1958年にバレエ化しています(上記参考音源はバランシンが率いていたニューヨーク・シティ・バレエのオーケストラの演奏です)。バルビローリ指揮の小交響曲については、幾度も再発売されている名盤なので、特に付け加えることはないでしょう。
【参考動画】グノー:操り人形の葬送行進曲
ロベルト・プロセッダ(ピアノ)
この15枚セットで欠けているのはヒッチコックのTV番組のテーマ曲として有名な「操り人形の葬送行進曲」を含む、グノーの魅力的なピアノ小品の数々ですが、幸い、日本人ピアニストの広瀬美紀子と、イタリア人ピアニストのプロセッダが、グノー生誕200年を記念して新録音をしています。フランスで学んだ広瀬美紀子のCDは、選曲が良いだけでなくグノーの生涯と収録作品についての彼女自身による日本語解説も実にしっかりしています。プロセッダはグノーが尊敬していたメンデルスゾーンのピアノ作品全集を録音したばかりで、両者の作品様式に精通しているだけに、こうした繋がりからも推奨できるものです。このセットと併せて、両盤ともお薦めいたします。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
【収録予定曲】
シャルル・グノー (1818-1893):
《CD1-3》
歌劇『ファウスト』(全曲)
[演奏]ミレッラ・フレー二(ソプラノ)プラシド・ドミンゴ(テノール)
ニコライ・ギャウロフ(バス)他
パリ・オペラ座国立劇場管弦楽団&合唱団
ジョルジュ・プレートル(指揮)
[録音]1979年
《CD4》
歌劇『マルガレーテ(ファウスト)』(ドイツ語歌唱:ハイライト)
[演奏]ニコライ・ゲッダ(テノール)クルト・モル(バス)
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
エッダ・モーザー(ソプラノ)ウラ・グレーネヴァルト(ソプラノ)他
ベルリン放送交響楽団、RIAS室内合唱団
ジュゼッペ・パターネ(指揮)
[録音]1973年
《CD5-7》
歌劇『ロメオとジュリエット』(全曲)
[演奏]アルフレード・クラウス(テノール)
キャサリン・マルフィターノ(ソプラノ)
ジョセ・ヴァン・ダム(バス・バリトン)他
トゥールーズ・カピトール管弦楽団&合唱団
ミシェル・プラッソン(指揮)
[録音]1983年
《CD8-9》
歌劇『ミレイユ』(全曲)
[演奏]ミレッラ・フレーニ(ソプラノ)
ジョセ・ヴァン・ダム(バス・バリトン)
ガブリエル・バキエ(バス)アラン・ヴァンゾ(テノール)他
トゥールーズ・カピトール管弦楽団&合唱団
ミシェル・プラッソン(指揮)
[録音]1979年
《CD10:オペラ・アリアと歌曲集》
1) 歌劇『ポリュークト』より「心地よい泉よ」
2) 歌劇『シバの女王』より「人々の心の弱さよ...我に霊感を与えたまえ、神々よ」
[演奏]ローランド・ビリャソン(テノール)
エヴェリーノ・ピド(指揮)フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団
3) 歌劇『サッフォー』より「孤独な塔の英雄」
[演奏]マリリン・ホーン(ソプラノ)
ローレンス・フォスター(指揮)モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団
4) 歌劇『サッフォー』より「わが不滅の竪琴よ」
[演奏]レジーヌ・クレスパン(ソプラノ)
ジャン・ラフォルジュ(指揮)オルケストル・シンフォニーク
5) 歌劇『シバの女王』より「闇夜の中で」
6) 歌劇『サン=マール』より「輝かしい夜」
[演奏]フランソワーズ・ポレ(ソプラノ)
シリル・ディードリシュ(指揮)モンペリエ・フィルハーモニー管弦楽団
7) 『メジェ』、8) 『夜明け』、 9)『花の贈りもの』、
10) 『死が目的ならば』、 11) 『夜への賛歌』
[演奏] ジョセ・ヴァン・ダム(バス・バリトン)
ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ)
12)『セレナーデ』、13)『おいで、芝生は緑』、 14)『いない人』
[演奏]バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)ミシェル・ダルベルト(ピアノ)
15)『胸の懸念が』、16)『春に』
[演奏]ホセ・カレーラス(テノール)ロレンツォ・バヴァイ(ピアノ)
17) 『孤独』
[演奏]ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ハルトムート・ヘル(ピアノ)
18)『夜うぐいすに』
[演奏]ピエール・ベルナック(バリトン) フランシス・プーランク(ピアノ)
19『セミとアリ』、20)『カラスとキツネ』
[演奏]ローレンス・デール、ジャン=ポール・フシェクール(テノール)
フランソワ・ル・ルー(バリントン)
ジャン=フィリップ・クルティス(バス)
ジェフ・コーエン(ピアノ)
《CD11:歌曲集》
1)『きみいまさず』、2)『二羽の鳩』、3)『お前のいない私』、4)『愛しあおう』、5)『つれなきひとよ』、6)『私の恋人は死んだ』、7)『春の歌』、8)『祈り』、9)『夕暮れ』[演奏]ジェラール・スゼー(バリトン)ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)
10)『ヴェネツィア』、11)『おお、きみはどこへ?』
[演奏]カミーユ・モラーヌ(バリトン)
シェベーク・ジェルジ(ピアノ:10)リリー・ビアンヴェニュ(ピアノ:12)
12)『愛する心』、13)『算術』、14)『お昼寝』
[演奏]フェリシティ・ロット(ソプラノ) アン・マレイ(メゾ・ソプラノ)
グラハム・ジョンソン(ピアノ)
15) グノー=J.S.バッハ:『アヴェ・マリア』(1859年)(ルネ・シャラン編)
[演奏]バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
エリク・エリクソン(指揮)ストックホルム室内管弦楽団
16)『コラール・ミサ』(荘厳ミサ曲第4番、1888年)
[演奏]マリー=クレール・アラン(オルガン)
ミシェル・コルボ指揮 ローザンヌ声楽アンサンブル
[録音]1988年
《CD12》
1)『聖チェチーリアのための荘厳ミサ』(1855年)(全曲)
[演奏]ピラール・ローレンガー(ソプラノ)ハインツ・ホッペ(テナー)
フランツ・クラス(バス)ルネ・デュクロ合唱団、パリ音楽院管弦楽団
ジャン=クロード・ハルトマン(指揮)
[録音]1963年
2) 『小交響曲 変ホ長調』(1885年)
[演奏]ジョン・バルビローリ(指揮) ハレ管弦楽団
[録音]1958年
《13-14》
オラトリオ『死と生』(1885年)(全曲)
[演奏]バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ナディーヌ・ドゥニーズ(メゾ・ソプラノ)
ジョン・エイラー(テノール)ジョセ・ヴァン・ダム(バリトン)
クリストフ・クールマン(オルガン)オルフェオン・ドノスティアラ(合唱団)
トゥールーズ・カピトール管弦楽団
ミシェル・プラッソン(指揮)
[録音]1992年
《CD15》
1) 交響曲第1番ニ長調(1855年)
2) 交響曲第2番変ホ長調(1850年)
[演奏]ミシェル・プラッソン(指揮)
トゥールーズ・カピトール管弦楽団
[録音]1979年
3) グノー=J.S.バッハ:『アヴェ・マリア』(1859年)(クルト・レーデル編)
[演奏]クルト・レーデル(指揮)
ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団