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“ピアノの吟遊詩人”ゲザ・アンダ~ピアノ協奏曲録音集(12枚組)

ゲザ・アンダ協奏曲録音集

【このBOXセットについて】
“ピアノの吟遊詩人”とは、1943年1月10日に共演した大指揮者フルトヴェングラーが当時21歳のアンダ(1921~1976)を讃えた言葉です。古き佳きヨーロッパの演奏伝統を引き継いだアンダは、戦後スイスを拠点として、ソリストとして、教育者として世界的な活動を行いました。1976年、食道がんのによる54歳での早世は惜しまれました。現在、彼の名は、その名を冠した国際ピアノ・コンクールや、生前のアナログ録音のCD化により知られています。ここには、彼が1959年にDGと契約してから1969年までのステレオ録音の中から、ピアノ協奏曲の録音をまとめています。また、1943年5月にSPレコードに録音したフランクの交響的変奏曲も収めています。

ちなみに彼が1964年に再婚した二度目の妻オルタンス・アンダ=ビュールレ(1926~2014)は、現在日本で開催中の「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」(2018.2/14~9/24まで)で有名な美術収集家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890~1956)の娘で、その遺産の相続人にあたります。彼が亡き後の「ゲザ・アンダ国際ピアノ・コンクール」の創設も彼女の尽力によるものでした。

生前の彼は、音楽のみにとどまらない、豊穣なヨーロッパ芸術文化に包まれていた訳です。そうした文化の香りや気品が、彼の演奏から聴こえてくるようです。

エミール・ゲオルク・ビュールレ
自らの絵画コレクションに囲まれたビュールレ

【ゲザ・アンダの生涯】
ゲザ・アンダは1921年11月19日にハンガリーのブダペストで生まれ、1976年6月14日にスイスのチューリッヒで世を去ったピアニストです。アンダはフランツ・リスト音楽院でエルンスト・フォン・ドホナーニとゾルターン・コダーイに師事し、1940年にリスト賞を受賞しました。1943年1月10日にはフルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演しフランクの交響的変奏曲を演奏。フルトヴェングラーはアンダを「ピアノの吟遊詩人(Troubadour)」と讃えました。1943年5月にはベイヌム指揮コンセルトヘボウ管弦楽団とフランクの交響的変奏曲をSPレコードに録音しています(当セットに収録)。

同年、アンダは第二次大戦の戦火を避けてスイスに亡命し、1955年にスイス国籍を得ました。演奏活動では1952年から1974年まで、毎年ザルツブルク音楽祭に出演して、リサイタルに、協奏曲に活躍。アメリカにも1955年以来、17回もツアーを行っています。

レコーディングでは1950~51年にはドイツ・テレフンケンに、1953~58年は英コロムビアと契約し、10数枚のモノラルLPレコードを作っています。録音レパートリーはバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスという独墺系作品が中心で、そこにショパンとお国物のリストとバルトークが加わるというオーソドックスなものでした。

1959年にドイツ・グラモフォンの専属になると、折しも実用化されたばかりのステレオLPレコードのために多くの基本的レパートリーを録音します。当セットに収められたフリッチャイ指揮によるバルトークのピアノ協奏曲全集を皮切りに、ベートーヴェンの三重協奏曲ブラームスのピアノ協奏曲第2番モーツァルトのピアノ協奏曲全集(分売)などが次々にリリースされました。このうちバルトークの第2&3番とベートーヴェンの三重協奏曲、モーツァルトの第21番&第17番はフランス・ディスク大賞を受賞しています。

 フランス・ディスク大賞受賞
左上に「フランス・ディスク大賞」のステッカーが貼られた初期LPジャケット

また、アンダが録音したモーツァルトのピアノ協奏曲第21番が、1967年のスウェーデン映画「みじかくも美しく燃え(Elvira Madigan)」で使用されたことで、一躍アンダの録音とモーツァルトのこの作品が世界的にヒットする、という出来事もありました。

「みじかくも美しく燃え」使用ジャケット
「みじかくも美しく燃え」のカットを使用したジャケットはCDでも引き継がれた

教育者としては1952年よりザルツブルクの夏季マスタークラスをもち、1960年からは大ピアニスト、エトヴィン・フィッシャーの後を受けてルツェルンでマスタークラスをもちました。

1965年にはフランスの芸術文化勲章「シュヴァリエ」を受勲、1970年にはイギリスの王立音楽アカデミーの「名誉会員」となっています。

私生活では1964年に「ビュールレ・コレクション」(現在日本で展覧会を開催中)で名高い美術収集家のエミール・ゲオルク・ビュールレ(1890~1956)の娘、オルタンス(1926~2014)と二度目の結婚をしました。1969年には息子、グラティアンが生まれています。しかし、1975年に食道がんと診断され、手術は成功して一時回復しましたが、翌年6月14日に亡くなりました。54歳の若さでした。

オルタンス・アンダ=ビュールレはアンダの死後、1978年に若手ピアニストの育成を目的としたゲザ・アンダ財団を創設。プレジデントに就きました。同財団は1979年より「ゲザ・アンダ国際ピアノ・コンクール」を主催し、3年に1度開催。世界的ピアニストへの登竜門として有名なコンクールとなっています(第1回優勝者はフランスのジョルジュ・プルーデルマッハー)。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

『ゲザ・アンダ / ピアノ協奏曲録音集 (モーツァルト、シューマン、ブラームス、グリーグ、バルトーク、他)』

【CD 1】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第6番 変ロ長調, K. 238 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第8番 ハ長調, K. 246 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調, K. 271 (カデンツァ: モーツァルト、アンダ[第3楽章2つ目のカデンツァのみ])

【CD 2】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第11番 ヘ長調, K. 413 (387a) (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第12番 イ長調, K. 414 (385p) (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第14番 変ホ長調, K. 449 (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調, K. 39 (カデンツァ: アンダ)

【CD 3】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第13番 ハ長調, K. 415 (387b) (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調, K. 450 (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第17番 ト長調, K. 453 (カデンツァ: モーツァルト)

【CD 4】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第16番 ニ長調, K. 451 (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第18番 変ロ長調, K. 456 (カデンツァ: モーツァルト/アンダ[第1楽章]、モーツァルト[第3楽章])
ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調, K. 459 “戴冠式” (カデンツァ: モーツァルト)

【CD 5】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調, K. 466 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調, K. 467 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第1番 ヘ長調, K. 37 (カデンツァ: アンダ)

【CD 6】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調, K. 482 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第23番 イ長調, K. 488 (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第3番 ニ長調, K. 40 (カデンツァ: モーツァルト)

【CD 7】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第24番 ハ短調, K. 491 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第25番 ハ長調, K. 503 (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第5番 ニ長調, K. 175 (カデンツァ: モーツァルト、アンダ[第3楽章])

【CD 8】
モーツァルト:
ピアノ協奏曲第26番 ニ長調, K. 537 “戴冠式” (カデンツァ: アンダ)
ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調, K. 595 (カデンツァ: モーツァルト)
ピアノ協奏曲第4番 ト長調, K. 41 (カデンツァ: アンダ)

【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノと指揮)
カメラータ・ザルツブルク
【録音】
ザルツグルク祝祭大劇場, 5/1961 (K. 453, 467), 4/1962 (K. 238, 482), 5/1963 (K. 451, 488)
ザルツブルク祝祭小劇場, 5/1965 (K. 414, 456, 466, 537), 4/1966 (K. 449, 491), 3/1967 (K. 415, 459)
ザルツブルク・モーツァルテウム, 4/1968 (K. 450, 503), 5/1968 (K. 246), 11/1968 (K. 37, 175, 271, 413), 3-4/1969 (K. 39, 40, 41, 595)

【CD 9】
ベートーヴェン:
ピアノ、ヴァイオリン、チェロのための三重協奏曲 ハ長調, op. 56

【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
ヴォルフガング・シュナイダーハン (ヴァイオリン)
ピエール・フルニエ (チェロ)
フェレンツ・フリッチャイ指揮
ベルリン放送交響楽団
【録音】
1960年6月、ベルリン・イエス・キリスト教会

フランク:
交響的変奏曲
【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
エドゥアルト・ファン・ベイヌム指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
【録音】
1943年5月17~21日、アムステルダム

【CD 10】
シューマン:
ピアノ協奏曲 イ短調, op. 54
グリーグ:
ピアノ協奏曲 イ短調, op. 16
【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
ラファエル・クーベリック指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
【録音】
1963年9月、ベルリン・イエス・キリスト教会

【CD 11】
ブラームス:
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調, op. 83
【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
フェレンツ・フリッチャイ指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(第3楽章 チェロ: オットマール・ボルヴィツキー)
【録音】
1960年5月9~12日、ベルリン・イエス・キリスト教会

バルトーク:
ピアノとオーケストラのための狂詩曲 op. 1, SZ 27
【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
フェレンツ・フリッチャイ指揮
ベルリン放送交響楽団
【録音】
1960年10月18~19日、ベルリン・イエス・キリスト教会

【CD 12】
バルトーク:
ピアノ協奏曲第1番(*)
ピアノ協奏曲第2番(+)
ピアノ協奏曲第3番(+)
【演奏】
ゲザ・アンダ (ピアノ)
フェレンツ・フリッチャイ指揮
ベルリン放送交響楽団
【録音】
1959年9月10日(+)、1960年10月17日(*)、ベルリン・イエス・キリスト教会

カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)

掲載: 2018年05月10日 00:00