【入荷済】グルダの初登場音源!『バッハ グルダ クラヴィコード ザ・モノ・テープス』
ウィーン生まれのピアニストで、モーツァルトやベートーヴェンの最高の演奏家との評価を得ながら、1950年代からジャズ演奏も積極的に行うなどジャンルの境界を超える活動を行ったフリードリヒ・グルダ。今回初登場するのは、彼がクラヴィコードを弾いてプライヴェート録音したバッハの鍵盤作品集です。
グルダとクラヴィコードの出会いは1971年オシアッハの音楽祭でドイツのアヴァンギャルド・ジャズ・バンド、アニマ・サウンドと知り合ったときに遡ります。このとき、すでにピアノ、電子ピアノ、リコーダーを用いていたグルダの楽器にクラヴィコードが加わりました。クラヴィコードの音量は小さいので、演奏会で使用する場合にはマイクでの増幅が不可欠ですが、グルダはクラヴィコードの弦の上にマイクを置いて増幅していたということです。
グルダはバッハがオルガンとともにクラヴィコードを愛好していたことから、バッハ作品の演奏にしばしばクラヴィコードを用いるようになりました。また、音が小さいことからホテルでの練習にも愛用していました。このCDでの前半は親密でリファインされたサウンドを持つWidmayer社製のクラヴィコードを演奏し、後半ではコンサート楽器のように聴こえるNeupert社製のクラヴィコードを演奏しています。
録音は1978~79年ですが、マスタリングを担当したクリストフ・シュティッケルによると、グルダ自身がコンサートや朝の練習で自分の演奏をモニターするために様々な折に行われたもので、磁気テープの保存状態はかなり悪いものだったとのことです。磁性体のテープへの再定着化のためオーブンで乾燥させた結果、録音の質は十分に残っていました。ただし、簡易的な録音設定のため、ノイズや歪み、ドロップ・アウトなどが散見される状態でした。そこでスティッケルは、グルダの弟子でテープの所有者であるトーマス・スナップと相談し、次のようなデジタル・マスタリングを進める決断しました。テープは192kHzでデジタル化され、ハムを減らした後、ドロップ・アウトを修正し、バックグラウンド・ノイズは、元の楽音に影響を与えない程度で除去されました。音のピッチについても正しく修正されています。結果として、グルダのクラヴィコード演奏のユニークで魅力的なサウンドと演奏が蘇りました。
シュティッケルは「録音の品質は現在の水準には達しませんが、私が与えられたテープで得た結果として満足しています」とライナーノーツに記しています。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)
【曲目】
平均律クラヴィーア曲集第2巻より第5番、第23番、第17番、第10番、第20番、第24番
半音階的幻想曲とフーガ、イギリス組曲第2番
【演奏】
フリードリヒ・グルダ(Clavichord)
【録音】
1978~79年、グルダ自身によるプライヴェート録音(モノラル)