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オーストラリアの国民的バンド、ザ・リヴィング・エンド(THE LIVING END)約2年振りのアルバム『WUNDERBAR』

THE LIVING END

1994年にオーストラリアはメルボルンで結成されたザ・リヴィングエンド。約25年にも亘るキャリアを考えれば、今の彼らが所謂クラシック・ロックやオールド・スクール・ロック的なポジションに立っていたとしても、路線を変えて壮大なコンセプトを作っていたとしても、何ら不思議はないのかもしれない。しかしデビュー以来一貫してオージー・ロックのフレイヴァーが詰まったメロディックかつ、シンガロングな楽曲でファンの心を掴んできたトリオは、いい“ロック親父”になっても、そのロックンロール・アティデュードは少しもブレていなかった!

ザ・リヴィング・エンドにとって約2年振りとなるニュー・スタジオ・アルバム『WUNDERBAR』。「俺たちは、『ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン』みたいなものを作りたいわけじゃなかった」と語るのは、フロントマンのクリス・チェズニー。その言葉通り、このニュー・アルバムはザ・リヴィング・エンドの十八番とも言える、直球ど真ん中の、胸躍るようなストレートなロックンロールに溢れている。「俺たちは今でも、ライヴで自分たちの100%出しきっている。いつも最高の曲を作ろうと頑張っているし、最高に楽しい時だってある――だから今でも一緒にやっているんだろうな」そう語るのはドラムスのアンディ・ストラッカンだ。

ドイツ語で“Wonderful”を意味するアルバム・タイトル『WUNDERBAR』。ザ・リヴィング・エンドにとって通算8作目となる本作は、ベルリンでレコーディングされたが、これまでの彼らのアルバムの中で最も早く形になったアルバムでもあった。2018年初め、アルバムを作れるだけの曲を手に、ベルリンへと向かった彼らは、そこでディ・トーテン・ホーゼンなどを手掛けたプロデューサー、Tobias Kuhnとスタジオに入った。彼と一緒に仕事をするのは初めてだったが、Tobiasはバンドと同じ”音楽的言語”を持っており、ザ・リヴィング・エンドのハートに増強剤をぶち込み、『WUNDEBAR』の制作に大きな刺激を与えた。またかつてイギー・ポップやデヴィッド・ボウイ、ブライアン・イーノといったロック・アイコンが滞在し、作品を作り上げたベルリンの街も『WUNDERBAR』に大きな影響を与えた。暖房の無いAirbnbで寝泊まりしながらも「ベルリンは素晴らしい所だよ」とベース/ヴォーカルのスコット・オーウェンは語る。「ロック・バンドがダーティーでギラついたロックンロールを作るには、ここほど相応しい場所はないよ」

彼らのパンク魂が迸る、疾走感のあるリード・シングル“Don't Lose It”は熟練味を出しながらも、堂々と反逆的で、エモーショナルな共感を呼び起こす、2018年現在のザ・リヴィング・エンドの姿を映した1曲と呼べるだろう。また嫉妬や野心といった感情を描いたメロディックなアンセム「Otherside」についてアンディはこう説明する。「隣の芝生は青く見えるだろう?でも、たまには足を止めて、自分が何を持っているかを見詰めなきゃいけないんだ。そうすれば、もっと悪い状況になっていたかも知れないことに気付くのさ」 また、アルバム中最も政治的なメッセージを持った「D.E.A.T.H」は、7年近く住んでたから、彼らには同情的なんだと語るクリスが現在のアメリカにインスパイアされた作ったもの。ディ・トーテン・ホーゼンもバックング・コーラスで参加しているこの曲は大声でシンガロングしたくなるようなロック・アンセム調で始まり、アメリカン・ドリームの終焉を悼むアコースティック・ばらーで終わっている。このように『ザ・リヴィング・エンドの最新作『WUNDERBAR』は、エネルギッシュなストレートど真ん中なパンク・ロックを奏でながらも、人生の悲哀や心の琴線に触れるような細やかな機微もアコースティック・ギターにのせて歌えるようになった、背負うものもたくさん増えた2018年の彼らを等身大で捉えた作品でもある。年を取って、“おやじロック”をやり始めるバンドもあれば、消えてなくなってしまうバンドもある。しかし、ザ・リヴィング・エンドはまだまだロック街道のど真ん中で、新たな道を切り拓いている。

タグ : PUNK/EMO

掲載: 2018年10月15日 17:28

更新: 2018年10月16日 12:00