WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.24
デューク・ジョーダン『フライト・トゥ・デンマーク』(1974)
デューク・ジョーダン(p)
マッズ・ヴィンディング(b)
エド・シグペン(ds)
1973年11月25日&12月2日、コペンハーゲン“サウンド・トラック”にて録音
曲目(オリジナル発売時の収録内容):
1. 危険な関係のブルース
2. ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
3. エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー
4. グラッド・アイ・メット・パット
5. ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン
6. オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
7. イフ・アイ・ディドゥ、ウッド・ユー
8. フライト・トゥ・デンマーク
【アルバム紹介】
1.北欧のジャズ・レーベル、スティープル・チェイスのナンバーワン人気盤
2.70年代録音のピアノ・トリオの逸品
3.雪の名ジャケ、名曲“危険な関係のブルース”収録
前回ご紹介いたしましたルイ・アームストロングの名曲“この素晴らしき世界”は発売当時はUKでこそヒットしたものの、アメリカでは20年後に映画に使われてリバイバルした、という1曲でした。
ピアニスト、デューク・ジョーダンの代表曲に“危険な関係のブルース”があります。この曲も映画とご縁のある名曲で、1959年のフランス映画『危険な関係』のテーマ曲として知られ、シネ・ジャズを象徴するジャズ・ナンバーといえる1曲です。
この曲を1曲目に収録し、作曲者のデューク・ジョーダンが自作自演したアルバムがこの『フライト・トゥ・デンマーク』です。
1972年にデンマークのコペンハーゲンで産声をあげた北欧のジャズ・レーベル、スティープル・チェイス(レーベル・オーナー:ニルス・ウィンター)のリリース作品中、ダントツの人気を誇る名盤です。70年代はジャズ・シーンはどんどんクロスオーヴァー、フュージョンが中心となり、スタンダード曲中心の内容をもったストレートなジャズ・アルバムは傑作が生まれにくかったと思われますが、本作はそんな時代の中で誕生し、今なおロングセラーを記録する一作です。
長年愛され続けた理由は、まずはこの“雪の名ジャケット”に尽きます。そこに佇むコート姿のデューク・ジョーダン。そしてディスクをプレイすると、あの“危険な関係のブルース”のメロディが流れ、という、アルバムを手に取って、そこから最初の音が聴こえてくるまでに体験する過程も本作の魅力になっています。
そして“ヒアズ・ザット・レイニー・デイ”“エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー”とスタンダードの名バラードが続き、ロマンティックなピアノ・トリオの演奏がこのアルバムのもうひとつの魅力なのだと気づかされます。
楽曲的には“危険な関係のブルース”だけにとどまらない、デューク・ジョーダンのオリジナル曲も大きなセールス・ポイントになっております。愛らしいメロディを持った優雅なワルツ“グラッド・アイ・メット・パット”、テンダーなミディアム・スイング・ナンバー“イフ・アイ・ディドゥ、ウッド・ユー”、そして、軽やかにスイングするタイトル曲“フライト・トゥ・デンマーク”など、リラックスしたトリオの演奏を聴いていると慌ただしい日常から解放されるようです。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
不滅の名旋律“危険な関係のブルース”。
ロジェ・バディム監督、ジャンヌ・モロー主演の映画『危険な関係のブルース』。先述の通り、この映画はフランスのシネ・ジャズの傑作であり、マイルス・デイヴィスが音楽を担当した『死刑台のエレベーター』同様、劇中の音楽はジャズの演奏というのが、強烈なインパクトを与えました。『危険な関係』の音楽(オリジナル・サウンドトラック)はアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの演奏がフィーチャーされており、そこではクインテット編成での“危険な関係のブルース”が聴けますので、本作のピアノ・トリオの演奏と聴き比べると面白いでしょう。クインテットでの豪快なハードバップ然とした演奏に比べ、本作での演奏はジャケットの雪景色を意識したかのような季節感を思わせる、落ち着いた静的な演奏といった印象を受けると思います。
国内盤(一般普及盤)
輸入盤LP
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2019年04月26日 12:30