リチャード・エガー&エンシェント室内管によるヘンデル:ブロッケス受難曲(レオ・ドゥアルテによる新校訂版)(3枚組)
[Academy of Ancient Music 公式チャンネルより]
ドイツの文筆家バルトルト・ハインリヒ・ブロッケス(1680-1747)。
彼が書いたイエスの受難のテキストは18世紀に高い人気を誇り、ヘンデルをはじめ、ラインハルト・カイザーやヨハン・マッテゾン、ゲオルク・フィリップ・テレマンらの作曲家が彼の詩を用いて受難曲を作曲、1719年にはこの4作品が相次いで演奏された記録が残っています。またJ.S.バッハも「ヨハネ受難曲」のいくつかの楽章でブロッケスの詩を用いています。
前述のとおり、ヘンデルも1716年頃にこのブロッケスの詩による受難曲を作曲しており、これは彼の生涯唯一の受難曲であるとともに、イギリス時代のヘンデルとしては珍しくドイツ語で書かれた声楽作品であることでも知られています。ただし、残念なことにドイツとロンドン間での楽譜送付のトラブルのため自筆原稿が失われてしまったこともあり、作曲された経緯などはあまりわかっていません。
2017年から2019年にかけてエンシェント室内管弦楽団(AAM=アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック)はこの作品に取り組み、その集大成となったのが、2019年の聖金曜日にロンドン、バービカン・ホールで開催された“「ブロッケス受難曲」初演300周年記念”の演奏会でした。エリザベス・ワッツ、ロバート・マレー、ティム・ミードを始めとしたバロック作品に定評のある歌手を起用し、リチャード・エガーの指揮による素晴らしい演奏がこのアルバムに収録されています。
演奏の素晴らしさもさることながら、とりわけ話題となったのがこの演奏に使用された、2年間の学術研究による「15の手稿」を取り込んだ新校訂版でした。この手稿は5か国、8つの都市の図書館のコレクションに所蔵されていたものを集め、ヘンデルの研究者であるルース・スミスをはじめ、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、キングスカレッジロンドンの研究者、音楽学者たちの協力を得て、ようやく演奏可能になったものです。これまで「ブロッケス受難曲」の演奏では1965年に出版された版が用いられてきましたが、この50年の間にヘンデルに関する研究が飛躍的に進歩し、ブロッケス受難曲についても次々に新しい原稿の存在が明らかになり、今回の新校訂版を作成するというアイデアが生まれました。もちろん発見された譜面をそのまま演奏するのではなく、既存のものと比較し、どれを採択するのが一番ふさわしいのかを議論しなくてはいけませんでした。
優れたオーボエ奏者でもあるレオ・デュアルテは、エンシェント室内管弦楽団の音楽監督リチャード・エガーとともに、数多くの協力者の力を得て、この新校訂版を創り上げました。
アルバムには220ページのブックレット(英語)が付属。全ての曲の歌詞はもちろん、新校訂版が出来上がるまでの過程や、追加曲目の研究結果、ブロッケス受難曲が辿った経緯なと興味深い記事を始め、作品からインスパイアされた現代絵画が掲載されており、現在の「ブロッケス受難曲」における決定的なガイドとなっています。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
ヘンデル(1685-1759):ブロッケス受難曲 HWV48
HWV48Der für die Sünde der Welt gemarterte und sterbende Jesus-世の罪のために苦しみ死にたまいしイエスレオ・ドゥアルテ編集による新校訂版(追加部分はリチャード・エガーによる)
【CD1】
1-50.ブロッケス受難曲 第1番-第50番
【CD2】
1-55.ブロッケス受難曲 第51番-第105番
【CD3】
追加曲目A
1.シンフォニア 1a:grave e staccato/1b:Adagio e staccato
2.11a:合唱: chorus of disciples
3.71a:アリア: daughter of Zion
4.93a:レチタティーヴォ: Faithful Soul (soprano), Evangelist
追加曲目B
5.2b:chorus of disciples to the cross our lord is bound
6.3b:レチタティーヴォ:Evangelist When Jesus at the table sitting
7.4b:accompagnato 伴奏付叙唱:Jesus take, eat: this is mybody
8.5b:アリア:daughter of Zion the God,whom th’heav’n and heav’n of heavens
9.6b:レチタティーヴォ:Evangelist he took the Cup
10.7b:accompagnato 伴奏付叙唱:Jesus this is my blood of the new testament
11.9b:合唱:The christian church As the hart pants after pure streams
12.10b:レチタティーヴォ: Evangelist,Jesus And when they had sung an hymn
13.11b:chorus should the whole world at once forsake you
14.12b:レチタティーヴォとアリア:Peter, Jesus th’event is certain
15.13b:レチタティーヴォ:Peter, Jesus but i will still be firm
16.14b:Soliloquium 独白:Jesus how sorrowful
17.15b:レチタティーヴォ:Jesus the heavy load of sins oppress me
18.21b:アリオーソ:Jesus, John, James,Peter here watch with me
19.62b:アリオーソ:Faithful Soul behold the love of God towards us
【演奏】
シオンの娘…エリザベス・ワッツ(ソプラノ)
福音史家…ロバート・マレイ(テノール)
イェス…コーディ・クアトルバウム(バス)
ペテロ…グウィリム・ボウエン(テノール)
ユダ…ティム・ミード(カウンター・テナー)
【忠実な魂たち】
ルビー・ヒューズ(ソプラノ)
レイチェル・ロイド(メゾ・ソプラノ)
ニッキー・スペンス(テノール)
モーガン・ピアース(バス)
キャシー・ベル(メゾ・ソプラノ)
ケイト・シモンズ=ジョイ(メゾ・ソプラノ)
フィリッパ・ハイド(ソプラノ)
リチャード・エガー(指揮)
エンシェント室内合唱団
エンシェント室内管弦楽団
【録音】
2019年4月11,17,18日 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン
2019年4月19日 バービカン・ホール、ロンドン
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2019年11月27日 00:00