WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.89
ミシェル・ルグラン『ルグラン・ジャズ』(1958)
ミシェル・ルグラン(arr, cond)
マイルス・デイヴィス, ドナルド・バード, アート・ファーマー, クラーク・テリー(tp)
ベン・ウェブスター, ジョン・コルトレーン(ts)
ポール・チェンバース(b)
ハービー・マン(fl)
フィル・ウッズ(as, fl, cl)
バリー・ガルブレイス(g)
ビル・エヴァンス, ハンク・ジョーンズ(p)他
1958年6月、ニューヨークにて録音
曲目(オリジナルLP発売時):
01.ザ・ジターバッグ・ワルツ
02.雲
03.チュニジアの夜
04.ブルー・アンド・センチメンタル
05.サヴォイでストンプ
06.ジャンゴ
07.ワイルド・マン・ブルース
08.ロゼッタ
09.ラウンド・ミッドナイト
10.ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニィモア
11.イン・ア・ミスト
【アルバム紹介】
1.フランス・ジャズ界のレジェンドで映画音楽の巨匠ミシェル・ルグラン
2.新婚旅行で訪れたアメリカで豪華ミュージシャンを迎えてのレコーディング
3.マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスが揃って参加
前回ご紹介しましたミシェル・ペトルチアーニと同じファースト・ネームを持ち、ピアニストでもあったフランス・ジャズ界のレジェンドといえばミシェル・ルグラン。
映画音楽の世界では優れた作曲家としての地位を築き上げ、ミュージカル映画『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人』、映画『華麗なる賭け』から“風のささやき”、映画『思い出の夏』など、数々の作品で名曲を残しています。
本作はミシェル・ルグランが50年代終わりに自身の新婚旅行をかねてアメリカに行った際、マイルス・デイヴィスをはじめ、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスらアメリカの錚々たるジャズ・ミュージシャンと共演した初期の傑作です。
楽曲はファッツ・ウォラー作の“ザ・ジターバッグ・ワルツ”、ジャンゴ・ラインハルトの“雲”、デューク・エリントンの“ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニィモア”などオールド・ジャズのスタンダード・チューンからジョン・ルイスの“ジャンゴ”、ディジー・ガレスピーの“チュニジアの夜”まで、ルグランの手腕による巧みなアレンジで聴かせます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
マイルス、コルトレーン、エヴァンスをフィーチャーした“ザ・ジターバッグ・ワルツ”。
ミシェル・ルグランがこのレコーディングで意図したのは他ならぬジャズ界の帝王マイルス・デイヴィスとの共演でした。本作でマイルスが参加している楽曲は4曲あります(トラック1, 2, 6, 9)。しかもこれら4曲にはジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスも参加しており、本作の聴きどころとなっています。
その中の1曲、アルバム・トップにあたるのが“ザ・ジターバッグ・ワルツ”で、イントロからマイルスのフルトーンのトランペットが響きます。続いてビル・エヴァンスのピアノと管楽器セクションが呼応するような動きを見せつつ、ウィットに富んだアレンジに乗ってテーマ・メロディが進行してゆきます。
ソロに入るとマイルスがクールでストイックな印象さえするフレージングで魅了し、続いてフルートのハービー・マン、アルト・サックスのフィル・ウッズ、そしてテナー・サックスのコルトレーン、ピアノのエヴァンスとソロをつないでゆきます。そしてドラムスのブレイクの後、イントロのマイルスのフレーズが戻ってきて、再び冒頭のセクションを再現し、余韻を残しつつ曲を終えてゆきます。
以降、ミッシェル・ルグランはフランスの音楽界の重鎮として輝かしい実績を残し、たびたび来日公演も行ってきましたが、惜しいことに2019年1月26日敗血症により、パリでその生涯を閉じました。86歳でした。
国内盤SHM-CD(一般普及盤)
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2020年08月07日 10:00