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WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.92

チック・コリア&ゲイリー・バートン『クリスタル・サイレンス』(1973)

CS

チック・コリア(p)
ゲイリー・バートン(vib)

1972年11月6日 オスロ、タレント・スタジオで録音

曲目:
01.セニョール・マウス
02.アライズ、ハーアイズ
03.アイム・ユア・パル
04.デザート・エア
05.クリスタル・サイレンス
06.フォーリング・グレイス
07.フィーリング・アンド・シングズ
08.チルドレンズ・ソング
09.ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ

【アルバム紹介】
1.モダン・ジャズ期以降、数少ないヴィブラフォン奏者の名プレイヤー、ゲイリー・バートン
2.チック・コリアとの初共演作となったデュオ名盤
3.ピアノとヴィブラフォンによる“透明感”に満ちたサウンドでのインタープレイ

前回ご紹介いたしましたオランダの歌姫アン・バートンの“バートン”は本名ではなく、彼女がファンだったという俳優のリチャード・バートンからとったものでした。この“バートン”という名前を聞いて、アメリカのジャズ・プレイヤーで、まず思い浮かぶのはヴィブラフォン奏者のゲイリー・バートンです。

ジャズの長い歴史の中で、ヴィブラフォン・プレイヤーは決して多くありませんが、その中でもモダン・ジャズ期以降でこの楽器の演奏に長けた人気奏者として活躍した一人です。

本作はピアニストのチック・コリアとの初共演作であり、デュオでレコーディングされたECMレーベルを代表する一作として名高いものですが、レコーディングの話が持ち上がった際、ピアノとヴォブラフォンのデュオのアルバムが売れるのかどうか、と懸念されたそうです。しかし、結果オーライで、本作は人気ジャズ・アルバムの仲間入りし、現在もなおロングセラーを続ける名盤となりました。

ピアノの聴きなれた響きに重なるクールなトーンのヴォブラフォンは、タイトルにあるとおりの“透明感”に満ちたサウンドを作り出し、ここでは稀有のインプロヴァイザーである2人の極上のインタープレイが楽しめます。

収録されている全9曲はすべてオリジナルで、チック・コリアがトラック1,4,5,8,9と半分以上提供、5曲目のタイトル曲、9曲目“ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ”はチックの同じECMレーベルのヒット作『リターン・トゥ・フォーエヴァー』でも取り上げていた楽曲です。残りの曲はバートンのレギュラー・カルテットのベーシストであったスティーヴ・スワロウの3曲と、バートンの旧友である作編曲家のマイク・ギブスの1曲で構成されています。

【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
チックの代表曲“セニョール・マウス”初演。

1曲目の“セニョール・マウス”はチックの代表曲であり、その後自身のアルバムではもちろん、アル・ディ・メオラのアルバム等にも収録されたことのある1曲です。
本作のバージョンはこの曲の“初演”となったものです。
デュオの演奏といえば、しっとりとしたバラード演奏に近いものを想像しがちですが、この曲でそれはいい意味で裏切られます。
重厚で躍動的なピアノのイントロに導かれ、ヴォブラフォンが澄み渡る音色でテーマを提示してゆき、やがてピアノとのユニゾンによる中間部を経て、イントロと同じリフの上でヴィブラフォンがソロを展開し始めます。再び中間部を経た後、両者によるデュオならではの会話のようなインタープレイが展開されてゆきます。ややクールダウンした後、ピアノのソロが前面に出てくるなど変幻自在な自由な構成のうちにエンディングをむかえます。
以降、2人のデュオ共演は2012年までに断続的に6作リリースされており、うち5作がグラミーを受賞するなど、ジャズ史に残るデュオ名演であることを裏付けています。

国内盤SHM-CD(一般普及盤)

 

国内盤SA-CD HYBRID盤(タワーレコード限定盤)

 

輸入盤CD(紙ジャケット)

 

輸入盤LP

タグ : WEEKEND JAZZ

掲載: 2020年08月28日 10:00