こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

注目アイテム詳細

週刊ライドオンタイム 第3号

山下達郎

週刊ライドオンタイム Vol.1

11年ぶりとはオマタツが過ぎますが、山下達郎、待望のオリジナルアルバム『SOFTLY』発売のビッグニュースにいてもたってもいられないタワレコスタッフにより結成された<週刊ライドオンタイム編集部>による音盤紹介コラム。ニューアルバム『SOFTLY』発売まで毎週upしてまいります、ひとつよしなに!

【今回は…】
『週刊ライドオンタイム』、第3週は少し趣向を変えて、新宿店TANAKAHMANNが偏愛する吉田美奈子さんが77年に発表した5作目『TWILIGHT ZONE』、言わずと知れたソウルメイト=山下達郎プロデュースによる濃厚ソウルネスむんむんのこの名盤について語らせて頂きます!まずは皆さま御存じの通り、達郎さんといえば自他ともに認めるアルチザンであり、何よりスタイルの御仁でございます。普遍的な詩、メロディを、時代の変遷に経年劣化する事のないエヴァーグリーンな器(=編曲、アレンジ)で僕らに届けてくれる職人であるところは周知の通り。竹内まりや、エポ、村田和人にアン・ルイス、キングトーンズにクールスまで、その手腕はまさに王道。しかしながら美奈子さんの『TWILIGHT ZONE』についてはすこし異色といえる作風であり、達郎さんの「スタイル」をあえて抑え、「吉田美奈子」というアートを最大限に引き出した素晴らしい手腕について改めて語らせて下さい。(タワーレコード:タナタツ)

吉田美奈子『TWILIGHT ZONE』

達郎さんが「スタイル」の職人であるならば、その盟友・吉田美奈子の音楽は紛れもなく人声による「アート」である。73年、キャラメル・ママの名演奏を伴った歴史的名盤『扉の冬』により、その圧倒的な才能を我々に魅せてくれた美奈子さん。その後、レーベルを移籍し発表した75年の2nd『MINAKO』、ライブ作品を挟み4作目となる『FLAPPER』は、ともにポップな音作りで更なるポピュラリティを指向した作品となっており、そこで彼女のソウルメイトであった達郎さんが、「もっと吉田美奈子のコアな音楽性を引き出したい」と考え『TWILIGHT ZONE』を準備したのは想像に難くない。果たしてその想いは作品に見事に結実しており、いまやシティポップのアイコン的人気曲"恋は流星"や、後の「ファンクの女王」への伏線となった"Uptown"、2nd/4thアルバムに収録されていてもおかしくないヤングソウル"駆けてきたたそがれ"などのポップ曲を散りばめながらも、アルバムの主軸はあくまで美奈子の歌とピアノ。何にもおもねる事のない、ハードコアならぬハートコアな彼女のアートに貫かれた作品になっており、歌とピアノの余韻、無音のアトモスフィアすらも音楽そのもの。ラストを飾るタイトル曲"Twilight Zone"、まさに氷の結晶のように美しく始まり、それが徐々に溶けるようにリズムが入り、ベテラン岡崎広志のサックスソロで終わるこの曲がこのアルバムを象徴しているかと。達郎さんは事前に編曲、スコアを完璧に書き上げ、それを美奈子さんの歌入れも含め一発録りした、という恐るべき逸話も納得の緊張感がたまらない。


Laura Nyro『光の季節~イン・コンサート』

本当は76年の復帰作『Smile』を挙げたかったのだが惜しくも現在廃盤・・・なので同年の復帰コンサートを収録したライヴ作品をレコメンド。『イーライと13番目の懺悔』や『ニューヨーク・テンダベリー』など、初期作品での圧倒的な名演が語られがちな彼女ですが、復帰後のいい意味でリラックスした作風も素晴らしいのです。名匠チャーリー・カレロと再びタッグを組み、"私はブルース"や"ミッドナイト・ブルー"などの『Smile』収録曲を始め、過去のレパートリーをメロウに聴かせてくれる。くしくも『TWILIGHT ZONE』と同年、77年発表作品。


Rufus『ストリート・プレイヤー』

ソウル歌手としてのチャカ・カーンの凄さは言うまでもないところだが、"バンドのボーカリスト"としての彼女を楽しみたいなら断然ルーファス名義作品だろう。うねるようなルーファスの面々による自由闊達な演奏に、即興的なアプローチで変幻自在に歌うチャカの歌声はまさに楽器そのもの。美奈子さんの『TWILIGHT ZONE』と相通ずる姉妹作品だと個人的には思っております。


Aretha Franklin『レディ・ソウル』

音楽を志した若き日の美奈子さんが最初に買ったレコードとしても知られる永久不滅のソウル女王によるその名も『レディ・ソウル』、68年アトランティック移籍後の3作目。当初オーティスが歌うはずだった名曲"チェイン・オブ・フールズ"はR&Bチャートで1位を記録、さらにキャロル・キングやインプレッションズ、ラスカルズの名曲も取り上げながらも、もはやそれらはカバーを超えてアレサのオリジナル曲に。米アラバマのマッスル・ショールズで録音され、ボビー・ウォマックやキング・カーティスの他、エリック・クラプトンも渋いギター・ソロを聴かせるサザン・ソウル趣味たっぷりでブルージーなサウンド、なのにどこか愛らしいアレサ歌声との対比もまたニクそいのです。


山下達郎『IT'S A POPPiN' TiME』

3週続けてライヴ盤かいっ!ってな声も聞こえますが・・・やっぱりコレ、いっちゃいます!ヤングソウル・オブ・タツローと仲間たちによる一発録音の真剣勝負から生まれる緊張感がたまらない『IT'S A POPPiN' TiME』。実はこの作品でしか聴けない楽曲を多数取り上げているのも聴きドコロポイントでして、吉田美奈子の官能的な不倫ソング"時よ"を男目線で歌った同曲もそのひとつ。ここでの達郎さんの、身も心も焦がすような狂おしくもエモーショナルなボーカルには言葉もありません。この前年に手掛けた『TWILIGHT ZONE』での経験が本作のきっかけになったのかも・・・とは穿ち過ぎでしょうか。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆

line

山下達郎、11年ぶりのオリジナルアルバム『SOFTLY』6月22日発売


最新のアナログレコード情報はこちら
レコードアクセサリー

パイドパイパーハウス

タグ : 週刊ライドオンタイム シティ・ポップ [anoto]

掲載: 2022年05月06日 12:00