知られざるピアノの名匠 ロリン・ホランダー/コンプリートRCAアルバム・コレクション(8枚組)
知られざるピアノの名匠、ロリン・ホランダーが残したRCAとコロンビアへの全録音(CD8枚組ボックスセット)。
今年77歳を迎えるアメリカの名ピアニスト、ロリン・ホランダー。ホランダーが1958年から1965年にかけてRCAとの専属契約で残した全録音を集成し、さらにキルヒナーの自作自演にチェレスタ奏者として参加した1973年のコロンビア録音を加え、CD8枚組のボックスセットとして初リリースいたします。
ホランダーは1944年、ニューヨークに生まれ、ヴァイオリニストの父マックス・ホランダーはトスカニーニ指揮するNBC交響楽団のアソシエイト・コンサートマスターを務めるなど音楽的な環境で育ち、早くから神童として絶賛されました。3歳でピアノを弾き始め、それから2年でバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻をマスター。11歳でカーネギーホール・デビューを果たし、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番を演奏しているほどです。エドゥアルト・シュトイアーマン、オルガ・ストローミロ、レオン・フライシャー、マックス・ルドルフ、ルドルフ・ゼルキンら名だたるピアニストに師事しているのも、その才能を物語っていると言えましょう。
デビュー録音は1958年、何と14歳の時で、バッハからパデレフスキにいたる22曲の華やかなピアノ小品を収めた「ピアノ発見 /ピアノ演奏への手ほどき」と題されたRCAキャムデン盤でした(CD1)。その成功は翌年、より技巧的な作品を集めた「ポロネーズ」につながりました(CD2)。1963年には初の協奏曲録音として、エーリヒ・ラインスドルフ指揮するボストン交響楽団と共演した、ラヴェルのピアノ協奏曲とデロ=ジョイオによる「ピアノとオーケストラのための幻想曲と変奏曲」の世界初録音を組み合わせたアルバム(CD3)を発売し、これがホランダーにとっての本格的な世界デビュー盤となり、「18歳のピアニストの驚くべき緻密な技巧と大胆で華麗な演奏」(米「ハイフィデリティ」誌)、「ヒンデミットに師事したデロ=ジョイオ作品の技巧的なピアノ・パートを、ホランダーは躍動感あふれる演奏で彩っている」(英「グラモフォン」誌)と、アメリカ、ヨーロッパ両方の批評家から称賛を得ています。
さらに同じラインスドルフ/ボストン響と共演したプロコフィエフのピアノ協奏曲第5番(CD4)、アンドレ・プレヴィン/ロイヤル・フィルとのハチャトゥリアンのピアノ協奏曲とブロッホのスケルツォ・ファンタスク(CD5)という技巧的な協奏曲作品の録音が続きます。後者はプレヴィンの指揮者としての最初期の録音としても貴重なもので、「技巧的なブロッホは、衝撃的で虎のようなホランダーの演奏に理想的。ハチャトゥリアンでは唖然とするほどのヴィルトゥオジティを開陳」(「ハイフィデリティ」誌)と絶賛されました。
リサイタル・アルバムでは、1964年と65年に1枚ずつ録音されており、ムソルグスキー「展覧会の絵」を中心とするロシア・プロ(CD6)、ベートーヴェンの「テンペスト」をメインにしたドイツ・プロ(CD7)で、若きホランダーのピアニズムを堪能することができます。CD8は、1973年にコロンビアの「モダン・アメリカン・ミュージック・シリーズ」のために録音されたキルヒナーの作品集で、ホランダーは、作曲者自作自演による、ソプラノと器楽アンサブルのための声楽作品「リリー」(キルヒナーの同名の歌劇から派生した作品)にチェレスタ奏者として参加しています。ソプラノはダイアナ・ホーグランド、クラリネットのリチャード・ストルツマン、ヴァイオリンのジェームズ・バスウェル、そしてヴィオラの今井信子らも参加、キルヒナー自身も指揮のほかピアノを弾いています。
今回もソニークラシカルの「アルバム・コレクション」のスタンダードとして、各ディスクはアメリカ初出盤のジャケットデザインを採用した紙ジャケットに封入され(レーベル面も発売当時のデザインを採用)、厚紙製クラムシェルボックスに収容されています(サイズ:L 12.8 cm x W 12.7cm x H 2.8 cm)。オールカラーの別冊解説書(表紙・裏表紙込みで24ページ)にはジェッド・ディストラーによる新規エッセイのほか、各ディスクの詳細なデータやアーティスト写真5点が掲載されています。
(ソニーミュージック)
収録内容
<CD1>
R=コルサコフ:熊蜂の飛行
グラナドス:スペイン舞曲Op.37~第5番;祈り-アンダルーサ
シューベルト:楽興の時 Op.94~第3番:ヘ短調
メンデルスゾーン:無言歌 Op.19~第6番:ヴェネツィアの舟歌
ショパン:練習曲 Op.10~第12番:革命
パデレフスキ:演奏会用ユモレスク Op.14~第1番:古風なメヌエット
ファリャ:火祭りの踊り
リスト:愛の夢 第3番 S.541-3
ベートーヴェン:エリーゼのための
ショパン:前奏曲 Op.28~第20番:ハ短調
ブラームス:ワルツ集 Op.39~第15番:変イ長調
ドビュッシー:月の光
ショパン:ワルツ集 Op.64~第2番:ハ短調
ベートーヴェン:メヌエット第2番 ト長調
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第16番 ハ長調K.545~第1楽章
モーツァルト(ホランダー編):ドン・ジョヴァンニ~メヌエット
J.S.バッハ:インヴェンション第13番 イ短調BWV.784
シューマン:子どものためのアルバム Op.68~第10曲:楽しき農夫
シューマン:子どものためのアルバム Op.68~第2曲:兵士の行進
シューマン:トロイメライ Op.15-7
グリーグ:ペール・ギュント第1組曲Op.46~アントラの踊り
ショパン:練習曲集Op.25~第9曲:蝶々
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
[録音]1958年夏、録音場所不明
<CD2>
ショパン:ポロネーズ 変イ長調 Op.53「英雄」
ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
リスト:ハンガリー狂詩曲第6番 変ニ長調 S.244-6
リスト:メフィスト・ワルツ第1番 S.514
ブラームス:間奏曲 Op.117~第2番:変ロ短調
ブラームス:2つのラプソディ Op.79~第2番:ト短調
ラフマニノフ:前奏曲集 Op.3~第2番:嬰ハ短調
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
[録音]1959年頃、録音場所不明
<CD3>
ノーマン・デロ=ジョイオ:ピアノと管弦楽のための幻想曲と変奏曲[世界初録音]
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 M.83
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)ボストン交響楽団
[録音]1963年2月17日、1963年1月16日、ボストン、シンフォニー・ホール
<CD4>
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.19
[演奏]エリック・フリードマン(ヴァイオリン)
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)ボストン交響楽団
[録音]1964年4月13日、ボストン、シンフォニー・ホール
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番 ト長調 Op.55
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)ボストン交響楽団
[録音]1964年3月28日、ボストン、シンフォニー・ホール
<CD5>
ハチャトゥリアン:ピアノ協奏曲 変ニ長調 Op.38
ブロッホ:スケルツォ・ファンタスク B.78
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン(指揮)
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
[録音]1964年10月6-7日、ロンドン、ウォルサムストー・アセンブリー・ホール
<CD6>
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
ラフマニノフ:幻想的小品集 Op.3 ~前奏曲第2番 嬰ハ短調
プロコフィエフ:トッカータ Op.11
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
[録音]1964年5月4, 5,7日
<CD7>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2「テンペスト」
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ
ブラームス:間奏曲 Op.117~第2番:変ロ短調
シューマン:アラベスク Op.18
[演奏]ロリン・ホランダー(ピアノ)
[録音]1965年12月13-17日, 1966年7月7日
<CD8>
キルヒナー:リリー(ソプラノと室内オーケストラのための)[世界初録音]
[演奏]ダイアナ・ホーグランド(ソプラノ)
ジェームズ・バスウェル (ヴァイオリン)
今井信子 (ヴィオラ)
ローレンス・レッサー (チェロ)
ポール・ラスティグ・ダンケル (フルート)
リチャード・ストルツマン (クラリネット)
アラン・フォーゲル (オーボエ)
アレクサンダー・ヘラー (ファゴット)
ロバート・ラウッチ (ホルン)
アレン・ベアード (打楽器)
ロリン・ホランダー (チェレスタ)
レオン・キルヒナー (指揮、ピアノ)
[録音]1973年8月20日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ
キルヒナー:弦楽四重奏曲第2番
[演奏]レノックス弦楽四重奏団
[録音]1973年10月5日、ニューヨーク、コロンビア30丁目スタジオ
※アメリカ初出LPのカップリングを採用しているため、ホランダーが演奏していない作品も収録されております。
カテゴリ : ニューリリース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2022年05月10日 00:00