『激ロック』スペシャルコーナー【4月レコメンドアイテム】
METALLICA / 『72 Seasons』
GENRE:HEAVY METAL
闇を知るからこそ放つことのできる永遠の光――
圧倒的エネルギーとパッションに満ちた6年半ぶり12枚目のニュー・アルバム
人の人生の最初の18年間、つまり“本当の自分”や“偽りの自分”を形作っていく年月のことを指し“72の季節”と名付けられた本作。NWOBHM/パンクといった自らのルーツや、これまでバンドが提示してきたスラッシュ・メタルやサザン・ロック/ヘヴィ・ロックなどの多様な表現を見つめ直した作風を継承しつつ、よりパワフルに再構築したサウンドが詰め込まれ、彼らのライヴを彷彿とさせるような圧倒的エネルギーとパッションがほとばしる約77分だ。社会不安が渦巻き、ライヴさえもままならなかった時代に生み出された本作は、絶大なる成功を収めながら、ベーシスト Cliff Burtonの死やメンバー内の確執、依存症問題など、闇を知り闇と向き合い続けてきた彼らだからこそ放つことのできる光で、苦難の日々を生きる人々を照らす1枚だと言えるだろう。
菅谷 透【ライター推薦】
BURY TOMORROW / 『The Seventh Sun』
GENRE : METALCORE
逆境から放つ起死回生の1打!
新体制BURY TOMORROWが生み出した野心的メタルコア・アルバム!
パンデミックによりツアーは中止、さらに2021年にはJason Cameron(Vo/Gt)が脱退と、苦境に立たされたBURY TOMORROWが、新たにギタリストとクリーンVo/キーボーディストを迎えた6ピースとなってシーンへ復帰、起死回生の1打となる新作を完成させた。重厚なヘヴィネスを叩きつけるTrack.2、5から、メロデスライクなリフが光るTrack.4、ピアノを主体としたバラードのTrack.7までバラエティ豊かな楽曲を収めており、それでいて軸がブレていないのはさすがのひと言。ドリーミーなエレクトロからスラッシーなパートまで自在に行き来するTrack.6は、現体制ならではだろう。バンド初の女性VoをフィーチャーしたTrack.11もエピックで、全メタルコア・ファン必聴の野心的なアルバムだ。
菅谷 透【ライター推薦】
PAUL GILBERT / 『The Dio Album』
GENRE : HARD ROCK, HEAVY METAL
MR. BIG/RACER Xの超絶ギタリストがRonnie James Dioが遺した名曲たちに挑む!
Paul Gilbertがヘヴィ・メタル・シーンの巨星、Ronnie James Dio(BLACK SABBATH/RAINBOW/DIO etc.)が歌った名曲群のカバー・アルバムを携えてシーンに帰還。メタルやハード・ロックのファンであれば誰もが知る名曲を、ドラム以外のすべての楽器を自ら演奏して彼なりの作品へと昇華している。Dioの流麗なメロディとRitchie Blackmore(DEEP PURPLE/RAINBOW etc.)やTony Iommi(BLACK SABBATH etc.)、Vivian Campbell(DIO etc.)といったレジェンド・ギタリストたちの歴史的なリフやソロに真正面から挑みつつ、Paulらしい遊び心も加えた愛情たっぷりの好盤となった。
井上 光一【ライター推薦】
ENTER SHIKARI / 『A Kiss For The Whole World』
GENRE : ROCK, POST HARDCORE, ELECTRO
ライヴのエネルギーを原動力にしたパワフルな新作が完成!
パンデミックの影響で一時期は楽曲制作も停滞してしまったらしいが、やっと大規模なフェスなどライヴ活動が再開できるようになったことで、そこからクリエイティヴな部分も刺激され、ついに完成したという作品。アグレッシヴなENTER SHIKARIを待ち望んだファンにとっては、テンション上がること間違いなしのノリで、スケール感のあるロック・サウンドにシフトした今作は、ライヴ映えしそうなパワフルな楽曲に溢れた、非常にエキサイティングなアルバムとなっている。さらに、ハイエナジーなロック&エレクトロ・サウンドという軸はそのままに、どこか生っぽいオーガニックな雰囲気がアルバム全体を覆う。太陽光発電のみで制作したという実験的な試みも、そんなサウンドの質感に現れているのかもしれない。
山本 真由【ライター推薦】
STORY OF THE YEAR / 『Tear Me To Pieces』
GENRE : POST HARDCORE, POP PUNK
第一線で活躍し続けるSOTYのバンド・ヒストリー的1枚!
1stアルバム『Page Avenue』と対になるようなアートワークからも、デビュー20周年という節目を感じる本作。先行シングルでもある表題曲は、バンドの持ち味を最大限に注ぎ込んだ象徴的なナンバーだ。アコギとエモーショナルなヴォーカルをツカミに、そこからヘヴィな展開、ひと息入れてから疾走感の爆発するサビに一気に突き進むという劇的なサウンドで、アルバムの冒頭を飾るに相応しい。他にも、美メロとスクリームの絶妙なバランスで様々な感情が渦巻く楽曲、ポップなテイストの楽曲、しっとりと聴かせる楽曲など聴きどころ満載。さらに2000年代初頭のエモ/スクリーモ界隈の勢いを感じさせる箇所や、2000年代後半のポップ・パンクの雰囲気が漂う部分もあり、彼らが活躍してきた時代そのものを象徴するような1枚となった。
山本 真由【ライター推薦】
SUICIDE SILENCE / 『Remember…You Must Die』
GENRE : DEATHCORE, DEATH METAL
“heavy as possible(限りなくヘヴィに)”を念頭に置き制作された
SUICIDE SILENCE 7枚目のアルバム
結成から20年余りの時を経たSUICIDE SILENCEが放つ7枚目のアルバムは、“heavy as possible(限りなくヘヴィに)”を念頭に置き制作されたという。そして完成した『Remember…You Must Die』は、殺意すら感じさせるマシンガンのようなツーバスやブラスト・ビート、心をかき乱すどこまでもダークなギター・リフ、獣という言葉では形容し切れない極悪グロウル/ガテラル・ヴォイス、地獄の底まで引きずらんとするほどの超ブルータルなブレイクダウンが満載の、まさにヘヴィでエクストリームな1枚だ。いつか再来日が叶った日には、パンデミック直前のリリースとなった原点回帰の前作『Become The Hunter』と併せて、思う存分デスコアを浴びられることを楽しみにしたい。
内堀 文佳【ライター推薦】
AUGUST BURNS RED / 『The Death Below』
GENRE : METALCORE
世界情勢のダークな雰囲気を反映しつつ
音楽的なチャレンジをポジティヴに捉えたABRの新作
ABRの新作は、世界情勢のダークな雰囲気を反映しつつも、自分たちの音楽的なチャレンジをポジティヴに捉えた作品だ。オープニング・トラック「Premonition」は、静かに、徐々に昂るテンションを抑えつつ、これから来る嵐のようなサウンドへの期待感を極限まで高めてくれる。そして続く「The Cleansing」で、まったく期待を裏切らない激しさとプログレッシヴな展開でリスナーを釘づけにする。今作でも、彼らの魅力のひとつ、多彩なリズム・パターンと相変わらず手数の多いドラムは冴え渡り、アグレッシヴなだけでなく時にメロディアスに奏でるギターは、「Ancestry」にゲスト・ヴォーカルとして参加したJesse Leach(KILLSWITCH ENGAGE)の深みのある歌声とも相性バツグンだ。
山本 真由【ライター推薦】
PERIPHERY / 『Periphery V: Djent Is Not A Genre』
GENRE : Djent, PROGRESSIVE METAL
PERIPHERYらしさが詰まった9曲70分にわたる
5枚目のセルフ・タイトル・アルバム
“Djentはジャンルではない”とユーモラスなタイトルが付けられた、9曲70分にわたるPERIPHERY 5枚目のセルフ・タイトル・アルバム。ヘドバン必至のヘヴィな開幕からいつの間にかジャジーなサックス・ソロに辿り着いている「Wildfire」、同じく激しい展開を見せてから映画音楽のような壮大なアウトロへと繋がる「Zagreus」などが並ぶ中に、メタル色一切なしの浮遊感溢れる「Silhouette」が組み込まれていたり、アルバムの構成まで楽曲同様にプログレッシヴ。さらに「Thanks Nobuo」では、メンバーが愛する“FF(ファイナルファンタジー)”シリーズの音楽を手掛ける植松伸夫への感謝を表し、“FFVII”のサントラを忍ばせていたりと、彼ららしさが詰まった1枚となった。
内堀 文佳【ライター推薦】
FOR THE FALLEN DREAMS / 『For The Fallen Dreams』
GENRE : METALCORE, POST HARDCORE
結成20周年迎え、今もなお音楽的な冒険に挑み続けている
FOR THE FALLEN DREAMS約5年ぶりの最新作
ミシガン州のメタルコア・アクト、FOR THE FALLEN DREAMSによる約5年ぶりとなる最新作『For TheFallen Dreams』。前作『Six』(2018年)に引き続いて良質なプロダクションで繰り出される楽曲群は、持ち前のアグレッシヴさに加えて、シンガロング必至の胸を打つクリーン・パートを今まで以上に全面に押し出している印象だ。本作のもうひとつの特徴と言える「What If」などに顕著なニューメタルの影響については、残念ながら完全に自分たちのものとしているとは言えないというのが正直なところである。とはいえ結成20周年を迎え、初期は叙情派メタルコアを鳴らしていた彼らが今もなお、音楽的な冒険に挑み続けていることは本作を聴けば理解できるだろう。
井上 光一【ライター推薦】
THE ANSWER / 『Sundowners』
GENRE : HARD ROCK
小細工抜きのリアルな音で楽しませるTHE ANSWER約7年ぶりの復帰作
2006年に名作『Rise』で衝撃のデビューを果たし、新人とは思えない楽曲のクオリティと確かな演奏能力を持った若きハード・ロックの新星として、ここ日本でも人気を集めた北アイルランド出身のTHE ANSWER。本作は約7年ぶりとなる久々の最新作だ。キャリアを重ねたバンドらしい渋みを感じさせつつも、時にブルージーに、時にハードに魅せる不動のメンバーによる緩急自在のバンド・アンサンブルは、枯れすぎもせず若作りもせず、小細工抜きのリアルな音でリスナーを楽しませてくれる。ハスキーで艶っぽいヴォーカルも磨きが掛かり、甘さに流されすぎないメロディが実にクール。自らが鳴らすべき音を骨の髄まで理解しているバンドならではの強さに裏打ちされた、見事な復帰作である。
井上 光一【ライター推薦】
KAMELOT / 『The Awakening』
GENRE : POWER METAL
ベテランならではの安定感と、多彩なゲストのカラーを生かした新鮮なサウンド
“これを待っていた!”というワクワク感に満ちたメロディック・メタル・アルバム
コロナ禍で、多作のKAMELOTにしては異例のスパンが空いてしまったが、そのぶんファンの期待も大きいだろう。映画のサントラのようなオープニング、ドラマチックなバンド・アンサンブルと感情ほとばしるTommy Karevikのヴォーカル。本当に、“これを待っていた!”というワクワク感に満ちたメロディック・メタル・アルバムだ。特に、ジャンルレスな活躍で世界的な人気を誇るチェロ奏者のTina Guoが参加した2曲(Track.5、6)は、シンフォニックなKAMELOTの世界観をより強固なものにすることに成功している。激しいナンバーもしっとりとしたナンバーも、豊かな感情表現でリスナーを惹きつける。ベテランならではの安定感と、多彩なゲストのカラーを生かした新鮮なサウンドは、さすがの仕上がりといったところ。
山本 真由【ライター推薦】
DREAM THEATER / 『Lost Not Forgotten Archives: The Making Of Falling Into Infinity (1997)』
GENRE : PROGRESSIVE METAL
DREAM THEATER公式ブートレグ第19弾は
賛否両論の4thアルバム『Falling Into Infinity』の制作過程描くメイキング音源集
2021年より定期的にリリースされている“忘るまじ喪失音源集”と名付けられた公式ブートレグ・シリーズの第19弾として選ばれたのは、1997年にリリースされた通算4枚目のアルバム『Falling Into Infinity』のメイキング音源集。メンバーのプライベートでの出来事やレーベル側の関与、外部ライターの起用といったような様々な要因が、どの程度まで音作りに影響を及ぼしたのかは断定できないにせよ、リリース当時から賛否両論の評価だったことは、昔からのファンであれば周知の事実であろう。そのような作品だからこそ、どのような過程を経てアルバムが生まれたのかを知ることは実に興味深く、本作を聴くことでスタジオ・アルバムも今までとは違った形で聴こえてくるはずだ。
井上 光一【ライター推薦】
【激ロック】
ラウドミュージックに特化したフリーマガジン、ポータルサイトの運営、そして国内外のバンドを招聘してのライブイベント、13年間続くROCK DJパーティーの企画、運営を行っている。さらには渋谷宇田川町に位置する「Music Bar ROCKAHOLIC」と同じく宇田川町にあるロックファッション・ショップ&通販サイト「GEKIROCK CLOTHING」の運営など、クロスメディアを超えたクロスカルチャー展開をシーンに仕掛けるラウドミュージック専門のクリエイティブ集団である。
タグ : PUNK/EMO ハードロック/ヘヴィメタル(HR/HM)
掲載: 2023年04月20日 09:50